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北野日奈子が明かす、乃木坂46卒業への思い「いつの間にか後輩たちがグループを守る側に立っていた」

2022年02月17日 10:01  リアルサウンド

リアルサウンド

乃木坂46 北野日奈子

 乃木坂46からの卒業を発表した北野日奈子の2nd写真集『希望の方角』(白夜書房)が2月8日に発売された。1st写真集『空気の色』発売から約3年。その間に起こった、乃木坂46を取り巻く環境の動きと、北野日奈子の心の変化。両作を見比べると、同じ笑顔でもどこか違う温度を感じる。


 本作は、北野日奈子の要望により、カメラマンの藤本和典をはじめ前作と全く同じスタッフが集結している。3年前をともにしたメンバーと新たに作り上げた特別な時間。写真集に写る北野日奈子ののびのびとした笑顔や、自然体な仕草から、居心地のいいチームでの撮影だったことがうかがえる。あがってきた写真を見て、北野日奈子は何を感じたのだろうか。この3年間の出来事を含め、話を聞いた。(とり)


参考:北野日奈子の取り下ろし写真


■3年前と比べて大人になった


――全体的に北野さんの動きが感じられる写真集ですね。


北野:私、撮影中でもお構いなしに興味のある方へ動いていっちゃうので(笑)。でも、前作に続きお世話になったカメラマンの藤本さんは、いつも私の自由な動きを追いかけてくださるんです。何なら、私以上にハイテンションなんじゃないかってくらい、いい意味でふざけてくださるので、心から楽しんで撮影ができましたね。


――前作と全く同じスタッフさんで撮影されたのは、北野さん自身のご要望だったとか。それほど前作の出来に満足されていたということでしょうか。


北野:そうですね。前作でお世話になったスタッフさんとは本当に仲が良くて。何でもさらけ出せる間柄なんですよ。やっぱり写真集では、雑誌でお見せしているような決めカットとは違った、何気ない瞬間をお届けしたいじゃないですか。そう思ったとき、前作と同じスタッフさんとじゃないと、私らしく心を開いた状態で振る舞えない気がしたんですよね。


 実際、事前に写真集のテーマとして”近い距離感で”というのは決めていたんですけど、正直、写真集の撮影をしている感覚はありませんでした。仲のいいメンバーで鹿児島に卒業旅行しに来た、みたいな。楽しかった思い出ばかりで、シャッターがいつ押されていたか記憶にないくらいです。テーマを決めていなくても、自然と距離感の近い写真集になっていたんじゃないですかね。


――久々にお会いしても、チーム感は変わらずだったんですね。


北野:本音を言うと、ちょっぴり照れ臭さもありましたよ。ほかの現場で個別にお会いしてはいたものの、全員で集まるのは前作以来、約3年ぶりですから。その分、大人な表情がたくさん写っていると思います。


 撮影が終わったあとに写真を見させてもらったときは、スタッフさんみんなが「いつもの日奈子っぽいね」と言ってくれたこともあって。私自身、成長が感じられる写真集になる実感はなかったのですが、後日送られてきた構成済みのデータをお母さんに見せたら「大人になったね」って、少しウルウルしていたんですよ。毎日、顔を合わせているはずなのに、不思議ですよね。前作と見比べて、よりそう感じたのかもしれません。お母さんの言葉を聞いて、私もこみ上げてくるものがありましたね。


――写真集はご家族にもお見せしているんですね。


北野:もちろんです。お父さんも「今回もいい感じだね」って喜んで見てくれました。お兄ちゃんくらいですかね。恥ずかしがって見てくれないのは。前作が出たときも、わざと水着カットのページをベッドの上に広げて、どんな反応をするか見ていたんですけど、そっと閉じられてしまいました。今回も、懲りずにやってやろうと思っていますけど(笑)。


――仲の良いご家族ですね。


北野:そう言えば、今回のロケ地には、お母さんが選んでくれた場所もあるんですよ。千座(ちくら)の岩屋。黄色いワンピースを着て歩いている岩窟ですね。種子島の有名な観光スポットで、潮が引くと岩の間を歩けるようになるんですよ。お母さんに「せっかくならここ行って来なよ!」って教えてもらったので、行って来ました。


 ただ、私たちが行ったときは全然潮が引いていなくて、入れそうになるまでずっとそこらの猫たちと遊んでいたんですよね。その猫と遊んでいるカットも裏表紙に使われていますし、岩の間で撮れたステキなカットもたくさんあるので、ぜひ注目して見ていただきたいですね。


■“破顔”が強み


――鹿児島には初めて行かれたんですか?


