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1億円超もざらのトヨタ「2000GT」が3,000万円! このクルマは一体?

2022年02月07日 11:31  マイナビニュース

マイナビニュース

画像提供:マイナビニュース
トヨタ自動車の「2000GT」といえば「ボンドカー」に選ばれたこともある歴史的な名車で、今から中古車で買おうとすれば1億円以上の値が付いていることも珍しくないクルマだが、なんと先ごろ、3,000万円の個体を発見した。といってもレプリカなのだが、すばらしい出来栄えだったので作った会社に話を聞いた。


「東京オートサロン2022」にはさまざまなクルマが展示されていたのだが、筆者が最も気に入ったのは、愛知県岡崎市の「ロッキーオート」が出展していたトヨタ「2000GT」のレプリカモデル「3000GT」だ。



ベースモデルの2000GTは1967年にトヨタとヤマハ発動機が共同開発した日本初のスーパーカー。リトラクタブルヘッドライトを備えた流麗なロングノーズ・ショートデッキのボディには、「クラウン」のエンジンにヤマハ製DOHCヘッドを組み合わせた最高出力150PSの3M型直列6気筒エンジンを搭載。5速フルシンクロメッシュトランスミッション、4輪ディスクブレーキ、前後ダブルウィッシュボーンサスペンション、軽量マグネシウム製ホイールなどを装備し、高い走行性能を誇ったモデルだ。ジャガー「Eタイプ」などにも採用されたX型バックボーンフレームに別体のボディを取り付けた当時の軽量・高剛性構造で、0-400m加速15.9秒、最高速度220km/hは当時、世界トップレベルの性能だった。



1966年にはプロトタイプが茨城県谷田部にあった自動車高速試験場でスピードトライアルに挑戦し、72時間の世界記録を樹立。第3回日本グランプリで3位に入賞するなど、2000GTはさまざまなシーンで活躍した。1967年には、2台だけ製造されたオープンカー仕様が日本を舞台にした英国映画『007は二度死ぬ』にボンドカーとして登場。華やかな話題を振り撒いた。ちなみに、ボンドカーがオープンカーになった理由は、主役のショーン・コネリーが長身のため、狭い2000GTのコックピットに乗り込むことができなかったからだ。



大卒の初任給が2.5万円程度だった当時、2000GTの車両価格はその100倍近い238万円と超高額(現代の感覚なら2,000万円以上か)だった。その車両価格でも、コスト面では赤字になっていたなどの理由もあって、生産は1970年に終了。3年弱で製造されたのはたったの337台だったため、現存する個体の価格は高騰している。程度の良好なものは1億円を超えることもざらにあるという。



そんな2000GTのボディ形状はそのままに、現代の環境でもきちんと走ることができるレプリカを1からハンドメイドで製造し、2014年から販売しているのがロッキーオートの「ロッキー3000GT」だ。


ボディは当時の設計図が現存しないため、実車を3D CADでデータ化し、1/1スケールの木型をもとに金型を成形。1台1台を熟練の職人がハンドメイドで製作している。野崎喩デザイナーによる特徴的なフェンダーの峰や細かなラインまで忠実に再現したという。製造を監修したのは、トヨタ自動車のワークスチーム「チームトヨタ」でキャプテンを務め、2000GTの開発にもテストドライバーやアシスタントデザイナーとして参加していた細谷四方洋(しほみ)氏というから完璧だ。


エンジンはレクサス「GS300」なども搭載する最高出力220PSのトヨタ製3.0リッター直列6気筒24バルブ「2JZ」型。ミッションは4速ATが基本で、5速マニュアルも選択することができる。


オリジナルではわずか3台しか製造されなかったというゴールドカラーに塗られた展示車の存在感は抜群。七宝焼で作られた逆三角形のロゴマークには「ROCKY 3000GT」の車名が入る。特徴的なホイールはデザインを継承しつつ、維持が難しいマグネシウムからアルミへと材質を変更。インテリアは美しいウッドパネル、7連メーター、ステッキ型のパーキングブレーキリリースレバーなどが忠実に再現されている。

GT3000でこだわったポイントや気になる販売状況について、ロッキーオートの渡辺喜也社長に話を聞いた。



――すばらしいレプリカですが、どんなところにこだわったんですか?



渡辺社長:制作時に監修の細谷さんからアドバイスをもらったのは、『オリジナルのデメリットは何だったか』というところ。2000GTはトレッドが狭いので直進性が悪く、プロドライバーなら200km/hで走らせることができても、普通の人は無理でした。つまり、直進安定性が悪いんです。3000GTでは片側25mmずつトレッドを拡げて対応しました。


渡辺社長:もうひとつはドアを開けた時の乗降性です。オリジナルは乗り降りがしにくいのですが、3000GTはハンドルをオートチルトアップする構造にすることで対応しました。これ以外にもオートエアコンを搭載したり、エンジンを現代のものにしたりすることで、どんなユーザーでも乗りやすいクルマに仕上げてあります。今、本物の2000GTで東京~名古屋間を走るのはちょっと厳しいと思うんですが、3000GTなら簡単です。リッター12kmくらいは走るんじゃないかな。



とにかく、『あったらいいな』と思うものを製作しました。昔のプロショップは『旧車なんだから、こうじゃなきゃいけない』という固定観念でやっていた部分がありますが、今は違います。本物を求めるのなら、デメリットを分かった上で手に入れること。都内やロングドライブで快適に乗りたいならコチラ(3000GT)を、というのが私の考えです。売るだけ売って、後の整備は他の店で、なんていうのはもってのほかですね。



――欲しいという人もたくさんいると思いますが、販売状況はいかがですか?



渡辺社長:現在は年間6台ペースで売れています。合計50台を限定生産するというのは最初から決めていたので、それ以上は作りません。今まで40台が売れているので、残りは10台です。あと5台は3,000万円のままで販売しますが、ラスト5台は儲けるためではなく価値を上げるという意味で、そして我々の傑作という意味で、とりあえず会社で保管しておきたいと思います。


「50台を作ったら1~2年休んで、次のプロジェクトに取り掛かりたい」と語っていた渡辺社長。次に登場するのは、ひょっとして電動の2000GT? そんな期待も膨らんでくる。


原アキラ はらあきら 1983年、某通信社写真部に入社。カメラマン、デスクを経験後、デジタル部門で自動車を担当。週1本、年間50本の試乗記を約5年間執筆。現在フリーで各メディアに記事を発表中。試乗会、発表会に関わらず、自ら写真を撮影することを信条とする。 この著者の記事一覧はこちら(原アキラ)