2022年02月05日 09:51 弁護士ドットコム
別の人が撮った写真などをトレースして描く「トレパク」の疑惑をめぐり、イラストレーターの古塔つみさんが「引用」などについて、釈明・謝罪したうえで、トレパクは完全否定した。
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しかし、疑いの向けられた複数の作品が次々と掘り起こされ、謝罪後もネット上で議論がされ続けている状況だ。
そんな中、イラストレーターの「あかた」さんのツイートに反響が寄せられている。
〈トレパクを疑う人間には俺(成人男性)が可愛いポーズで自撮りしてる姿が大量に収められた地獄のオリジナル資料フォルダを送付するので覚悟してください〉
あかたさんに今回の騒動について聞いた。(編集部・塚田賢慎)
古塔さんは、人気音楽ユニット「YOASOBI」の代表曲『夜に駆ける』のキービジュアルのほか、文化庁主催の「Future Artists Tokyo 2022」(3月)のキービジュアルを手がけるなど、幅広く活躍している。
YouTuberの配信の中でトレース疑惑が指摘されたことから、2月3日にツイッターで釈明・謝罪した。
「引用・オマージュ・再構築として制作した一部の作品を、権利者の許諾を得ずに投稿・販売してしまった」
そう説明する一方で、写真そのもののトレースは否定。また、写真素材や実際のモデルの写真を参考にすることが多いが、模写についても、盗用の意図はないとしている。
古塔さんのトレパク騒動をうけて、イラストレーターの「あかた」さんによるツイッターの投稿が大きな反響を呼んだ。
あかたさんは20代前半の男性で、イラストレーターとして活動中の専門学生だ。
動画配信者の依頼で動画サムネイルを描いたり、Vtuberの立ち絵(アバター)のデザインとイラストを作ったりしているという。
かわいい美少女イラストは、成人男性(あかたさん本人)の自撮りが参考にされる。
弁護士ドットコムニュースは2月4日、あかたさんにインタビュー取材を敢行、イラスト作成に利用する「自撮り」を見せてもらうとともに、今回の騒動について聞いた(以下、一問一答)。
――投稿のきっかけは
ツイッターでトレパクが話題になっていることを知り、勢いでツイートしました。
古塔さんのことは知りませんでしたが、トレパクかどうかはさておき、リアルっぽいものを絵として落とし込むのがうまいという第一印象を受けました。
――イラスト作成のために自撮りをよくしますか
はい、参考資料がないと描くのは難しいので、全身だけではなく、手もよく自撮りします。
今回の炎上は大きなものですが、イラストレーター界隈では、「あの作家のイラストは誰々のトレパクだ」などという指摘がSNS上でちょくちょくあります。
――常に自撮りをしていれば、疑いの目を向けられないということでしょうか
いいえ、パクリでないことを完全に証明するのは難しいことです。自撮りも証拠にはなりえません。自撮り写真自体がパクリであるとか、ある作品のポーズを真似て自撮りしても、パクリになりえる可能性はあります。
私の投稿にもそのような指摘のリプライがあり、たしかにそうだと感じます。
――今回の疑惑をどのように受け止めましたか
実際のところは、本人しかわからないことです。描く過程を見ていないので、作品・写真などを上からなぞったのかどうかはわかりません。何を言っても野暮になってしまいます。
ただ、一点の作品だけが似ているのであれば、偶然かもしれません。しかし、同じような疑惑を積み重ねると、信頼はどんどん失われてしまうでしょう。
――一般的に、アイデアが枯渇したクリエイターであれば、トレパクに手を染める誘惑に勝てないのでしょうか
私は幸いなことに、アイデアが尽きてどうしようもなくなったことがありません。ですので、その誘惑についてはわかりませんが、それよりも、やっていないのに、トレパクを指摘されて炎上するリスクを恐れています。
オリジナルのはずのイラストが、既存の作品のトレパクだと指摘されたときに、それを完全に否定する方法がないことが怖いですね。
創作風景をすべて録画しておくことも現実的ではないかもしれません。
深く著作権について学ぶ機会はありませんでしたが、専門学校では、パクリと言われるからトレースはやめましょうと教わります。なるべく自分でオリジナルの資料を用意したほうが安心ですし、安全です。
極論ですが、創作において完全にオリジナルなものというものは不可能じゃないでしょうか。意識せずとも、あらゆるデザインは、いろんな要素を取り込んだうえで、デザインになりえるものだからです。
今回、あかたさんから提供を受けたイラストは、専門学校の卒業制作展に向けた作品だ。大分県の各市を擬人化したプロジェクトの一部で、ピンクの少女は宇佐市、もう1枚は豊後大野市をモチーフにしている。