2022年01月27日 15:21 弁護士ドットコム
今年の大学入学共通テストで、試験中に出題画像が外部流出したとみられる事件。大学入試センターは、流出させた受験者が特定された場合、全教科の結果が「無効」となるとしている。ただし、次年度の受験資格は失わないというが、法的にはどのような責任を問われるのだろうか。
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各メディアの報道によれば、試験問題が流出したとみられるのは、1月15日午前9時30分から始まった「地理歴史・公民」の試験のうち、「世界史B」の問題だ。
複数の男子大学生が、Skypeを利用して、問題用紙の画像を送ってきた「依頼主」の求めに応じ、試験時間内に回答を返信した。
なお、共通テストの問題であるとの説明はなかったという。学生と依頼主とは、昨年12月に家庭教師紹介サイトを通じて知り合ったそうだ。
警視庁は偽計業務妨害の疑いで捜査を開始したという。
大学入試センターは1月27日、弁護士ドットコムニュースの取材に、匿名の通報をきっかけに、不正行為の可能性を確認し、警視庁目黒署に相談のうえ、被害の調査にあたっているとした。
由々しき問題だが、外部流出させた受験者の処分としては、不正行為をしたとして、試験結果を「無効」とするという。これは「欠席」と同じ扱いで、次年度以降の出願資格は失われない。
一方で、試験問題を撮影したうえ外部に流出させる行為は、どのような法的責任を問われるのだろうか。冨本和男弁護士に聞いた。
——偽計業務妨害罪とはどのような罪でしょうか
偽計を用いて人の業務を妨害した場合に成立し、業務活動を保護法益とする犯罪です。
「偽計」とは、人を騙したり、誘惑したり、あるいは人の勘違いや気付いていない状況を利用する違法な行為です。
試験問題を流出させる行為は、大学入試センターあるいは試験監督者に気付かれないようにおこなわれた不正行為であり、これによって試験業務が妨害されるわけですから、偽計業務妨害罪に問われると考えます。
——回答した学生も、手助けしたことで偽計業務妨害罪の「幇助犯」に問われる可能性はありますか
報道機関からの取材に学生が答えたところによると、学生は依頼された問題が共通テストだと知らなかったとしているようです。
知らなかったのであれば、幇助犯に問われないと考えます。幇助犯は犯罪に手を貸した者を処罰するための犯罪ですが、犯罪に手を貸しているという自覚がないのであれば処罰に値しないからです。
【取材協力弁護士】
冨本 和男(とみもと・かずお)弁護士
債務整理・離婚等の一般民事事件の他刑事事件(示談交渉、保釈請求、公判弁護)も多く扱っている。
事務所名:法律事務所あすか
事務所URL:http://www.aska-law.jp