有名IT企業が、新入社員向けの研修資料を外部に公開する動きが広まり、SNSでも話題を呼んでいます。今回はネットで話題になっていた株式会社ミクシィの「Git 新人研修資料」をITエンジニア経験者の視点から見てみました。(文:はっしー)
なお「Git」はソフトウェアを開発するときに便利な「バージョン管理」の定番システムです。特に複数人が関わるプロジェクトなどでは、こうした管理ツールが不可欠になってきます。その使い方を学ぶための資料が、ネット上で公開されているというのは大変ありがたいものだと思います。
「新人研修」ということで、初心者向けなのかなと勝手に思っていたのですが、まず講師紹介に驚きました。講師の藤田朱門さん(2019年・新卒)は「趣味でGitのクローンをGoで作ってる」とのこと。受講者も「Gitの利用経験がある」は大前提でした……。いきなりレベルが高そうです。
GitHubの管理者向け設定も押さえてある
研修では、Gitそのものではなく、Gitをクラウド運用するホスティングサービス「GitHub」の使い方もカバーされていました。さすが、と関心したのが、「Pull Request」などの基本的な使い方紹介にとどまらず、プロジェクト管理者向け設定の「Settings」まで、きちんと解説していた点です。
下記資料にもあるとおり、Settingsでは「非公開のプロジェクトを公開する」とか、「オーナー権限を移譲する」とか、取り返しのつかないこともできてしまいます。このあたりも欠かさず押さえてあるのは、手堅いと感じました。
ミクシィGit研修 (21新卒)より
Gitの内部構造まで解説してある
本資料のメインであり、最大の見所となっているのが「Gitの内部構造解説」です。
ソフトウェア内部の仕組みなんて勉強する必要ないのでは……と思いきや、Gitの内部構造を知っておけば、トラブルが起きた際にどんなコマンドを叩けばいいのか考えられるようになる、というのがこのセクションの趣旨です。
個人的には、作業用ブランチやコミットを切り替える「checkout」と、変更内容の取り消しに使われる「reset」コマンドは、違うようで実はかなり似ているというのが「目からウロコ」でした。
ミクシィGit研修 (21新卒)より
確かに、このあたりを理解していれば、「変更を取り消したい」と思った時などでも、焦らず落ち着いて作業ができそうです。
実際の資料では、コミットのより細かい仕組みや、Gitが内部でどうデータを保持しているかなどの解説も詳細になされており、非常に面白いです。ぜひ一度読んでみてほしいと思います。
資料全体の感想
ただGitの使い方を教えるだけにとどまらず、Gitというソフトウェアの中身にまで言及した資料はなかなか見たことがありませんでした。マニアックながらも仕事に役立つ内容で、勉強になりました。ミクシィの技術力の高さを垣間見た感じです。
最後に、一緒にレビューをしてくれたエンジニアの感想を紹介します。
「Gitの内部構造なんて別に知らなくてもいいと思っていたら、意外と実務に関係あるというのが面白かったです」(20代・Web系エンジニア)
「一言でいうと、すごくよくできた資料ですね。内容も発展的で、”新人研修資料”とは看板に偽りがあるのではないでしょうか(笑)」(40代・フリーランスエンジニア)