従業員に対してかたくなに有給休暇をとらせまいとするブラック企業は少なくない。40代女性(東京都/年収350万円)も、そんな会社に就職してしまった一人だ。「親子二代の歯科医師が営む歯科医院。従業員は私を入れて2名」だったというその職場での経験談を紹介したい。(文:林加奈)
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「あなたの有休は年5日ね。日にちはこちらで決めるから」で「私には無理だ」
女性は入社から半年経過し、有給休暇の付与対象となった。すると院長が
「年に10日も休むのか。忙しい時に休まれると困るんだよ。休みばかりじゃないか」
と言い出した。女性はそれまでの半年で医院の決めた日以外は休んでおらず、休みの希望日もまだ出していなかった。院長には「忙しくなりそうな日は避けて早めに申請するし、10日丸々休まないので」と希望日に休みを取らせてほしい旨を頼んだが、「いい顔をされなかった」という。
その後「働き方改革にも疎い」と女性が評した院長は、社労士に相談したようだ。その結果……
「『事業所としては、有休は年5日取らせれば問題ないということだから、あなたの有休は年5日ね。日にちはこちらで決めるから』ということになりました。しかも前日の終業時に『明日、暇だから休んでいいよ』という一言で決められるのです。もう一人の方は陰で文句を言いながらも、それに従っているようでしたが、私には無理だと思いました」
「患者のために先生と頑張ろうという気持ちを維持できない」と思い、退職を決意
有給休暇を自由に取らせまいとする方針にドン引きした女性。「面接で詳しく確認しなかった私にも非はあるのですが」としつつ
「この医院では有給休暇を取る人はほとんどおらず、退職するときにまとめて、何年務めようと最大10日消化していたようです。院長は他の歯科医院での勤務経験はないそうです」
「前日急に休みを決められてもリフレッシュできませんし、できることも限られています」
などと不満を吐露。この件が引き金となり、女性は働きだしてから半年で退職した。「患者さんのために先生と頑張ろうという、医療に従事する者として一番大切な気持ちも維持できないと思い、辞めることに迷う気持ちはありませんでした」と振り返る。
なお、現在は「法令順守の歯科医院にすぐ転職できました」と、前職の会社を皮肉っている。「尊敬できる院長の下で働けるようになり、満足です」と明るく語ってくれた。