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『カムカム』安子とるいのラブストーリーがシンクロ? “夏祭り”で繋がった母と子の物語

2022年01月11日 06:01  リアルサウンド

リアルサウンド

『カムカムエヴリバディ』(写真提供=NHK)

「なんでじゃろう……自分でもようわからんのんです……」


【写真】安子(上白石萌音)と稔(松村北斗)の初デート


 『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)で、お世話になっている竹村夫妻にジャズ喫茶「Night and Day」のサマーフェスティバルになぜ行くのか聞かれたるい(深津絵里)は、ぼんやりとした表情でそう答えた。「俺も出るんだよ」と誘ってくれたジョー(オダギリジョー)の姿を思い出しながらはにかむるいに、竹村夫妻も何か勘づいたものがあるようだ。そのサマーフェスティバルに備えて、おでかけ用のサマードレスを買いに行った和子(濱田マリ)とるい。ふたりが一緒に選んだのは、ピンクのシャーベットカラー。水色のようないわゆる夏色ではないが、その色は、るいによく似合っていて、あまり感情が表情に出ないるいの代わりに、ジョーへの気持ちを表しているようにも見えた。


 一方のジョーはというと、いつも飄々としていて、るいのことをどう思っているのかいまいちよく分からない。だが、サマーフェスティバルに来ていたるいの姿をみつけると、「来てくれて良かった」とホッとした表情を見せる。るいのことを「サッチモちゃん」と呼んでからかっているジョーだが、彼女のことを好意的に思っているよう。どうやら好きな子にはちょっと意地悪をしたい派みたいだ。そう、サマーフェスティバルはるいとジョーにとって、甘酸っぱい“初デート”の場所なのだ。


 思えば、るいの両親、安子(上白石萌音)と稔(松村北斗)の初デートも夏祭りだった。安子の親友・きぬ(小野花梨)のアシストはあったものの、誘ったのは稔から。この頃は、安子が稔のことを密かに想い始めており、稔もまんざらではなかった。屋台で買った食べ物を一緒に楽しんだり、射的で遊んだりするふたりの姿は、初々しくて眩しかったのを覚えている。そしてふたりはこの夏祭りデートをきっかけに急速に距離を縮めていくこととなる。るいとジョーの“初デート”も、偶然にもサマーフェスティバルで、誘ったのはジョーから。はっきりと伝えはしないが、お互いに好意を抱いている……。比較してみると似ているところがたくさんあって思わず、ニヤリとしてしまう。


 「夏祭り」をキーワードとして、不意に繋がった母と子の物語。るいは小さい頃に安子と離れてしまったので、もちろん母と父の初デートの話など聞いたことはないだろうが、私たちは知っている。ふと、るいに向かって「るいちゃんのお母さんも、お父さんと出会った時はこうでね……」と近所のおばちゃんのように語りたい気持ちになってしまう。


 『カムカムエヴリバディ』は3世代親子を描くのが大きな特徴だが、視聴者は、母のことを知っているからこそ気が付ける、母と娘の共通点を見つけられる。ドラマの隠されたおもしろさのひとつかもしれない。


(久保田ひかる)