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早乙女太一が体現した『カムカムエヴリバディ』トミーの情熱 京都編への登場は?

2022年01月30日 06:01  リアルサウンド

リアルサウンド

『カムカムエヴリバディ』(写真提供=NHK)

 るい(深津絵里)と錠一郎(オダギリジョー)の京都という新天地での生活が始まったNHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』。第13週のはじめでは、東京でジャズトランペットのアルバムをレコーディングしていたジョーこと錠一郎(オダギリジョー)が大阪に帰ってきた際、「何してんねん!!」といち早く駆けつけたのがトミー(早乙女太一)だった。しかし、京都に移ってからは彼は姿を見せていない。


【写真】『カムカム』第63話での10年後のジョーの姿


 第58話では、ジョーから事情を聞いたトミーが、ステージ上にもかかわらず、お酒を持ち込み、落ち込んだような様子を見せながら寂しげな曲を吹いていた。“ジョーの次”となる人材を探しにきたという奈々(佐々木希)に声をかけられても、「(ジョーのことを)最後まで責任とれや!」と食ってかかる。誰よりも関西一のトランペッターになることに意欲を見せていたトミーなのだから、ここは、「次は俺や!」と喜んでもいいはずなのに。クールなようでいて、とりわけ仲間のことになると感情がむき出しになってしまうところは、トミーの魅力的な一面のひとつである。


 思い返すと、トミーはいつでもジョーのことをアシストしてきた。トミーはジョーの良き理解者なのだ。ジョーのトランペットの魅力を理解しているからこそ、「関西ジャズトランペッターニューセッション」に出ることを渋るジョーに突っかかり、本番前におろおろしている姿を見ると、発破をかける。それに対するジョーの返答はいつもやわらかで穏やかなのだが、トミーは満足そうな表情を浮かべる。きっとその言葉の裏にある情熱を誰よりも知っているのだ。


 トミーを演じた早乙女太一は劇団員の両親の下に生まれ、初舞台は4歳の時。デビュー当時は、“流し目王子”と呼ばれ、視線やまばたきでの繊細な表現を得意としてきた。しかし近年は、『BLEACH 死神代行篇』(2018年)での阿散井恋次役や『孤狼の血 LEVEL2』(2021年)で暴力団・尾谷組の組員、花田優を演じるなど、オラオラ系の男くさい役も。何事にも動じない胆力と滲み出るような色気を感じさせるトミーは、年々、演技の幅を広げてきた早乙女の今の集大成といえるかもしれない。


 『ミステリと言う勿れ』(フジテレビ系)出演発表時には「トミー!」とネット上で話題になるほど、ドラマファンから親しまれていた早乙女。彼はオダギリジョー、深津絵里、市川実日子の”いつものメンバー”から見れば、実年齢は1番年下。キャリアもそうそうたる面々の中で、生意気でちょっと偉そうなトミーを演じるのは、かなりのプレッシャーだっただろう。それでも、ぶっきらぼうな言葉の中に優しさが滲んでいる、そんな役は彼にしかできなかった。そう思えるくらい早乙女は役に馴染んでいた。


 仁王立ちでトランペットを吹く姿やプレイスタイルには華があり、舞台映えするトミーは、1曲吹けば、女性から黄色い声が上がるほど大人気で、音楽で成功したいという野心もある。一方で、少し幸薄な顔と派手ではないが、情感があるプレイスタイルのジョーは、熱烈なファンというより、ベリー(市川実日子)のような、ずっと支え続けてくれるファンがいるタイプだろう。そして一緒に歩んでいきたい、るいがいる。彼にとって、るいの存在は名声よりも大切なものだ。正反対のトミーとジョー。だが、もしかしたらトミーはジョーに憧れを抱いているのではないだろうか。ジョーのようになりたいと思っていたからこそ、るいとの繋がりを見失い、トランペットへの情熱もなくし、自分をも見失っていくジョーの姿をただ見ていることが悔しかった。ジョーがいなければ、トミーもない。事実、ジョーから笹プロにいくことを勧められたトミーは、なんともいえない表情をみせた。


 トミーは、るいと違った形でジョーのことをずっと思っている。京都編ではベリーが一子として登場を続けているが、トミーは今頃どうしているのだろうか。るいとジョーがやっている回転焼き屋さんにひょっこり顔を出して、ジョーをからかってほしいな、などと思ってしまったりする。


(久保田ひかる)