銀行に小銭を預け入れると「手数料」がかかる時代になった。手数料は銀行によって違うが、硬貨1枚あたり1円~のようで、1円玉に至っては「赤字」になるレベルのようだ。これに困っているのが、お賽銭で大量の小銭を受けとる全国の寺社。中には「キャッシュレスお賽銭」を導入するところも出てきたそうだ。
こうなると気になるのが、お賽銭は賽銭箱に入れなくても、大丈夫なものなのだろうかという点だ。というか、むしろお賽銭ってそもそも何なんだ?(取材・文:昼間たかし)
お賽銭の歴史は、まだ600年ほど
神社本庁にお賽銭の起源を聞いたところ、こんなことを教えてくれた。
「お賽銭の起源には諸説がありますが、西暦1500年代には存在していたようです」(広報国際課)
仮に、この時期に始まったとすると、お賽銭の歴史はまだ500年程度ということか。
お賽銭の源流にあたるのは、御神前へのお供え物だ。今でもお祭りや行事の際に、御神前にはお酒やお米、海や山の幸などがお供えされる。お賽銭が登場する以前には、神社に参拝した人は、いわば「現物」をお供えしていたのではないかと考えられている。
中でも、お米は白紙で巻いて包み「おひねり」としてお供えされていた。発祥についてはまだ研究が進んでおらず、明確な答えが出ているわけではないが、貨幣経済が発展した中世以降、こうした「現物」に代わるお供え物として、貨幣が用いられるようになったのが、お賽銭なのではないかと考えられている。
そんなお賽銭だが、銀行の手数料有料化で、1円玉などはかえって赤字になってしまう問題が生じている。すると1円や5円などの少額硬貨を入れると、かえって迷惑になってしまうのだろうか? 神社本庁に訊ねたところ、丁寧に言葉を選びつつ、こんな答えをくれた。
「お賽銭は、あくまで神様にお気持ちを伝える意味のもので、こうしなければならないという決まった形はありません。ですので、参拝されたご本人がよいと思う方法を選択して頂ければと思います」
そうすると、普段はお賽銭なしで手を合わせるだけにして、初詣やお祭りの時にまとめて紙幣を入れるのでも構わないのだろうか? 思い切って尋ねてみると、「そこも、参拝される方がよいと思う方法で」とのことだった。
このあたり、神道は柔軟である。筆者は一昨年、コロナ禍での初詣について、神社本庁にいろいろと取材したことがある。
当時あったのが「(感染が心配で)手水の柄杓を触りたくない」という声だったが、これに対する担当者の提案は「家で手を洗ってから神社に来てはどうでしょう」だった。また、初詣に行けなかったと悩んでいる人について聞くと、「参拝できた時に、初詣のぶんも併せてお参りすればいい」という答えが返ってきた。
そういえば、電子マネーのお賽銭についてはどうなんだろう?
これも聞いてみると、神社本庁は「禁止をするわけではないが、推奨はしていない」そうだ。
確かに参拝時にQRコードをかざし「ペイペイ!」とか音がなったら、荘厳な空気もぶち壊しになるだろう。まあ、もしかしたら10年後には当たり前になってるかも知れないが……。