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2月22日は猫の日 癒し系だけにとどまらない「猫漫画3選」

2022年02月22日 18:01  リアルサウンド

リアルサウンド

『ネオ・キャット』

 本日2月22日は、猫の「にゃん・にゃん・にゃん」という鳴き声にちなみ制定された「猫の日」である。SNSでも猫の写真や動画は人気だ。また猫との日常などを描いた漫画も支持され、書店にも数多くの猫漫画が並んでいる。


 今回は猫好きの心をつかんで離さないかもしれない、あるいは猫を家族に迎え入れたくても事情があって叶わない人の心を埋める手助けになるかもしれない、猫漫画を3作品紹介したい。


参考:【画像】紹介した作品の表紙画像


■極上肉球揉みを疑似体験『ねこのマッサージ屋さん』(久川はる/オーバーラップ)


 仕事に疲れ果てた人間の目に留まった、あるマッサージ店。そこの受付に鎮座していたのはなんと、施術着を身にまとった猫だった……! 


 現実にあったら定期的に通ってしまうであろう魅惑のリラクゼーションが描かれている猫漫画が、『ねこのマッサージ屋さん』だ。看板猫のいるマッサージ店ではなく、猫によるリラクゼーションがうけられるお店を舞台としている。


 適度な弾力のある肉球と喉のゴロゴロ音、柔らかな毛のぬくもり……。猫によるマッサージは、犬派だと言っていた人間を一瞬で病みつきにしてしまう。しかもこのお店には、指圧やアロマ、強揉みといった専門性を持った猫たちが揃っているのだ。コースの選択やスタッフの指名までできるときた。


 かといってしっかりとコースを遂行してくれるわけでもない。客と一緒につい寝てしまうなんてことも、このマッサージ屋では日常茶飯事なのだ。そんな気まぐれでマイペースな部分さえもとっておきのサービスとしてしまう部分にも、癒しを感じることだろう。


 猫たちの気まぐれぬくもり肉球マッサージの疑似体験は、身体は難しくても心の凝りはほぐしてくれるだろう。


■ゆっくり家族になっていく『同居人はひざ、時々、頭のうえ。』(みなつき/二ツ家あす/フレックスコミックス)


 人付き合いが苦手な小説家・朏素晴(みかづき すばる)と、彼に保護された猫・ハルの日常を、猫と人の視点が呼応する形で描く猫漫画『同居人はひざ、時々、頭のうえ。』。 癒されると支持され、すでに単行本も8巻刊行されているが、癒しだけでなく現実的な猫との暮らしが描かれているのも特徴的な作品だ。


 猫は愛おしさにあふれているだけでなく、「勘弁してくれ」と言いたくなる人間にとって理解できない行動を取ることだって珍しくない。実際に同作で素晴は、ハルの挙動に振り回されていた。また動物を飼うことは、思った以上に費用も時間もかかることだ。同作は命を迎え入れる責任の重さについても、素晴が猫と暮らしていくうえで必要なものを買いそろえたり、健康維持のために必要なことを学んだりする様子を通して柔らかく描いている。


 またハルとの暮らしを通して成長していく素晴の姿にも胸を打たれる。彼は想像の邪魔になるからと、社会との接触を避けてきた。しかしハルと少しずつ時間をともにするなかで、知らなかった世界を知り、ひとりで生きていると思ってきた自分をも見つめ直していく。


 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、ペットを飼う人が増えたという。それに伴って「思い描いた猫との暮らしではなかった」なんていう、あまりにも人間の自分勝手な理由で手放す人もいると見聞きした。


 確かに猫は、人の心を癒してくれる。しかしそれは結果論でしかない。そんな猫との楽しい日々は、信頼関係を地道に築いた先にあると描く『同居人はひざ、時々、頭のうえ。』。その「ゆっくりと家族になっていく過程」が、いかに愛おしくかけがえのないひとときなのかも教えてくれる一作だ。


■新時代の猫漫画、来たる『ネオ・キャット』(青化/祥伝社)


 爽やかなバカンス風景に、いろんな毛色の猫。洋雑誌みたいなおしゃれな装丁に惹かれて手に取ってみたら、たった1つしかない脳みそでは到底処理しきれない8つの短編が繰り広げられていたのが、この『ネオ・キャット』だ。


 スポーツカーを乗りこなす、歌舞伎町のNo.1を競い合う、会社を経営する、パリコレに服として出演する……。猫の社会進出が進み、人と共存する世界観を描いた作品なのだが、「ともに生きる」の想像力が猫漫画の域を凌駕していた。紙書籍の帯に書かれていた「ねこ漫画の黒船到来」というコピーは伊達じゃない。


 この突飛な世界観にあっと言う間に引きこまれてしまう。しかも「シュールだから」「不思議だから」という面白さにとどまらない引力が、同作にはあった。自分以外への勝手な期待やレッテル貼りなど、多様性が大事とのたまいながらも、なんだかんだ枠に縛られている自分自身がこの作品の中にも存在しているような気がしたからだ。


 8つの短編すべてが、自分のなかにストンと落ちる作品ではないと思う。しかし生きていくなかでいつか、カチッとパズルのピースがはまるように、同作が人と猫の想像を越えた共存世界を通して伝えたかったことを理解できる日が来るかもしれない。この「いつか」が楽しみになる作品だ。


■猫に感謝と慈しみを


 猫の日は「猫と一緒に暮らせる幸せに感謝し、猫とともにこの喜びをかみしめる記念日を」という趣旨で制定されたという。


 日頃から幸せを届けてくれる愛猫への感謝を思いだけでなく行動でも示したいところではあるが、自分のことにかまけて十分に遊んであげられていない、なんてことも珍しくない。猫漫画はそんな人間の怠慢を、見つめ直す時間もくれるようだ。


 心の癒しとしてはもちろん、幸せな日々をくれる猫たちへの感謝と慈しみを再確認する意味でも、猫漫画を読んでみてはいかがだろうか。