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堀部圭亮、松原智恵子、おいでやす小田 『カムカムエヴリバディ』京都編で賑わう人々

2022年02月01日 08:21  リアルサウンド

リアルサウンド

『カムカムエヴリバディ』(写真提供=NHK)

 NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』第13週で、るい(深津絵里)と錠一郎(オダギリジョー)の新しい生活が京都で始まった。京都編では、ベリーこと野田一子(市川実日子)が引き続き登場するが、京都で新たに出会った登場人物にも注目だ。


■“ケチ兵衛”かと思いきや……堀部圭亮演じる赤螺吉右衛門


 安子編ではまだ幼かった吉右衛門だが、母・清子(松原智恵子)が「年々お父ちゃんに似てくるんやさかい」と言うように、父・吉兵衛そっくりに成長した。それもそのはず、堀部圭亮は安子編では吉兵衛を演じている。


 堀部演じる吉右衛門は、少し角のとれた吉兵衛といった風貌だ。


【写真】父・吉兵衛と幼い頃の吉右衛門


 “ケチ兵衛”こと吉兵衛は偏屈でケチくさい性格で、ことあるごとにカッカする姿が印象に残っている。例えば第1回で、ラジオを算太(濱田岳)に盗まれた時には、どんなに金太(甲本雅裕)が頭を下げても「いいや! こらえん!」と一向に怒りが静まらなかった。


 一方で、吉右衛門の文句の言い方はややマイルド。錠一郎にテレビを買う気がないと分かると「買う気あらへんのか」と静かに不服を漏らした。頭に血がのぼるような怒り方はしない。とはいえ、錠一郎とチャンバラに興じて腰をいわした時には、るいがお詫びに差し出した回転焼きをつっぱね、「もう許されへん。あんたらにはこの商店街出てってもらう」と怒っていたが、その姿は父・吉兵衛を彷彿とさせるものだった。


 近所の子供たちから「ケチエモン」とからかわれるほど、ケチくささも父に似てしまった吉右衛門だが、堀部の演じ分けは目を見張るものがある。吉兵衛を演じていた時は、家族以外の人間を牽制するようなギョロリとした目つきだったが、吉右衛門の目つきは吉兵衛より柔和で、母・清子の優しく控えめな性格も引き継いでいるのだと感じる。SNS上では、清子を「おかあちゃん」と呼ぶ際のイントネーションが、幼少期の吉右衛門(石坂大志・中川聖一朗)と同じで、懐かしさを感じるという声もあがっていた。


■安子編での面影を残す、松原智恵子演じる吉兵衛の妻・清子


 安子編では、宮嶋麻衣が吉兵衛の妻・清子を演じていた。岡山空襲で夫を亡くした後、清子がどのようにして息子・吉右衛門とともに人生を歩んできたのか、劇中では語られない。だが、松原演じる清子からは、宮嶋が演じていた時同様、もの柔らかな佇まいでありながらも、夫亡き後、息子とともに荒物屋「あかにし」を再興させた努力が感じられるような、芯の通った一面が感じられる。


 清子もるいも、赤螺家とるいの母・安子(上白石萌音)に縁があることには気づいていない。けれど、回転焼き屋を始めたるいに「大変やろうけどおきばりやす」と優しく労いの言葉をかけ、清子と吉右衛門にとってなつかしい味を求めに、たびたび回転焼きを買いにくるなど、るいたちの生活を温かく見守る存在になることは間違いない。それに何より、松原の穏やかな笑顔には安心感がある。息子の将来やるいたちの生活を思い、微笑む姿が魅力的だ。


■朝ドラ初出演のおいでやす小田演じる、酒屋のおじさんこと森岡新平


 第61回で、回転焼き屋を開店させたるいが「おいでやす」と客を呼び込んでいたが、そこへやってきたのが、おいでやす小田演じる森岡である。連続テレビ小説初出演となる小田は「信じられません。一年前、こんなことになるなんて誰が予想できたでしょう」※とコメントしているが、初出演とは思えぬほど自然に京都編の舞台に溶け込んでいる。


 芸人らしい面白い演出も多々ある。例えば、チラシを配る錠一郎への「見たら分かるやろ、おっちゃん手塞がってんねや」のツッコミや「奥さん! えらいこっちゃ」と慌てふためく様、小田の芸風らしく、大声でツッコむような言い回しなど。もちろんそれらも十分魅力的だが、小田はごく普通の下町のおじさんを見事に演じている。「1つくれるか」と回転焼きを注文するシーンは日常を切り取ったようで、どこかほのぼのとした雰囲気があった。


 京都編はまだ始まったばかり。るいと錠一郎、そして時代劇大好きな女の子に成長したひなた(新津ちせ)を見守る彼らの今後の動きにも注目したい。


※参考
https://realsound.jp/movie/2021/11/post-895345.html


(片山香帆)