北野:アンダーライブで行ったきりで、観光は全く。「(大園)桃子の地元だな~」くらいの印象でしたし、何が有名か全然知らなかったですね。スタッフさんから送られてくるロケ地の写真も、緑豊かなジャングルばかりだったのでドキドキしましたよ。一体、どんな写真が撮れるんだろう!?って。


――砂風呂に入っているシーンもありますね。


北野:砂風呂のシーンは、初日のいちばん最初に撮ったんですよ。人生初の砂風呂。掘れば掘るほど砂の中が温かくて「地球ってすごいんだなぁ」って感動していたら、「これ表紙でいいんじゃない?」なんて声が聞こえてきて。初っ端から不安になりました(笑)。


――それも、前作から続く関係性があってのエピソードですね。ちなみにカメラマンの藤本さんとは、撮影中にどんな話をしましたか?


北野:そう言えば、褒め言葉をいただきました。「破顔がいいよね」って。


――崩れた表情がいいと。


北野:はい。「ほかの子だったら、崩れた表情の写真は使わない場合が多いのに、きいちゃんはむしろ破顔が魅力的だから強いよね」って。これ、褒められているんですかね?


――なかなか言われない褒め言葉かもしれませんね。


北野:初めて言われましたよ。例えば、最初の方にある船の上のシーンで、髪の毛が乱れているカットがあるんですけど、私としては、これを載せるのに抵抗があったんですね。確か、グルグル回りながら連写して撮った一枚で。やっぱり、恥ずかしいじゃないですか。そんな私の気持ちをよそに「この写真、いいよね」って話の流れになったときは、どう抵抗しようかと必死に考えましたよ(笑)。でも、私の強みは”破顔”だと、藤本さんの言葉を思い出したら、なぜか自信も出てきて。


――私も、いい一枚だと思いましたよ。


北野:本当ですか? マリオに出てくるクリボーが踏まれている瞬間みたいじゃないですか?


――そんなことないですよ(笑)。


北野:なら良かったです(笑)。多分、この撮影チームじゃなかったら、もっとカッコつけた写真集になっていた気がしますね。ほかのメンバーの写真集を見ていると、みんなかわいいし、スタイルもいいし、どのページをめくっても「あ、乃木坂46だ!」って思えるのに対して、私の写真集は、逆に乃木坂46らしくない表情もあるというか。それが、魅力的な破顔ってことですよね。恥ずかしいですけど、いろんな表情が写っているので見飽きる心配はないはずです!


■“北野日奈子らしい”を楽しめるようになった


――前作の発売から約3年。この間、北野さんのなかで大きく変わったことといえば何ですか?


北野:1期の先輩方が卒業するにつれ、大好きな乃木坂46というグループがずっと続いていくために、自分に何ができるかを考えるようになりました。私、乃木坂46が大好きなんですよ。同時に、これからの乃木坂46を担っていく後輩たちも大好きなんです。だからこそ、私が乃木坂46を、後輩たちを守ってあげたい。大したアドバイスはできないにしても、いつだってみんなの味方でいたい。乃木坂46の根の部分を支えることが私にできることだって、思うようになったんですよね。今までは「絶対、選抜に入りたい!」って必死だったのに、いつしか選抜発表のときでさえ、名前を呼ばれる後輩たちの姿をどこか俯瞰的に見て、今後の乃木坂46がどんなグループになっていくかを分析しているほどです。


――後輩もたくさん加入されましたしね。


北野:そうですね。とにかく、周囲の環境が目まぐるしく変化する3年間だったので、私の考え方も自然と変わっていました。あとは、昨年3月に2期生ライブができたことも大きいです。アイドルとしてもうやり残すことはないなってくらい、2期生みんなで主人公になれた充実感があったんですよ。


――悔いなく2期生ライブを終えられたからこそ、アイドルとしての気持ちにも変化があったと。先日、北野さんも卒業発表をされましたが、やはりその充実感があってのことだったんでしょうか?


