2月15日、オンラインで実施されたウイリアムズF1チームの新車『FW44』の発表会に登場した車両は、ほぼFIAのベースモデルであり、実質カラーリング発表だけであった。しかし、現地時間15日午後にシルバーストンで行われたシェイクダウンでは、発表会とは異なる『FW44』の実車が現れた。
アストンマーティンの新車『AMR22』とは対局的な、細く3D曲面を持ったノーズに、モノコック両端もノーズにシンクロして両サイドにしっかり丸みを持たせている。フロントサスペンションはプッシュロッド式を維持しているが、2021年までとは大きく異なり、ロワアームはフロントアクスルセンターよりも下部にピボットがおかれ、アッパーアームはわずかに上反角を持ち、しっかりと理想的なジオメトリーの設定が可能だ。これも18インチホイールの作り出した空間のおかげだろう。
サイドポッドのエントリーダクトもきわめてF1的であり、FIAのベースモデルとは大きく異なる。さらに、このサイドポッドからエンジンカバー、コークパネルへの曲面の流れは凄まじく絞りこまれ、エンジンカバーはほぼ一枚壁のようにフロアにまでいたる。サイドポッドも後方へ急降下しており、ウイリアムズらしいエアロの後方処理が継承されている。フロア上面とリヤウイングへの空気流確保に挑戦をしている様子が好ましい。
サイドポッドの極端なコンパクト化で苦しくなるクーリングはおそらくVバンク上、すなわちセンタークーリングがその多くを受け持っているのだろう。インダクションボックスは大きな開口部を持つ形状となり、コクピット後方部分のエンジンカバーの後端までその厚みが続く。上端は2021年のアルピーヌ型の処理に似て、エキゾーストテールパイプ周りの巨大な排熱口へと続いている。
リヤサスペンションはプルロッド式を維持している。リヤウイングはセンターピラーがあるものの、これはDRSユニットのためであり、ウイングへの負荷はエンドプレートとビームウイングが大方を受け持ち、ウイングへの空気流への干渉を極力避けている。これらのエアロアプローチはこれまでに発表された4台のなかではもっともラジカルにみえる。
ただし、2月23~25日に実施されるバルセロナでのプレシーズンテストでは、他チームもかなり思い切ったことをやってきそうで楽しみだ。その兆候を見せてくれたのがこの『FW44』であり、2022年のウイリアムズはけっこう化ける可能性もあるとみた。
《プロフィール》
津川哲夫(つがわてつお)
1949年生まれ。F1メカニックを志して1977年に単身渡英。トールマン、ハース、ベネトンなどのチームでメカニックを勤め、1990年シーズンでメカニックを引退。その後、F1中継でピットレポートやセッション解説、そして雑誌やwebメディアでメカニック経験を活かしたメカニカルな視点でF1の魅力を伝え続けている。