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ホンダの新型「シビックタイプR」は時代に合う? 開発責任者に聞く

2022年02月01日 11:31  マイナビニュース

マイナビニュース

画像提供:マイナビニュース
ホンダが新型「シビックタイプR」のプロトタイプを公開した。まだカモフラージュを施されてはいるものの、新型は現行型よりもすっきりとした印象のクルマに仕上がっているらしい。現行型と写真で見比べつつ、開発責任者に聞いた話もあわせてお伝えしたい。


○新型の特徴とタイプRの歴史



「東京オートサロン2022」のホンダブースに、独特の赤いカモフラージュを身にまとって登場した新型「シビックタイプR」のプロトタイプ。見える範囲でいうと、大型のエアインテークやワイドフェンダー、現行型よりもシンプルな形状になった大型リアウイング、リアセンターの3本出しテールパイプ(現行型は中央が左右より細いタイプだが、新型は中央の方が左右よりも太い形状になった)、265/30ミシュランタイヤ(現行の発表時はコンチネンタルだった)、ブレンボ製ブレーキ(現行型にも付いている)などを装着している。全体的には、現行タイプRよりも新型の方がすっきりとした仕上がりになっている。


ここでシビックタイプRの歴史を振り返っておきたい。



シビックタイプRは、1997年の6代目シビックから登場したスポーツバージョンだ。「タイプR」としては「NSX」「インテグラ」に続く3番目だった。初代シビックタイプR「EK9型」のエンジンは、8,000回転以上回る高回転・高出力の1.6L直列4気筒DOHC。サスペンションにはハードなチューニングが施してあった。レカロのバケットシートやモモのステアリング、チタン製のシフトノブがメインの装備で、ボディは大幅に軽量化されていた。



7代目をベースにした2代目タイプR「EP3型」は、2001年から英国で生産が行われた逆輸入モデルに。最高出力は215PSまでアップしていた。ただ、同じエンジンを搭載したインテグラタイプRの方が人気があったため、シリーズの中では販売台数の少ないモデルとなった。



3代目の「FD2型」は2007年に登場。再び日本製造となり(英国製造タイプもあり)、ボディは幅広の3ナンバー4ドアセダンタイプになった。



2015年の4代目「FK2型」は300PSオーバーの強力なターボエンジンを搭載し、最高速度は270km/hに到達。独ニュルブルクリンクの北コースにおいて、FFモデルのレコードラップを記録するほどの超高性能モデルだった。製造地は英国だ。



2017年の5代目「FK8型」はタイプR専用設計で、ノーマルモデルとは全く別物の仕上がりに。320PSまでスープアップされたエンジンと強力な足回り、ガンダムを想起させるド派手なエアロパーツなどで特別な1台となっていた。この5代目はニュルに再アタックを敢行し、先代の記録を更新している。開発責任者は、今回の新型も担当した柿沼秀樹氏だった。


○現行型と新型を手掛けた開発責任者を直撃



シビックタイプRの開発で2世代続けて責任者を務めるのは柿沼氏が初めてとのこと。同氏に話を聞くことができたので、以下でお伝えしたい。まずは、タイプRの現在地について。



「過去のタイプRは不要なものを削ぎ落として『ガチガチ』にし、『力づく』でも速く走ろうという乗り物だったんですが、その路線を踏襲していくと、タイプRは時代にそぐわない、ガラパゴスのような、『好きもの』だけにしか受け入れてもらえないクルマになってしまい、台数が出ずに淘汰されて、結局は世に出せないものになっていたはずです」



では、現行型タイプRでは何を目指したのだろうか。



「続けていくためには、違う方向に進化させなければいけない。現行型タイプRは、そんな思いで開発しました。速さは当然として、いかに意のままに、しかも安心・信頼して走ることができるか。さらに、クルマの基本性能のひとつである快適性も追求し、どこまでも走りたくなる乗り物にできるか。それらの点を両立させ、今の時代に即したクルマとして仕上げました。グローバルでも受け入れていただき、販売台数は過去最多となりました」



「現代のタイプR」として、いい流れを引き継ぐ新型。どんなクルマに仕上げたのだろうか。



「現行型で『やりきった』と思った部分もあるのですが、会社から次のタイプRも作るようにいわれ、『よし、次はどうしてやろう』という意識になりました。考えたのは最近のホンダ車、特に『シビック5ドア』で感じていただけたような、しっかりと進化した点(クルマ自体の素性がよさ)をタイプRでも継承した上で、タイプR専用として何をするか、ということです。クルマの状態を手とお尻と足で瞬時に感じ取りながら、信頼して走ることができるという特性を、現行型よりもさらに高めたい。乗られた方には、現行型から『さらに“ふた皮”むけてるじゃん!』と感じていただければと思っています」



その走り、まずはYoutube上に発表された1分21秒の公式動画で見ることができる。映像にはカモフラージュをまとった左ハンドルのタイプRが登場。ホンダのお膝元である鈴鹿サーキット本コースにあるピット内で走行前の準備をするシーン、ピットレーンからのスタート、1~2の複合コーナーをクリアする車内の様子、裏ストレートからほとんど姿勢を変化させずに超高速のまま130Rへ侵入する姿、ホームストレートの通過など、新型シビックタイプRプロトタイプの勇姿を確認できる。



エンジン音はマクラーレンホンダF1のような「カーン」という甲高いものではなく(当然か)、「ブォーン」というちょっと低めのホンダミュージックだ。いずれにせよ、走りのレベルは相当に高そうで、期待は大きく膨らんでくる。


原アキラ はらあきら 1983年、某通信社写真部に入社。カメラマン、デスクを経験後、デジタル部門で自動車を担当。週1本、年間50本の試乗記を約5年間執筆。現在フリーで各メディアに記事を発表中。試乗会、発表会に関わらず、自ら写真を撮影することを信条とする。 この著者の記事一覧はこちら(原アキラ)