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トランプ「大富豪」のNo.1決めたい! 多すぎるローカルルール、選ばれた5つは?

2022年01月02日 09:51  弁護士ドットコム

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年末年始などに集まってトランプをする際、定番のゲームの1つとなっている「大富豪」。子どもから大人まで広く遊ばれているが、多種多様な「ローカルルール」があり、いざプレイしようという際に事前にルールを確認するなど思わぬ手間がかかることもある。


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そんな大富豪に「公式ルール」を定めて普及させることに挑戦している団体がある。「日本大富豪連盟」だ。2011年11月に任意団体としてスタートし、今後の普及活動を見据えて2020年8月には一般社団法人となった。



同団体で代表理事をつとめる立入勝義さんは、「No1プレイヤーを決めるような大会があれば大富豪の普及に繋がるのではと考えましたが、統一のルールがないと大会も開けないし一番も決められない」と話し、公式ルールの制定に着手したという。



ローカルルールが大富豪をより面白くしている側面もあり、「どのルールを採用するか相当悩んだ」(立入さん)。ヒアリングなどもおこない、「革命」「8切り」「都落ち」「スートしばり」「スペ3返し」を5大公式ルールとしたが、「Jバック(イレブンバック)」を採用していないことには「まだ悩むこともある」と話す。



ルール制定の経緯や連盟としての今後の活動などについて、立入さんに話を聞いた。(編集部・若柳拓志)



●ルールが統一されていなければ始まらない

大富豪は、プレイヤーにカードを平等に配り、順番にカードを出していって手持ちのカードを先に出し切った者が勝つゲームだ。カードの強さは弱い順に「3~13(K)、1(A)、2」と決まっており、直近で出されたカードよりも強いカードしか出すことができない。



強いカードを持っていない場合や敢えて出さずに進めたい場合などはパスすることができ、また1枚ずつではなく複数枚を一気に出すこともできるなど戦略的な要素もある。



同じメンバーで繰り返しプレイすることが想定されているのも大富豪の特徴だ。一番早く手持ちのカードを出し切ったプレイヤーが「大富豪」として扱われ、以降出し切った順に富豪、平民、貧民、大貧民と階級がつけられる。



初回以降のゲームでは、カード配布後プレイ開始前に、大貧民は大富豪に、貧民は富豪に手持ちの中で最も強いカードを渡し(大貧民は2枚、貧民は1枚であることが多い)、大富豪と富豪はそれぞれ強いカードを渡した相手に好きなカードを同枚数渡すルールとなっている。



これら基本ルールに、ゲームがより戦略的なものとなるようにと加えられるのが「ローカルルール」だ。「革命」「8切り」などおおよそ誰もが採用しているであろうメジャーなルールから、立入さんでも聞いたことがないというようなマイナーなルールまで多種多様に存在する。



「大富豪の団体を立ち上げて、大会などを開催できれば面白いよねという話を仲間内で話したのが事の発端でした。



大富豪の(ローカル)ルールはたくさんあってバラバラ。ルールが統一されてなければ、大会をやろうにもやれないし、そこに合わせた事前戦略も練りようがありません。



そこでまずはルールを団体の公式として統一しようとなりました。公式ルールが広まれば、ローカルルールの確認なども省いて、『公式ルールでやろう』と簡単にはじめられ、普及にもつながるのではという考えもありました」(立入さん)



●将棋と麻雀の間くらいのバランスを目指した「5大公式ルール」



日本大富豪連盟は、ヒアリングなども実施し、数多くのローカルルールのうち、「革命」「8切り」「都落ち」「スートしばり」「スペ3返し」に絞り、「5大公式ルール」とした。



ルールが多くなると、初心者にとって覚えるのが手間となり、また配られる手持ちのカードに勝敗が左右されやすくなるという「運」の要素が強まる。



立入さんは「将棋と麻雀の間くらいのバランス」にしたかったと話す。



「私は将棋が趣味で大好きなのですが、将棋のような完全に理詰めのゲームでは、素人が本当に強い人にも挑んでもまず勝てませんし、一般にとっつきにくい難しいイメージがあると思います。麻雀は運の要素があるぶん大富豪に近いところはありますが、役の種類が豊富で、意外と複雑です」



