都内でUber配達員をしていると、タワマンへお届けする機会が頻繁にある。「上級国民」と揶揄されることもある彼らは、どんなメニューを注文しているのか、なんとなく気になる読者もいるだろう。(文:飯配達夫)
人気なのは、やっぱりアレ。
意外かも知れないが、一番多いのはマクドナルドである。「いいトコ住んでるのに……」と言いたくなるかもしれないが、そもそもUberで最も注文が多いのがマック。僕が初めて受けた注文もマックだった。
たとえて言うならばカップラーメンのようなもので、口寂しいときに「パッと思いつく」「食べたくなる」のは、収入に関わらずこういったメジャーなブランドの商品なんだろう。
そんなわけで、タワマン住民だからといって、特別高いものばかり注文するという傾向はないように感じる。配達員用のアプリには、注文された料理の価格は表示されないが、おそらく1配達あたり2千円程度の注文が1番多いように思える。
「贅沢な料理」の注文がくる確率が一番高いのは、タワマン住民ではなく、中庭(パティオ)が広がる都心のハイグレードマンション住民からだ。六本木や新橋の寿司屋、日比谷の高級中華店、西麻布のしゃぶしゃぶ店、熟成肉が売りの某ステーキ店などなど、さまざまな料理を運んだ。
こうした配達を引き受けると、配達員はつかのま、都心の異世界を垣間見ることになる。
商品を受け取るのは、照明を抑え、しっとりした雰囲気の大人の店。それをお届けするのは、繁華街から距離を隔てたところにあるマンションだ。敷地に足を踏み入れたあとも、エントランスまで大理石を敷き詰めた通路があったりする。そして受付では、パリッとした制服に身を包んだコンシェルジェが対応してくれる。マンションに入館するのは、彼らが電話で「お食事が届いております」とお部屋に一報入れてからだ。
一方タワマンだと、配達員を裏口の守衛室経由で入館させるケースがままある。ささいなことではあるのだが、こういった点に、住んでいる人たちの余裕のちがいが現れているような気がしてしまうのだ。