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四国放送の誤爆社員「懲戒解雇」は厳しすぎる? ツイッターで「公明党」を中傷

2022年01月23日 08:51  弁護士ドットコム

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四国放送(徳島市)の公式ツイッターアカウントで、山口那津男代表をはじめとして公明党を誹謗中傷する投稿があった問題をめぐり、同社はこのほど、ラジオ局所属の50代社員を懲戒解雇した。一方で、この処分が「厳しすぎる」という声もある。


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●懲戒解雇に値するほどの行為?

四国放送によると、この社員は、個人アカウントに投稿しようとしたところ、操作を誤って、同社の公式アカウントに投稿してしまった。つまり、いわゆる「誤爆ツイート」だったということだ。



また、この社員の個人アカウント上では、「政治的中立性・公平性を著しく欠いた投稿を繰り返すなど、放送局の信用・信頼を棄損しかねない極めて不適切な言動を行っていた事実」も判明したという。



こうした事態を重く見た同社は「電波をあずかる放送局として到底許されるものではなく、不偏不党であるべき放送局の信用を揺るがしかねないもの」として、公明党や関係者に謝罪したうえで、就業規則に基づいて、この社員を懲戒解雇とした(1月4日付)。



今回の処分について、ツイッター上では「他山の石にしたい」といった反応のほか、「過去の同様の事例に照らして懲戒解雇に値するほどの行為か?」と疑問を呈する声もあがっている。今井俊裕弁護士に聞いた。



●社員に酷な処分だった?

――懲戒解雇はどんなときにしてもよいのでしょうか?



大まかに言って、解雇には三種類(普通解雇・整理解雇・懲戒解雇)があります。



普通解雇は、本人が心身の故障で業務に耐えられなかったり、残念ながら能力が伴っていなかったり、そもそも業務適性がなかったりするなど、非難に値するとまでは言えないけれども、このまま雇用維持しても会社運営上意義がない場合におこなうものです。



整理解雇は、いわゆるリストラです。そして、今回の懲戒解雇は、本人の言動に非難されるべき事柄があり、会社としても組織の秩序維持のために、このまま雇用契約を維持しておくことができない事態に対して、会社から放逐する場合のものです。



懲戒解雇の場合は、就業規則にその懲戒事由や処分手続が書いてあるはずなので、それにしたがう必要があります。



問題となるのは懲戒事由ですが、懲戒処分のうちでも一番重い処分なので、重大な事由でなければなりません。就業規則上の懲戒解雇事由に該当しなければ、懲戒解雇は無効となります。



――就業規則について、具体的な内容は明らかではありません。



たとえば、「会社の名誉や信用を著しく害した」といった事由が推測できます。報道機関の場合は、放送法で、番組編集の政治的な公平性が義務付けられるなど、ほかの業界とは異なる規制があります。



編集された番組内容のみならず、報道機関としての姿勢としても、これは重要なことです。今回は、特定の政党を誹謗中傷したようですが、それが報道機関の公式アカウントを利用してしまっていたことが問題だったようです。



もちろん、報道機関の社員とはいえ、本来、私人には「表現の自由」が保障されています。しかしそれが、報道機関の公式アカウントに投稿されてしまったという基本的ミスが今回の問題です。



一方で、今回投稿された内容を読んで、たとえ四国放送の公式アカウントが表示されていたとしても、それが、すなわち「同社の公式見解である」と誤解するような人はおそらくいないでしょう。



――今回のケースではどう考えればいいでしょうか?



そう考えると、仮に、たとえば、「会社の名誉や信用を著しく害したから」などという理由で懲戒解雇されたとすれば、この社員に少し酷かもしれません。



社員個人が放送機関の公式アカウントに容易に投稿できてしまったり、あるいは事前にしかるべきチェック機能が働くような制度を構築していなかったということも、この社員に直接非がある事柄ではありません。



先ほどの指摘と同じことになりますが、仮に、四国放送の公式見解であると誤解する人がほとんどいなかったとしても、四国放送の政治的公平性や中立性にどこまで害を与えたか、視聴者の信頼を害することになったか、という事柄の評価にかかってくるでしょう。




【取材協力弁護士】
今井 俊裕(いまい・としひろ)弁護士
1999年弁護士登録。労働(使用者側)、会社法、不動産関連事件の取扱い多数。具体的かつ戦略的な方針提示がモットー。行政における、開発審査会の委員、感染症診査協議会の委員を歴任。
事務所名:今井法律事務所
事務所URL:http://www.imai-lawoffice.jp/index.html