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一言で日本酒通ぶれるパワーセンテンス 第1回 「この酒、燗にしても美味しそうだね」

2022年02月12日 18:02  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
日本酒は、近年醸造技術が向上し、驚くほど味わいが良くなっているのを知っていますか? また、2012年に政府が国を代表する酒「國酒(こくしゅ)」として定め、日本の気候風土、日本人の忍耐強さ・丁寧さ・繊細さを象徴した、「日本らしさの結晶」としています。日本酒は海外から関心を集めると同時に、国内からも再注目を浴びているのです。



そんな日本酒に「これからチャレンジしてみよう!」と思うものの、「あまり詳しくはないから……」と尻込みする人もいるはず。そこで、今までに複数の日本酒専門店で女将を務めた経験を持つ、日本酒ライター「関友美」が、居酒屋や日本酒BARなどで一目を置かれる「日本酒通」ならではの、パワーセンテンスをあなたにそっとお教えします。


■本日のパワーセンテンス



「この酒、燗にしても美味しそうだね」



類似ワード:「このお酒、人肌燗にしてください」「この日本酒、温度変化が楽しいね」「冷(ひや)の酒ありますか?」

追加ワード:「燗上がりしてるねぇ」「燗がしみるねぇ」「もうちょっと熱めでもいいかな」

■その意味とは?



奥深い日本酒の温度の世界。たった1℃の違いで、味わいの感じ方が大きく変わるという日本酒も数多く存在します。冷酒や常温だとちょっと味気なかった日本酒が、熱燗にすることで炊き立ての炊飯器を開いたときのようにふわっと香り立ち、甘み、酸味、キレのバランスが整うこともあるのです。その状態のことをプロの世界では「(味わいが)開いた」と、呼んだりします。



日本酒こだわりの飲食店でこのセンテンスを使えば、あなたは「日本酒の微細な味の違いがわかる上に、温度にまでこだわる、通だな」と思われるでしょう。

■解説



日本酒は、世界でも珍しく、砂糖や香辛料など何にも加えない、そのままの状態で微細な温度変化を楽しめるお酒といわれています。



提供する側である飲食店の人は、お客様が飲む時の最終温度が一番おいしい状態であるよう心がけ、逆算しています。湯煎する湯の温度に気を遣いながら、それぞれに適した温度を見極め、ちろり(日本酒を温めるときに使う酒器)から徳利にお酒を移した時や、徳利からおちょこに注いだ時に冷めることも考慮して、お燗をつけているのです。



たくさんの日本酒を品ぞろえする飲食店では、お客様のあらゆる好みに応えようと、さまざまな味わいのお酒を取りそろえています。オススメされ出されたお酒にはまず「おいしい」「いいですね」とリアクションしてから、「この状態もいいけど、この酒、お燗にしても美味しそうだね」と言ってみると、喜んで解説してくれることでしょう。



ぜひ酒場で、パワーセンテンスを使ってみてくださいね。


■パワーセンテンスのNG場面/OK場面



楽しみ方は自由ですが、プロの目線から見て「それは絶対に燗には合わないよ~」と感じるお酒もあります。そこで以下のシチュエーションでは使用を避けましょう。



<NG場面>

1. 冷蔵庫から出された「無濾過生原酒(むろかなまげんしゅ)」「生酒」

2. 「冷酒で飲むのがオススメです」と明言されたとき

3. 「香りが華やかです」と勧められたお酒



<OK場面>

1. 常温で保管されていたお酒

2. 「生酛(きもと)」「山廃」と書かれたお酒

3. 「ひやおろし」「秋上がり」と書かれたお酒

■熱燗についてワンポイントアドバイス



寒い冬に飲むイメージが強い「熱燗」ですが、1年を通してオススメの飲み方です。アルコール飲料は体内に入ってから、体温と同じ温度にされて分解されます。



だから最初からあたたかい熱燗は、冷酒ほど身体のエネルギーを使わないで済みます。脳が「酔い」を早く感じることもできるので、「気づくと思ったより酔っ払っていた~! やっちゃった!」という可能性も低くなります。



意外ですが、スマートに日本酒を飲みたい人の味方が、「熱燗」というわけです。

■女将からひとこと


以前に女将経験もある著者から最後にひとこと……。



現在、全国には1200カ所を超える酒蔵があります。「熱燗」向きの酒を得意とする蔵、冷酒でおいしい酒を造る蔵……など酒蔵ごとに考え方はさまざまです。年によって味わいが変わることも。



かわいい見栄は張ってOK。でもお店のお酒は、誰よりお店の人が知っています。郷に入っては郷に従え。たとえ詳しくなっても頭でっかちにならず、お店の人にゆだねながら、純粋な心で日本酒を楽しんでみてください。



関友美 せきともみ 日本酒のなんでも屋(日本酒ライター/コラムニスト/フリーランス女将/きき酒師/山陽盃酒造の広報企画/シードルマスター)北海道札幌市生まれ。東京と兵庫の二拠点生活。日本酒記事の執筆、酒蔵へのコンサルティング、初心者向けのイベントやセミナーの講師および主催、日本酒専門店のプロデュース・女将としての接客業務などを通して、お酒の美味しさと日本文化の面白さ、地方都市の豊かさを伝えている。
ホームページ:https://tomomiseki.wixsite.com/onlyInstagram:https://www.instagram.com/tomomi0119seki/ この著者の記事一覧はこちら(関友美)