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中村倫也&柄本佑、2021年を代表するエンターテイナーに? “年男”である2人の共通点とは

2022年01月07日 06:01  リアルサウンド

リアルサウンド

中村倫也『ハケンアニメ!』(c)2022 映画「ハケンアニメ!」製作委員会

 「エンターテイナー」と聞いた際、誰を思い浮かべるだろうか。日本のこれまでの“シーン”を振り返ってみれば、誰の心の中にも、“その時代を背負うエンターテイナー”がいるのではないかと思う。世代的に筆者の場合は完全に後追いではあるが、『男はつらいよ』シリーズの看板である渥美清こそまさに稀代のエンターテイナー。今年の干支は「寅」であり、「寅さんイヤー」として、彼が同シリーズで演じた「寅さん」がフィーチャーされることも期待してしまう……そう、今年は「寅年」なのだ。そこで、現代トップの「エンターテイナー」であり、“今年の顔”となりそうな「年男」について考えた際、二人の男の名を挙げずにはいられない。中村倫也と柄本佑である。なぜこの二人なのか、その理由を記していきたい。


【写真】2021年出演作での中村倫也と柄本佑一覧カット


 2021年も相変わらずのペースで仕事を重ね、エンタメ界における存在感を十分に示した中村倫也。2020年には、彼の代表作だといえる主演映画『水曜日が消えた』と『人数の町』の公開があったほか、プライム帯での連続ドラマで主演を務めたこともあり、いわゆる「主演俳優」のイメージが強くあった。そのため、2021年の中村の活動に物足りなさを感じてしまった方もいるかもしれない。とはいえ、『ファーストラヴ』では物語のカギを握る主要な役どころを担っていたし、『騙し絵の牙』やドラマ『コントが始まる』(日本テレビ系)では限られた出番の中で、彼に与えられた役割をまっとうしていたと思う。限られた出番で最良の演技を残すことができるのは、それ相応の経験値があってこそ。もちろん、主演ドラマ『珈琲いかがでしょう』(テレビ東京系)で演じた“静と動”の二面性を持つキャラクターは、中村の得意とするものであっただろう。


 それに昨年の中村は、劇団☆新感線の『狐晴明九尾狩』で主演を張っていたことが非常に大きいでのはないだろうか。コロナ禍によっていまだ不安定な日々が続いているが、同作の上演時期は特にそう。しかも前年には主演舞台『ケンジトシ』が延期になってしまっている。コンスタントに舞台への出演を続けているとはいえ、この環境下で演劇のフィールドでの闘いを選び(恐らく、かなり早い段階から出演は決まっていたと思うが)、座長として作品を成功に導いた経験は、今後の活動に強く反映されてくるのではないだろうか。


 この2022年は、バカリズムが脚本を担当した映画『ウェディング・ハイ』でメインの登場人物の一人を演じており、アニメの制作現場の様子を描いた『ハケンアニメ!』では、『水曜日が消えた』の吉野耕平監督と再タッグを組んでいる。さらに、第一報が出て以降、多方面から注目を集めている配信作品『仮面ライダーBLACK SUN』では主人公の一人、秋月信彦/仮面ライダーSHADOWMOONとして世に姿を現す。現在の中村の活躍ぶりに加え、日本が世界に誇るヒーローを演じ上げれば、まさに“この時代を背負うエンターテイナー”の一人となるだろう。


 他方、柄本佑はというと、2021年の活躍ぶりが今年へ、さらに来年へと続いていくことが完全に決まっているようである。昨年の活躍ぶりからざっくり触れてみると、『天国と地獄~サイコな2人~』(TBS系)では殺人事件の容疑者と刑事の“入れ替わり劇”という奇妙な物語において、展開を左右させる可能性を持つキーマンを好演。主演の綾瀬はるかや高橋一生に並び、柄本の演じた“りっくん”を応援していた方も多いことだろう。映画では、兵庫県尼崎市の在宅医・長尾和宏氏の姿を追ったドキュメンタリー『けったいな町医者』のナレーションを担当、長尾氏の著作を原作とした『痛くない死に方』では主演として“町医者”を演じ、“在宅医療のリアル”、ひいては“生と死”の問題の切実さを世に訴えることに貢献した。この二作とは打って変わって浮気夫に扮した『先生、私の隣に座っていただけませんか?』でも主演。自分の不貞が原因でありながら、妻の行動に対して恐怖と嫉妬に駆られていくさまをコミカルに演じ、その翻弄されっぷりは、観ているこちらまでお腹が痛くなるものであった。


 だが、今年の柄本はさらにすごい。まずこの1月には、海外アニメの吹き替えを担当した『シチリアを征服したクマ王国の物語』が封切られ、永瀬廉、池田エライザとの共演作『真夜中乙女戦争』、藤沢周平原作の時代劇『殺すな』が週を替えるごとに立て続けに公開。また同時に、間もなく放送開始の新ドラマ『ドクターホワイト』(カンテレ・フジテレビ系)でも重要な役どころに配されており、主演の浜辺美波を支える活躍に期待大だ。映画館にお茶の間にと、柄本を見かけない日がなくなりそうである。さらに春以降も、『ハケンアニメ!』や荻上直子監督の新作『川っぺりムコリッタ』、声優として参加した湯浅政明監督による劇場アニメーション『犬王』と、話題作の公開が続くのだ。


 すでにお気づきのことと思うが、中村と柄本は『ハケンアニメ!』で共演するのである。これが商業監督作品2作目となる気鋭のクリエイターによる作品であることに加え、同じ年(寅年)の生まれである若き名優二人がメインキャストとして共演することに期待しないわけがない。さて、彼ら二人の共通点は他にもある。中村は今年、柄本は来年、「仮面ライダー」に扮するという点だ。後者は2023年公開予定の『シン・仮面ライダー』にて一文字隼人/仮面ライダー第2号を演じるのである。キャリアを積んできた同い年の若き名優が、「仮面ライダー生誕50周年」を記念した2作でそれぞれ「仮面ライダー」に挑戦するというのは何とも奇遇であり、面白い。そしてこの二人は、歌も歌える俳優である。中村は「ホール・ニュー・ワールド」を、柄本は「勇者のババババン」を、幅広い世代に向けて歌唱した。“歌える”というのは、「エンターテイナー」としての一つの証でもある。この点にも注目だ。


 むろん、「寅年」で芸達者な者たちは他にもまだまだいる。バイプレーヤーとして引っ張りだこの前野朋哉や、ミュージカルシーンで多くの功績を残す山崎育三郎に小池徹平、ましてや亀梨和也などは完全に「エンターテイナー」だと呼べる存在である。今年の年男たちはどのようにして私たちに魅せてくれるだろうか。


(折田侑駿)