トップへ

無ければ作るの精神 世界で唯一無二の「144分の1スケール ザンボット3」

2022年02月20日 15:01  おたくま経済新聞

おたくま経済新聞

無ければ作るの精神 世界で唯一無二の「144分の1スケール ザンボット3」

 「無敵超人ザンボット3」というアニメをご存知でしょうか。


 40年以上前の1977年から翌78年にかけ放映され、後に「機動戦士ガンダム」などで知られる富野由悠季(当時は喜幸名義)氏が制作指揮を手掛けました。


 今でも多くのファンから愛される名作ですが、本編に登場するメカ「ザンボット3」を再現したファンアート作品がTwitterで反響を呼んでいます。


【その他の画像・さらに詳しい元の記事はこちら】


 「1/144スケール ザンボット 3 これだけは世界で唯一無二であると自負しております」


 そんなつぶやきとともに、1枚の写真を投稿したのはバリバリクンさん。写っていたのは、無数のビル群の中で悠然と構える「ザンボット3」の姿。投稿者であるバリバリクンさんが制作者です。


 バリバリクンさんは、建設会社勤務の傍らで、幼少期からの趣味だというプラモデル作りを楽しんでいます。ガンプラをはじめ、キャラクターモデル・戦車・航空機・艦船と幅広く制作している、いわゆる“雑食モデラー”。


 現在の年齢は30代前半。「無敵超人ザンボット3」はリアルタイム視聴できていませんでしたが、ゲーム「スーパーロボット大戦」でその存在を知る事となりました。


 「スパロボ」にハマったのがきっかけで、多くのロボットアニメを視聴。気づいたときには本格的なロボットアニメファンになっていたといいます。もちろん特に「推し」なのは「無敵超人ザンボット3」。


 「『人間爆弾』や『神ファミリーと一般市民との確執』といったハードなストーリー展開もですが、移動や物資運搬といった日常パートでも登場するメカ、分離状態(ザンボエース・ザンブル・ザンベース)にも見どころのある戦闘描写ですね」


 魅力に加えて、「『立体物でスーパーロボットをリアル等身で再現したい』という欲求に駆られました」という衝動が沸き、「スパロボでも毎回必ず使います」という「ザンボット3」を題材にすることに。


 本作は、“本物”の144分の1スケールで制作されています。ザンボット3の全高設定は60メートルなので、サイズでいうと「41センチ」。


 また、様々な材料を用いて組み上げる「スクラッチビルド」と呼ばれる手法で作られています。これは、先の「144分の1スケール」も含めて、様々な事情を鑑みてのものだったそう。


 「『144分の1スケール』にしたのは、ガンプラなどのプラモデルにおいて、比較的取り扱いが多いサイズなのが理由です。それと鉄道模型のNゲージサイズにも近いので(150分の1)、ジオラマとして作る際にも、使用する素材の選択肢が広くなるというのもあります」


 「ただ、ガンダムなどの『リアル系』と違って、例えばコンバトラーVやゲッターロボ、そしてザンボット3などの所謂『スーパー系』は、元々の『設定身長(全高)』が高いので、該当するサイズの商品が少なかったんです。仮にあったとしても、それは模型というよりは、玩具(フィギュア)といったものでかつ高額品でした。そのため、『144分の1スケールで自作』することにしました」


 しかしながら、プラモデルを趣味にしているとはいえ、当時の自身のスキルではそれが難しいと痛感したバリバリクンさん。「作りたい!」という思いは、技術的問題で数年ほど頓挫しています。


■ 「無ければ作るの精神」で1年かけて完成!

 転機が訪れたのは2018年。ホビー雑誌「ホビージャパン」にて、「第1回ロボットキャラクター大会」というイベントが開催されているのを目にしたことでした。


 「そこにはキット化されていない作品をモデルにしたものも多かったんですが、それ以上に、凄腕モデラー達による『無ければ作るの精神』に感銘を受けたんです」


 そこで、「『第1回』ということは次もあるだろう」とバリバリクンさんは予想をたてます。また当時は、建築模型会社に勤務しており、コンピュータ制御や機械加工といった技術を習得。条件はそろっていました。


 制作を決意してから完成までは、1年の歳月がかけられました。完成したのは2019年。ちなみに「1年」という期間は、結果的にそうなったのではなく、「第2回は翌年(2019年)だろう」という見込みをたて、計画的に進行したからだそうです。


 「『1年』という時間を考えたとき、自分が初めて本格的なスクラッチに挑戦することを踏まえて、『完成させること』に重視しました」


 「そこで、『曲面が少なくて直線が多いフォルム』『関節部分や全体のプロポーションの検討の手間を極力少なく』の2つの理由に、ちょうど手元にあった『メガサイズ 48分の1スケール ガンダム』を“芯”として使用できることもあったので『ザンボット3』を選んでいます」


 バリバリクンさんが、制作過程においてこだわった部分は「説得力」。


 ザンボット3といえば、主人公の神勝平が搭乗する「ザンボエース」、神江宇宙太搭乗の「ザンブル」、神北恵子搭乗の「ザンベース」の「3つのメカがひとつになった」合体ロボット。


 しかし、先述のメガサイズガンダムを芯にしていることもあり、本作に「合体・分離機能」は“搭載”されていません。その上でバリバリクンさんは、「如何にも合体してそう感」を伝えたかったと言います。


 「例えば上半身だと、頭部~胸部部分のザンボエースが、胴体のザンブルに差し込まれる形で合体するんですが、これはアニメ本編や市販されているフィギュアだと、デザインラインを優先して省略されています。なので敢えてその『取り合い部分』を表現しました。『合体ロボット』というメカ的な説得力を持たせたかったんです」


 結果的に作品としての「情報量の増加」にも繋がった「アレンジ」ですが、それはあくまで原作準拠を中心としたそうです。他にも装甲や足の裏側など、ともすれば目立たない場所に注力。


 「足し算と引き算の調整には苦労しましたね。もう少しディテールは増やしても良かったかもしれません」


 一方、ザンボット3最大の特徴でもある「三日月の兜飾り」が目を引く頭部は、元来が曲面の多い場所でもあり、作る上で最も苦労した点だったそう。


 とはいえ、「ここが不細工ですと全体印象も悪くなりますので」と、ベースのガンダムの頭部を、ただひたすらにプラバンで盛ったりパテで削ったりする作業を、自身が納得いくまで続けました。


 他にも、ザンボットグラップやザンボットバスターといった武装面も再現。


 なおバスターは、本機に取り付けたものを取り外すようにしています。これは正義の姿巨大ロボットですわ……。


 「当時いた会社の社長や上司の理解もあって、会社の機材を使用させてもらえるサポートもいただき、完成にこぎつけることができました。自分一人では到底なし得なかった作品です。応援していただいた方には、今でも感謝の言葉もありません」


■ 大会では最終選考にノミネート!

 作るきっかけとなった「ホビージャパン 第2回ロボットキャラクター大会」。バリバリクンさんは当初、次回は2019年開催だと予想していましたが……なんと、予想は大きく外れて2021年に開催されました。


 「144分の1スケール ザンボット3」は勿論参加。結果はというと……何と最終選考まで進むことができたそうです。


 ちなみにこちらについては、ホビージャパン公式Twitterのモーメントに、名だたるモデラーの作品とともに、現在も公開されています。


 「これからもライフワークとして、『スーパーロボット大戦144分の1統一スケール計画』を続けていきたいですね」と、バリバリクンさん。次回「第3回は入賞を目指して頑張る」と、最後コメントしています。



<記事化協力>
バリバリクンさん(@HnlkcHIfE2SyHtZ)


(向山純平)