2022年01月16日 08:41 弁護士ドットコム
霞ヶ関にある東京高等・地方・簡易裁判所合同庁舎。ここには事件の当事者だけでなく、日々、多くの傍聴人が集まる。ところが近年、そんな傍聴人たちが、ある“問題行為”に恐怖しているという。
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ひとりの傍聴人が証言する。
「裁判所内で、傍聴人たちの写真を勝手に撮影して、匿名掲示板にアップしている人がいます。名前も書き込まれている人が多いです」
傍聴人らを撮影し、その写真を掲示板にアップする行為は、少なくとも1年前から続いているという。別の傍聴人も、こう証言した。
「『ある被告人に似てる傍聴人がいた』というコメントと一緒に、特定の傍聴人の写真が投稿されているものもあります。それだけでなくiPhoneのAirDrop機能を使って、その傍聴人の使っているiPhoneを表示させてユーザー名を特定したような投稿もあります」
本人の許可なく盗撮した写真を匿名掲示板に投稿するという行為には、肖像権侵害だけでなく、また別の問題がある。
日本国内の裁判所は撮影が禁止されているのだ。建物の中はもちろん、敷地の中はすべて撮影禁止とされている。法廷内の撮影も当然厳しく禁じられている。
ところが投稿されている写真は、裁判所内で撮影されているのである。法廷前に並ぶ傍聴人や、裁判所内で休憩している傍聴人の写真など、いくつも投稿されている。さらに、あろうことか法廷内で撮影されているものまで確認できる。
傍聴人たちは「法廷前で開廷表を動画撮影したり、いつもスマホを構えている人がいるので、だいたい目星はついている」ともこぼす。
しかし「こういう記事が出ると、だれが話したのか、という“犯人探し”が始まる。自分がこの話をしたとわかると、また盗撮されるかもしれない」と、証言には一様に慎重な様子を見せた。そのため本記事の証言は全員が匿名となった。
「盗撮されるから行きたくないと裁判所に来なくなる人や、東京地裁を避けるようになった傍聴人もいます」(傍聴人)
過去には、民事裁判の開廷表の内容を、当事者名も含めて匿名掲示板に書き込んでいた者もおり、一部の傍聴人による問題行為は繰り返されている。
一部の不届き者により、傍聴の機会が失われる事態になっているのだとしたら残念というほかない。この迷惑行為の目的が不明である点も、傍聴人たちに不気味さと怒りを感じさせているようだ。
東京地裁は取材に「東京地裁の敷地内では、撮影は禁止されております。来庁者のみなさまにルールを守ってご利用いただけるよう引き続き努力していきたい」と回答した。