トランプカードで手軽に遊べて、実力だけでなく運の要素もほどほど絡まって、初心者でも上級者に勝てる可能性が十分にある——。そんなポジションを目指し、普及と競技化の両方を見据えたルール作りを心がけた。



●一番悩んだのは「Jバックをどうするか」



比較的シンプルなものを「5大公式ルール」として採用する一方、競技用としては「4人でプレイ」「12ゲームを1マッチとして争い、4ゲームごとに階級をリセット」「1・5・9ゲーム開始前にランダムの2枚を抜き、ジョーカー2枚を入れる」などの進行ルールも取り入れた。



抜かれた2枚のカードがわからないため、それを特定するという戦略性が増すという面白味が出る。ランダムであるがゆえ運の要素が強まるが、「配られる枚数(1人13枚)を均等にして競技としての公平性をなるべく保ちたかった」という。



ルール作りで最後まで悩んだのが「Jバック(イレブンバック)」の扱いだ。「5大公式ルール」では採用しなかったが、一般の認知度は高い部類のローカルルールだ。



「Jバックについては、今もルールとして採用べきかどうかをまだ悩むことがあるほどです。大会などでヒアリングした際にも毎回考えるところです」



Jバックとは、J(11)を出すと、その場が流れるまで、カードの強さが「革命」が起きた時と同じ状態になる。革命は、同じ数字のカードを4枚以上出すと、ジョーカー以外のカードの強さが逆になるというルールだ。革命の場合、もう一度革命が起こるまで、カードの強さはずっと逆のままだ。



「大富豪で革命は簡単にはできないものですが、Jバックはそれを一時的にせよ簡単にできてしまいます。ルールとして採用すれば、運の要素が強くなりすぎる懸念があったというのがありました。なかなかできない革命を達成できたことの意味や、ゲーム上の意義をもう少し強めたかったというのもあります。



麻雀でいうところの『赤牌(赤ドラ)』のようなもので、採用すればよりダイナミックでスリリングな展開になりやすいですが、一方で本来のドラや革命の価値が弱まる側面もあります」



どのルールを採用するかは、どんな競技にしたいかというゲーム設計によるところが大きいようだ。日本大富豪連盟のルールでは、同様の理由で、「階段革命」も「8を含んだ階段での8切り」も不採用となっている。



「ジョーカーが含まれているので、階段革命までできるとなると、大富豪のプレイヤーが革命を連発するという状況にもなり得ます。競技としては、やはり大富豪や富豪がちょっと有利すぎるかなという印象ですね。



ゲームとしてバランスをとることの難しさは感じますが、連盟として5大公式ルールを作って10年が経っています。これまで一度もルールを変えずやってきましたので、Jバック含めルールに関する議論はいまだにありますが、簡単に変えようとは考えていません」



●「競技としても楽しんでもらいたい」



日本大富豪連盟では、これまで計5回「天下一大富豪大会」を主催。大富豪を老若男女が平等にプレイできるゲームにしようと、競技として盛り上げるべくチャレンジしてきた。コロナ禍で2019年10月の第5回を最後に開催できていないが、立入さんは「できれば2022年秋頃にはまた開催したい」と意気込む。



2021年11月には、連盟公式ルールに準拠したアプリも登場。これまでの活動が1つの形となった。



「eスポーツのように盛り上がっていければいいなと思い描いてます。



大富豪はトランプさえあればできる手軽なゲーム。私たちは『全国4000万人』と言っていますが、それほど基本的なルールは多くの人がすでに知っているメジャーなゲームです。運の要素はありますが、頭脳スポーツとしてもっと多くの方に競技としても楽しんでもらいたいですね。



年末年始は連盟ホームページのアクセス数も急増します。年末年始に集まった人でプレイする人が多いのだろうと実感しますね」



目下の課題は、連盟として活動するための資金繰り。スポンサーがついた大会でも、役員の持ち出しが発生するなど手弁当で踏ん張っている状況だという。



​​「競技として盛り上げるためには、賞金などもやはり設定すべきだと思いますが、そのためには当然お金が必要になります。スポンサーの獲得も容易ではありません。



多くの人に競技としての大富豪についても知ってもらうことが重要です。将来的にはプロ制度を設けるのも面白いかなと思いますね」