2022年01月20日 15:21 弁護士ドットコム
自身のウェブサイト上に他人のパソコンのCPUを使って仮想通貨をマイニングする「Coinhive(コインハイブ)」を保管したなどとして、不正指令電磁的記録保管の罪(通称ウイルス罪)に問われたウェブデザイナーの男性の上告審判決が1月20日、最高裁第一小法廷(山口厚裁判長)であった。
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山口裁判長は罰金10万円の支払いを命じた2審・東京高裁判決を破棄し、無罪と判断した。裁判官5人全員一致の意見。
第一小法廷はマイニングによりPCの機能や情報処理に与える影響は、「サイト閲覧中に閲覧者のCPUを一定程度使用するに止まり、その仕様の程度も、閲覧者がその変化に気付くほどのものではなかった」と指摘。
ウェブサイトの運営者が閲覧を通じて利益を得る仕組みは「ウェブサイトによる情報の流通にとって重要」とし、「広告表示と比較しても影響に有意な差異は認められず、社会的に許容し得る範囲内」と述べ、「プログラムコードの反意図性は認められるが不正性は認められないため、不正指令電磁的記録とは認められない」と結論づけた。
原判決について、「不正指令電磁的記録の解釈を誤り、その該当性を判断する際に考慮すべき事情を適切に考慮しなかったため、重大な事実誤認をしたものというべきであり、これらが判決に影響を及ぼすことは明らか」として、「破棄しなければ著しく正義に反する」と述べた。
1審横浜地裁は、反意図性を認めたが、不正性については「男性がサイトに設置したコインハイブが社会的に許容されていなかったと断定することはできない」と認定。コインハイブが不正な指令を与えるプログラムだと判断するには「合理的な疑いが残る」として無罪を言い渡した。
2審東京高裁は、1審と同じく反意図性を認めた上で、不正性についても「賛否が分かれていることは、コインハイブのプログラムコードの社会的許容性を基礎づける事情ではなく、むしろ否定する方向に働く事情」などと判断。故意や目的も認め、罰金10万円の逆転有罪とした。
判決文全文は最高裁HPに掲載されている。 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/869/090869_hanrei.pdf