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【漫画】クリスマスに本当に欲しかったものは……切なすぎる創作漫画『プレゼント』がTwitterで話題に

2022年01月12日 07:11  リアルサウンド

リアルサウンド

宮間諒『プレゼント』

 昨今、Twitterを始めとするSNSに投稿され、話題を呼ぶ漫画作品が増えている。ネットならではのフットワークの軽さで、適切なタイミングで投稿できることから、季節感のあるテーマの作品も多く、その好例と言えるのが、昨年のクリスマスイブに投稿された「プレゼント」だ。


(参考:切ないクリスマスの物語『プレゼント』を読む


 本作を手掛けたのは、漫画家のアシスタントとして活動し、雑誌に読み切りが掲載された実績も持つ宮間 諒さん。ある事情からクリスマスが嫌いな主人公の少年と、執事と思われる“じいや”の軽妙な掛け合いに頬が緩むシーンもあるが、読後には切ない思いが残る質の高い作品で、読者からも多くの反響が寄せられている。


 プロ、あるいはそれに準じた実力を持つクリエイターの作品が、SNSで気軽に読めるのは漫画好きにとってありがたいことだ。宮間さん自身は、本作のアイデアを思いついたとき、「雑誌に掲載される読み切りとしては向いていない」と判断し、趣味に近い形で制作したという。「仕事」という感覚を離れ、シンプルに表現したいことを読者に届ける場として、SNSが活用されているようだ。


 宮間さんはどんな思いを込めて、「プレゼント」を描き上げたのか。そもそも漫画を描くようになったきっかけから、SNS向けに制作した経緯、今後の目標まで、じっくり話を聞いた。


漫画を読む習慣がなかった幼少期


――宮間さんは普段どのように制作活動を行っていますか?


宮間 諒(以下、宮間):普段は漫画家さんのアシスタントをしています。また、雑誌でたまに読み切りなどを載せていただいているのですが、今回「趣味で漫画を描いてみるのもいいな」と思い、Twitterでも投稿しました。


――宮間さんが漫画を描き始めたキッカケを教えてください。


宮間:一番最初に描いたのは、小学校の頃友達がクラス内で漫画雑誌を作っていて、それに私も参加した時だったと思います。ただ本当に見様見真似でしたし、当時はお小遣いがなく漫画を読む習慣がなかったため、完結できませんでしたが……。


――本格的に描くようになったタイミングは?


宮間:中学に入ってからファンタジー系の漫画作品にハマり、なんとなく「漫画を仕事にできたら」と思うようになり、ちゃんとまとまった話を描いたのは高校1年生の時でした。ただ、これまではちゃんと完成させたことはなく、「これはまずいな」と思ってとりあえず描き終えることを目標にしていました。その後、高校卒業間際になって違う作品を描き、漫画賞にチャレンジしてみようと思って投稿したら、たまたま今の編集者さんに拾っていただいた感じです。


「雑誌には向かない作品」


――「プレゼント」を制作しようと思った経緯はなんですか?


宮間:まず漫画のアイデアを考えている時、「雑誌に掲載される読み切りとしては向いていないな」と思う話を考えつくことがたまにあります。「プレゼント」もその一つでした。


――「雑誌には向いていない」と判断する基準とは?


宮間:キャラクターが立っておらず、先の展開を予想させる要素もないので、「連載を目指すために描く読み切りとしては合わない」と考えました。ただ、伝えたいことを入れ込めたお話だったので、誰にも読んでもらえないのは寂しいですし、「友達やTwitterで知り合った方などに楽しんでいただけたら嬉しい」と思ってTwitterに載せてみようと思いました。


――制作するうえでの苦労などありましたか?


宮間:Twitter用の漫画を描いたことがなかったので「どうすればSNSで読みやすい漫画になるのか?」を考えることでした。いつも原稿を描く時はトーンで処理していたのですが、雑誌と違って“モノクロ2値”でなくても良いです。しかも「趣味で描くのだから疲れるのは嫌だな」と試行錯誤した結果、水彩風に落ち着きました。


――短いページ数ながらも喜怒哀楽がつまった作品に感じましたが、喜怒哀楽はどのようなバランスを意識しましたか?


宮間:最初から切ない話にしようと思っていて、お話の展開も大体決まっていました。ただ、あんまり暗いシーンばかりになってしまうと面白くなくメリハリもなくなるため、コミカルなキャラを出して前半は軽い気持ちで読めるように構成しました。割と切ないシーンを思いつくことの方が多いので、楽しいシーンは意識的に入れ込んでいます。


――クリスマスの雰囲気を感じられる背景でしたが、背景のこだわりを教えてください。


宮間:もともと光の描き方が綺麗な絵を見るのが好きなので、背景を描く時は明かりが綺麗に見えるように明度構成を意識しました。一度は“クリスマスマーケット”に行って、電飾がどのようなキラキラしているのか実際に見てみたいなと思っています。


人の心を動かせたのは幸せ


――Twitter上には多くの感想が寄せられていましたが、印象に残っている声などありますか?


宮間:「泣いた」と言ってくださる方々がいらっしゃってとても嬉しかったです。個人的には切ない話で泣くとスッキリできるので、読んでくださった方もちょっとスッキリしてくだされば良いなと思っていました。また、自分が描いた話で人の心が動いたなら、こんなに幸せなことはないなと思います。


――今後はどのように活動していく予定でしょうか?


宮間:目標は変わらず漫画を仕事にすることなので、“商品”として人に出して、「良いな」「楽しかった」と言ってもらえる作品を作れるよう努力していきたいです。一方で“商品”にはならないかもしれないけれど、自分が好きなお話を趣味で描くのも悪くないと今回思うことができました。今後も時間がある時に、趣味の漫画を描いていけたらと思います。


(望月悠木)