北野:それもありますし、私が守る必要もないくらい、後輩たちのなかで「乃木坂46を守りたい」って気持ちが芽生えているのを日に日に感じていたんですよ。特に、ひとつ下の3期生でいうと、表題曲でフロントを任されてもみんな堂々とパフォーマンスをしていますし、梅(梅澤美波)は乃木坂46の副キャプテンになりました。


 これまでずっと、1、2期で乃木坂46を守っていくために後輩たちをサポートしていたのが、いつの間にか、後輩たちが乃木坂46を守る側に立っていた。それはつまり、うまくバトンパスができたってことじゃないですか。今なら安心して、後輩たちに乃木坂46を託せる気がする。そう思えたことで、私は自分の新しい人生を大事に生きていこうと決心できたんです。


 9年間、卒業の二文字が頭をよぎる瞬間がないくらい、乃木坂46が大好きな一心でがむしゃらに活動していたんですけどね。大切な居場所から自ら去る決断をした自分自身に、我ながら驚いています(笑)。


――となると本作は、卒業を視野に入れて制作された写真集でもあるんですか?


北野:はい。卒業が決まったとき、スタッフさんから「写真集やらなきゃね」と言われたんですよ。ただ私としては、前作があるし2冊目はいいかなと思っていて。というのも前作は、休業から復帰したタイミングで出させていただいたこともあり、私にとっては、再び乃木坂46のメンバーとして頑張っていくためのお守りのようなものだったんですよね。だから、その一冊があれば十分だって。


 でも、スタッフさんに「ファンの方への感謝の気持ちを込めて、2ndやるべきだよ」と言われて、私もその通りだと思ったんですよね。結果的に、私の楽しい思い出がひたすら詰まった一冊になったんですけど(笑)。形にできてよかったです。


――その話を踏まえると、先ほどお話されていた船の上で回っているカットを収録したのは正解ですよね。


北野:えっ、どうして今の話からこのカットに!?(笑)


――写りを気にせずに北野さんが楽しんでいる姿こそ、ファンの方がいちばん見たい北野さんなんじゃないかと思いまして(笑)。何も包み隠さず、開放的な気持ちでいるのが伝わってくるといいますか。


北野:あぁ、それでいうと私、素の自分を取り繕わずにアイドル活動をはじめちゃったなって、ずっと後悔していたんですよ。私は私のままで表に立っているから、マイナスな声も全て私として受け止めるしかないけど、少しでもキャラ作りがあれば、批判を受けても「まぁ、これは自分自身じゃないし」って逃げ道があったんじゃないかって。


 職業柄、人からの見られ方を常に気にしていたんですよね。それこそ前作は、”夏のビーチで水着”みたいな明るい”北野日奈子らしさ”から逃れたくて、あえて寒い国に行きましたから。いわゆる”北野日奈子らしくない”ところも、私の一面としてあるんだってことを知ってもらいたかったんです。


 思い返すと、いろんな私がいて当たり前だし、どんな私も私なんだと、自分自身を楽しめるようになったのは、この3年間で成長した部分かもしれないですね。本作は、私の分身と言っていいくらい、みなさんのイメージに近い”北野日奈子らしい”北野日奈子が写っているはずなので。


――前作のような、ひんやりとしたイメージも北野さんらしさ。本作のような、あたたかみのあるイメージも北野さんらしさ。両極端の2作があるというのは、乃木坂46卒業後の北野さん自身の支えにもなりそうですね。


北野:私もそう思います。同じスタッフさんが集結して、同じ人を撮っているのに、こうも見え方が違いますからね。前作は、乃木坂46で頑張るためのお守りで、本作は、卒業後の自分に勇気を与える宝物。この両方があっての、今の私です。


――両作あわせて見てもらいたいですね。では最後に、本作を手に取ってくださる方にメッセージを。


北野:前作を出したときは、長く活動をお休みしていたにもかかわらず、まだ私を応援してくださる方がいるんだと勇気をもらいましたし、本作も、発売を待ち望んでくださるファンの方の存在を感じて嬉しく思いました。本当に、みなさんの支えがあってここまでやってこられたと思っています。


 もしかしたら、今後の人生で何かでつまずいてしまうファンの方もいるかもしれません。それでも、何につまずくかは分からないにしても、私の写真集をふたつ並べて見てもらえれば、できない自分も含めていろんな自分がいていいんだと、自分を認めるきっかけになるんじゃないかと思います。写真集ですし、言葉がない分、受け取り方は人それぞれになってしまうのですが、温度感は真逆でも、どちらも私らしい私が写っているのは間違いないので。本作が、手に取ってくださった方に勇気を与える一冊に育っていくことを願っています。