個別指導塾を経営・運営し、1500人の生徒をサポートした、プロ家庭教師の妻鹿潤です。
今回は、子どもに「過剰な期待」をかけてしまったご両親のお話をしようと思います。私が大勢に関わって感じたのは、お父さんやお母さんが「極めて優秀」な場合が、特に起こってしまいがちだということです。
その期待値、子どもの限界値を超えてるのでは?
シンプルな話で、両親が優秀だと「これぐらいはできる」という基準値が無意識に高くなります。そのため、普通に接していると、気づいたら子どもの限界を超えてしまっていた、という悲劇が起こりがちなのです。
たとえば習い事やクラブ活動、勉強などでキャパオーバーになった子どもたちは、だんだんと生活・勉強にほころびが出てきます。そこを「勉強ができていない」「テストの結果が悪い」などと両親から指摘を受けると、どんどん逃げ場がなくなっていきます。
こうなると、子どもは「結果を出せないと、愛してもらえない」と感じてしまい、「結果が出せるかどうか」「何か怒られるようなことをしていないか」と、恐怖に怯え、ビクビクしてしまいがちになります。
仮に子どもが優秀で、常に結果が出せればいいかもしれませんが、そうそううまくは行きません。不調時に怒られたりすると、子どもは大きく落ち込みます。
怯えたり、落ち込んだりする状態が続くと、子どもは自分の身を守るために「感覚を遮断」しがちです。恐怖心で心が崩壊しないように「何も考えない」「何も感じない」ようにするのです。
何も考えない、何も感じないでは、成績が伸びるはずもありません。友達付き合いもうまくいかず、学校で浮いてしまうことも多いです。
こういう状態になった段階で、親が諦めたり、優秀な「兄弟姉妹」に目が行ってそちらばかりをかわいがったりすると、事態はより悪化します。
「見捨てられた」「あ、私はその程度の力しかなかったんだ」「ここまでしてもらって結果が出せない私は、本当にダメな子どもなんだ」と思いこんだ子どもたちは、だんだん本当に能力が伸びなくなっていきます。
子どもに期待することは大切ですし、愛情が強ければ自然に期待は強くなると思います。しかし、親が自分の考えや基準値にいつの間にか固執してしまって、それで子どもを押しつぶしてはこれ以上の悲劇はありません。
かわいいあまり、どうしても自分の分身と見てしまいがちなわが子ですが、よくよく考えると自分自身とはまったく違う、一人の人間です。我が子の状態や性質をきっちり観察して、その個性に合わせた「適切な期待」をしていくことで、子どものポテンシャルが開花するように思います。
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近影
【筆者プロフィール】】株式会社STORY CAREER取締役 妻鹿潤(めがじゅん)
関西学院大学法学部卒。塾コンサルタント・キャリアコンサルタント・プロ家庭教師などを通してのべ1500人以上の小中高生、保護者へ指導・学習アドバイスを行う。
大手教育会社時代は携わった教室が10か月で100人以上の生徒が入会する塾に。しかし志望校合格がゴールの既存教育に限界を感じ、「社会で生き抜く力」を身につける学習塾を起業。40~50点の大幅な点数アップを実現し、生徒のやる気を引き出すメソッドを確立。入塾待ちの塾となる。
現在はキャリアコンサルタントとして企業の採用支援、大学生・社会人のキャリア支援を行う。ほかにも塾コンサルティング、プロ家庭教師、不登校・発達障害の生徒の個別指導なども行っている。