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意外と知らない「クルマ」の豆知識 第25回 布製タイヤチェーンって頼りになる?

2022年01月11日 11:31  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
タイヤチェーンにもいろいろと種類があるようですが、布製の製品はどの程度、頼りになるものなのでしょうか? 軽くてかさばらず、持ち運びには便利な布製タイヤチェーンですが、耐久性や効果のほどについては少し、心配な部分もあります。モータージャーナリストの内田俊一さんに聞きました。


○金属製と布製、どちらを選べばいい?



タイヤチェーンとは雪道や泥濘路を走行する際、タイヤの外径に装着する滑り止めだ。駆動輪に装着することが基本で、FF(前輪駆動)であれば前輪、FR(後輪駆動)であれば後輪に取り付ける。



スノーフレークマーク(雪だるまのマークなど)が入ったスタッドレスタイヤを装着していれば、基本的には雪で規制のかかった高速道路を通行することが可能だが、最近は豪雪などもあり、タイヤチェーンなしでは走行不可という厳しい規制がかかることもある。



タイヤチェーンの素材には、いろいろある。



一般的なスチール(金属製)のチェーンは、雪や凍結路ではスタッドレスタイヤなどと比較して確かに有効なのだが、付け外しが大変であったり、走行中に大きな振動が生じたりといったネガな要素もある。装着したまま雪のない道路を走ると、通常のタイヤよりも接地面積が少ないのでグリップが弱まるし、路面を削ってしまうというデメリットもある。また、メーカーの説明によれば、スチール製タイヤチェーンの装着中は30km/h程度で走行してほしいとのことだ。

では、布製チェーンはどうなのか。まず、布製の多くはタイヤカバーのように覆うだけなので、取り付けは至って簡単だ。独自の力でしっかりとタイヤに圧着するので、ずれる心配もない。チェーン規制がかかった区間も通行できる。



ただ、デメリットもいくつか挙げることができる。まずは耐久性だが、路面のエッジなどで切れやすい傾向にあるようだ。



また、布製は多くが海外で設計されているため、日本の過酷な雪上の条件では、スチール製チェーンに比べグリップ力は弱い傾向にある。日本には冬になると気温が0度前後を上下する地域が結構ある。そうした地域では、雪が凍結と溶解を繰り返し、路面がツルツルになって、滑りやすくなる。「ブラックバーン」や「ミラーバーン」と呼ばれる状態だ。こうした状況ではグリップに多少の不安が生じる。



気温が少し上がると水分を多く含んだ重い雪が降り積もる。こうした雪だと布チェーンが目詰まりを起こしてしまい、グリップ力が低下することもある。



このように、タイヤチェーンには素材によってメリットとデメリットがあるが、どれを選ぶかについては、どれだけ雪道を走るかがポイントになると思う。それほど走らないとすればスタッドレスタイヤ(これは基本)と布チェーン。かなり走るという方はスチール製がいいだろう。



とにかく基本は、急のつく運転を避けること。雪の季節は普段にも増して安全運転を心掛けたい。



内田俊一 うちだしゅんいち 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験をいかしてデザイン、マーケティングなどの視点を含めた新車記事を執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員、日本クラシックカークラブ(CCCJ)会員。 この著者の記事一覧はこちら(内田俊一)