2022年01月02日 09:11 弁護士ドットコム
最近は少なくなったとはいえ、現代でも結婚に際して結納金を交わすカップルもいます。ある男性が「離婚が決まり、相手の実家から結納金を返せと言われている」と弁護士ドットコムに相談を寄せました。
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相談者は、相手女性の姓を名乗り、義父母を同居しての結婚をすることになりました。しかし仕事は相手の実家から離れた場所だっため「当面は週末婚だろうね~」と合意。 結婚の際、相談者には200万円ほど借金があったため、「結納金200万円を返済に充てる」ことも決まりました。
ところが、出張やコロナ禍などが重なり、週末にもいけない日が続いてしまったようです。そのため、妻と妻の家族から「同居を前提にお金を出したから返せ」「結婚詐欺だ」と問い詰められ、困惑しています。
相談者は結納金を返還しなくてはいけないのでしょうか? 山本明生弁護士に聞きました。
ーー離婚に際して、結納金を返還しなければいけないのでしょうか
結納は、婚約の成立を確証し、併せて、婚姻が成立した場合に当事者ないし当事者両家間の情誼を厚くする目的で授受される一種の贈与であるとされています。
ですので、一旦婚姻が成立した場合には、その後婚姻関係が解消されたとしても、原則として結納金の返還を求めることは出来ません。
もっとも、夫婦生活の期間が短く、事実上の夫婦協同体が成立していないといえるような場合には、結納の返還義務が認められるとする考え方もあります。
ーー今回のケースでは、どのように考えられますか
本件では、婚姻期間中の夫婦の実態について明らかではありませんが、元々予定していた程度の行き来が出来なくなったということに止まるのであれば、必ずしも夫婦共同体が成立していないということにはならないと思われます。
また、婚姻期間が3年未満というのも、夫婦生活の期間について短いとはいえないでしょう。ちなみに、最高裁は夫婦としての実態が8か月続いていた後に離婚した場合の結納金の返還請求権を否定しています。
したがって、本件では、結納金の返還は不要である思われます。
ーー相談者は同居していませんでしたが、離婚において慰謝料の支払い理由にはなるのでしょうか
夫婦間においては同居義務があり、その義務違反は離婚理由である「悪意の遺棄」に該当する可能性があります。
もっとも、同居しないことに正当な理由がある場合には、同居義務違反とはいえません。
本件では、婚姻当初から当事者が遠方に住んでおり、いわゆる週末婚を前提に婚姻していたこと、その後、交通費や出張、コロナ禍で行き来が出来なくなったこと等からすれば、当事者間において同居しない(できない)ことを互いに認めていたといえ、同居しないことに正当な理由があると考えられます。
したがって、本件において同居しなかったことは離婚理由には該当せず、それ故、違法行為もないことから慰謝料支払いも不要であると思われます。
【取材協力弁護士】
山本 明生(やまもと・あきお)弁護士
大阪弁護士会所属。交通事故被害(死亡事故、重度後遺障害案件を含む)、相続、離婚など個人をとりまく身近なトラブルを多く扱っている。「話しやすく、分かりやすい弁護士であるべき」との信念に基づき日々活動している。
事務所名:山本明生法律事務所