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これも反ワクチン? 狂犬病の予防注射、打たせなくてもOKなのか 厚労省に聞いた

2022年02月04日 18:41  弁護士ドットコム

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狂犬病ワクチン接種は「飼い主の法的義務だ」と警鐘を鳴らす投稿がツイッターで話題となっている。


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現役獣医師だというこのツイート主は、狂犬病ワクチンを犬に打っていないという飼い主のツイートを引用したうえで、「狂犬病ワクチンは『狂犬病予防法』で義務化されています」と警告する。



ワクチンを打たなくても病気にならなかったという意見に対しては、「他の動物たちがワクチン打ってきて伝染病が流行らなかったお陰」であり、あくまで結果論だと反論。義務である以上、「犬を外に出さない」「副作用が怖い」などはワクチンを打たない理由にならず、必ず打つよう促している。







厚労省のホームページによれば、狂犬病は、狂犬病にかかった動物にかまれた部位からウイルスが侵入して引き起こされる病気で、ヒトを含むすべての哺乳類が感染する。ワクチン接種で発症を防ぐことは可能だが、いったん発症してしまうと有効な治療法がなく、致死率はほぼ100%とされる。



●ワクチン接種させなければ罰金刑も

狂犬病予防法は、あくまで狂犬病の発生予防、まん延防止、撲滅を目的とした法律であり、犬の所有者だけを対象としているわけではない。



ただ、犬がヒトに対する主な感染動物であるため、同法は犬の所有者(飼い主)に対してのみ課する義務を定めている。



犬の所有者は、犬を取得した日(または生後90日を経過した日)から30日以内に、居住している市区町村に登録申請し、登録後に交付される鑑札をその犬に着けておかなければならない(同法4条)。違反した場合、20万円以下の罰金になる可能性がある(同法27条1号)。



また、犬の所有者は飼い犬に、狂犬病の予防注射(狂犬病ワクチン接種)を毎年1回受けさせ、接種した際には交付される注射済票を着けておかなければならない(同法5条)。違反した場合、こちらも20万円以下の罰金になる可能性がある(同法27条2号)。



これら義務違反は犯罪であり、罰金刑となれば懲役刑や禁錮刑と同じく前科がつくことになる。





●厚労省「猶予=その年の接種免除ではない」

なお、犬の体調や病気などの理由で、獣医師が予防注射を猶予する必要があるとして、「狂犬病予防注射猶予証明書」を発行する場合がある。



厚労省の担当者は、弁護士ドットコムニュースの取材に対し、この猶予証明書が自治体などで使われていることは把握しているとしたうえで、「『予防注射に連れてきた犬の体調が悪いので予防注射接種期間内の別の日に打ちましょう』というような運用であれば、法的にまったく問題ない」と話した。



予防注射接種期間は、初回の接種を除き、例年は4~6月に設けられている。たとえば、4月に接種しようとしたところ、犬の体調に問題があったとして、6月の別日に打つようにするという形での猶予なら予防注射に関する義務違反の問題は生じないという。



しかし、狂犬病予防法令には、予防注射の義務を免除するといった規定はなく、猶予証明書が発行されたからといって、「その年の予防注射を免除して良いとは考えていない」(担当者)との見解を示した。



「法令で定められた規定事項を超えた猶予を認めるものとは考えていません。接種期間内の別の日には接種してもらうための運用として、猶予証明書などを使うというのはあり得るという見解です」(担当者)



ネットでは、「狂犬病予防注射猶予証明書」があれば予防注射の義務が免除されるとの情報も散見されるが、厚労省の見解によれば、それは誤りだといえる。



●ワクチン接種は愛犬を守るためでもある

狂犬病予防法が制定された1950年以降、義務化された予防注射が進んだこともあり、1957年以降、国内で犬にかまれて発生した例はないとされている。



しかし、2006年には2人、2020年には1人、狂犬病を理由とした国内での死者が発生している。いずれも海外で犬にかまれた後、国内で発病して死亡した輸入症例だ。



一部の地域を除いて海外ではいまだに発生し続けている。厚労省のホームページによれば、世界での狂犬病による死亡者数は年間で5万9000人(2017年)とされる。



日本で狂犬病に接する機会がゼロになったわけではなく、侵入のおそれは常にある。万一の侵入に備えた対策として、そして愛犬を狂犬病から守るため、犬の飼い主一人ひとりが予防接種の義務を果たすことが重要なのではないだろうか。