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ポステレガント中田優也がライフプロダクトブランドを始動、"素材オタク"が追求する極上のリラックス

2022年02月04日 13:52  Fashionsnap.com

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「ザ・テラス」デビューコレクション

Image by: FASHIONSNAP
「ポステレガント(POSTELEGANT)」のデザイナー中田優也が、ライフプロダクトブランド「ザ・テラス(TheTerrusse)」を立ち上げた。2022年秋冬シーズンでのローンチに先駆けて、草月会館1階にあるイサム・ノグチが手掛けた石庭「天国」で展示会を開催。アイテムに用いた素材やインスピレーション源となったさまざまな年代の民藝品が並ぶ空間で、デビューコレクションを披露した。

「豊かな暮らしとは何か」コロナ禍で生まれた新ブランド
 ザ・テラスは日本各地の職人やメーカーと共にプロダクトを作り上げるブランドで、1年半以上の時間をかけて準備をしてきた。ブランド名はラテン語で地球を指す「terra」と私たちの「us」を掛け合わせた造語。「地球の循環が生み出す天然の素材を使うことで、私たちの生活は彩られ、豊かに暮らしていくことができている」ことをブランド名に込めた。これからの新しい価値観と、古くから残る技術や知恵を融合させたモノづくりを目指したという。
 ブランドの立ち上げは、以前より親交があるという和歌山の老舗テキスタイルメーカー エイガールズ(A-GIRL'S)の山下雅生会長との会話がきっかけとなった。「会長とお話した際に、コロナ禍で家にいる時間が増える中、デザイナーとして何が出来るかを考える機会があった。ポステレガントではどちらかというと外に出ていくための服を作っているが、より暮らしの豊かさが感じられるものを作っていきたいという考えるようになった」と話す。デビューコレクションはルームウェア約20型のほか、タオル、温泉成分配合の入浴剤などを展開。"素材好き"として知られる中田氏は1年の間に膨大な量の素材に触れ、数千におよぶ素材の中から厳選したものだけを選んで服作りを行っており、ザ・テラスにおいても使用する素材にこだわり抜きプロダクトを完成させた。
"素材オタク"が追求する極上のリラックスウェア
 「ザ・テラス」がウェアの製作において目指すのは、日中の活動中も睡眠中も「着ている人の心が落ち着く服」。着用者がリラックス状態でいられる着心地の良さを追求している。室内だけではなくワンマイルウェアとしても着られるカットソーやパンツをはじめ、カーディガン、バスローブ、コートなどを揃える。素材にはオーガニックコットン、ウール、カシミヤなどを使用。カットソーにはエイガールズの生地が採用されているという。

 オーガニックコットンはインドの超長綿を使用し、極限まで甘く撚ることで繊維の持つ柔らかさを最大限に生かした。肌当たりの良さは糸自体の毛羽をガスで焼いて仕上げを施すことで実現。和歌山で編み上げ、尾州(愛知)で仕上げられた。
 ウールの編み地は通常のウールの糸作りとは異なる手法を採用。綿の糸を紡績する技術でウールの繊維を糸に仕上げたといい、繊維が均等に糸になることで、糸節が出来にくく編み地が安定。美しい光沢と手触りの良い生地に仕上がるという。価格帯は1万円台のTシャツから、37万円のホワイトカシミヤ100%のコートといった高価格帯のものまで揃う。
老舗メーカと作る"タオル愛"の詰まった心地良いタオル

 生活の中で毎日使うものの一つであるタオルは、肌に触れた際の心地良さや吸水性の高さが要となる。今回、ザ・テラスがタッグを組んだのは愛媛県今治市にある創業50年以上の歴史ある小さなタオルメーカー。原料の綿花や糸の太さ、重さなどを変えて作り分けた、それぞれ異なる特徴を持った2種類のタオルを完成させた。アメリカ・カリフォルニア州サンホーキンバレーで育った綿花を使用した、密度の詰まった柔らかさが特徴の「Extra Soft」シリーズ、ウズベキスタン・フェルガナ盆地で栽培される綿花を使用した、しっかりとした拭き心地と柔らかさを兼ね備えた「Extra Volume」シリーズを用意する。価格はフェイスタオルが2500~3000円、バスタオルが9000~1万2000円。
50年以上にわたり研究された湯の花エキス

 入浴剤は、大分県別府市の別府八湯と呼ばれる温泉エリアをひとつ「明礬温泉」の湯の花を基材に採用。硫黄の臭いを取り除いており、心地良い浴後感を体感できる。明礬温泉の湯の花は、江戸時代から約350年続く製造製法を行う藁葺き屋根の小屋の中に、近隣の特殊な地質が生み出す青粘土と呼ばれる土を敷き詰め、地熱によってできる温泉ガスが地中から青粘土を通っていく過程で、青粘土の成分と温泉ガスの成分が結晶化することで出来上がる。職人の手によって湯の花は1日約1ミリ成長していくという。
 入浴剤の製造では、岐阜県に拠点を置く1962年創業の薬品工業会社の協力をもと、湯の花エキスを抽出・精製。強酸性を示す湯の花に、肌に優しく滑らかな湯質のアルカリ性成分 セスキ炭酸ナトリウムを掛け合わせた。湯色が透明で檜の香りのタイプ、白濁した湯色で無香タイプの2種類をラインナップ。サイズは1回使い切りの60g(300円)、1500gの大袋(6000円)の2種類を用意する。
展示会場に民藝品を並べた真意とは?

 展示会の会場には、同氏が収集した日本各地、年代もさまざまな民藝品や家具が多数並ぶ。各プロダクトの傍には名称や地域、年代などを記載したカードが置かれており、美術館の展示スペースを彷彿とさせる空間となっている。「民藝品や家具の多くは自然の素材から生み出されたもの。これらのように何十年経っても色褪せないものを作っていきたいと考えている」(中田氏)。今後の構想については「入浴剤を入れてお風呂でくつろいだ後、タオルで体を拭き、そして部屋着に着替える。今回のコレクションを通して、リラックスできる一連の流れを作ることができた。これに付随してソファのような家具なども作っていけたら」とし、より多角的なプロダクト製作を視野に入れている。デビューコレクションのアイテムは卸売での展開を予定している。