2月5日に南アフリカのキャラミで行われたIGTCインターコンチネンタルGTチャレンジ第3戦キャラミ9時間に臨み、2021年シーズンのドライバーズタイトルを獲得したAFコルセ。同チームのチームマネージャー兼チーフエンジニアによると、今戦ではレースでの優勝は“二の次”であり、タイトルを争うアウディを打ち負かすことが最優先事項であったという。
フェラーリのセミワークスチームであるAFコルセは今回、2台のフェラーリ488 GT3 Evoを持ち込み、51号車にドライバーズタイトル獲得にもっとも近い位置にいるアレッサンドロ・ピエール・グイディとコム・レドガーを乗せた一方、“保険”として彼らとともに第1戦スパ24時間を制したニクラス・ニールセンを71号車のラインアップに割り振る采配をとった。
結果としては51号車フェラーリが89号車メルセデスAMG GT3(メルセデスAMG・チーム・アッカASP)に次ぐ2位でフィニッシュし、ミゲル・モリーナとチームを組んだピエール・グイディとレドガーが戴冠。フェラーリにとって初のIGTCタイトルを持ち帰った。なお、71号車はギアボックストラブルでリタイアとなっている。
シーズンフィナーレにおけるAFコルセの主な仕事は、ピエール・グイディ/レドガー/ニールセン組をわずか2ポイント差でおいかけるクルーを擁すアウディスポーツ・チーム・サンテロックと、アウディスポーツ・チームWRTのアウディR8 LMS勢に先んじてフィニッシュすることだった。
彼らはレースの序盤に優勝争いに加わるかに見えた。しかし、レースエンジニアのルカ・ボルタとチームマネージャーを務めるベルナルド・セラのふたりは、ポールポジションからレースを引っ張る89号車メルセデスとの戦いが優先事項ではないという点で同意していた。
AFコルセはレース時間が残り5時間となったとき、ピットアウト時にアッカASPの前に出たが、51号車を駆るレドガーは迫りくる89号車メルセデスに抵抗せず順位を明け渡す。
「我々はメルセデスと戦いたくなかった」とボルタはSportscar365に語った。
「とくに(ラファエル・)マルチェッロがドライブした場合、彼らは我々よりコンマ2、3秒速かった。私たちはドライバー選手権に勝つことを唯一の目標としており、このレースに勝つことは二の次だったんだ」
「もし私たちがメルセデスを捕まえてバトルになったとき、ヒットされたりスピンアウトでもするようなことになれば、フェラーリはハッピーにはならないだろう」
■「メルセデスのペースは僕たちには強すぎた」とピエール・グイディ
また、セラは次のように付け加えた。「メルセデスは間違いなく我々よりも速かった」
「チャンピオンシップに勝つために、我々はアウディのことだけを考えていた」
「私たちの目標はアウディの前に留まることだったからね。僕らにとっては、メルセデスは透明も同然な存在だったんだ」
ボルタは、ピエール・グイディとニールセンの両名が、残り6時間弱のタイミングでマッティア・ドルディ駆る32号車アウディ(チームWRT)をオーバーテイクしたとき、フェラーリチームがアウディのピットストップ戦略を反映できることに気がついたという。
「幸いなことに、アウディは少しパフォーマンスが不足していることが分かった。だから、もし彼らが(2台で)戦略を分けないのであれば僕らはそのまま先に進むだけだと言ったんだ。なぜなら僕たちは(彼らの)戦略をコピーするだけでタイトルを獲得できるからだ」
「レースは、つねにふたつの見方がある。パフォーマンスがない場合は攻めた戦略をとる。チップを賭けてより高い確率のことを選択していくんだ」
「一方、(クルマに)パフォーマンスがあれば、前にいることになるのであまり工夫して動くことはしないようにする」
このとおりのレース運びでアウディ勢を下し、見事IGTCタイトルを獲得したピエール・グイディは、「正直なところ縁石やバンプを避け、ジャンプもせず最後のスティントでプッシュしなかった理由はそれだ」とSportscar365に語った。
「このトラックはクルマとドライバーにとって本当に厳しい。だから、よりフレッシュな状態で戦えるようにシングルスティントで走ることにした」
「最終的には(アッカASPと戦うのは)難しすぎるうえにリスクが高いことを理解し、これのレースに勝つことよりもチャンピオンシップのことを考えた」
「チャンピオンシップとレース、両方で勝てればもちろん良かったが、メルセデスのペースは僕たちには強すぎた。最後のスティントでは、とにかくマシンをマネジメントして最後のフィニッシュまで持っていくことに務めたよ」