2年ぶりの開催になった「コミックマーケット99」が2日間の日程を終え、無事に閉幕した。今回、コミックマーケットはこれまでにない方法での開催を余儀なくされた。検温、ワクチン接種証明などの確認が必須になっただけでなく、入場がチケット制(抽選)に。
前回は4日間で75万人もの入場者があったが、今回の来場者数は2日で11万人に絞られた。
「来る者拒まず」の精神のもと、カタログなどを購入しなくても、誰でも入場できたコミケ。今回の「入場制限」はコロナ禍で開催を実施するための、苦渋の決断だった。そんなことで会場内には独特の緊張感も漂ってはいたのだが、これが内部は想像以上に「快適」でもあった。(文:昼間たかし)
これが夢にみた理想的なコミケか?
写真:昼間たかし
わかりやすく目を引いたのはチケット制の導入の結果として、「徹夜組がいなくなった」ことや、「始発ダッシュが消えた」こと。
だが、これ以上に参加者が体感したのは、会場内の快適さだったのではないか。従来、大混雑していた東京ビッグサイトのホール。ひとたび参加者の「波」に飲まれてしまうと、思い通りに方向転換をするのですら一苦労だった。
ところが、今回は人数制限が実施されたことによって、ヒヤリとするような混雑はまったく見かけられなかった。一部の大手サークルで行列はあったものの、参加者同士が肉の壁となっている間をすり抜けていかなければ、移動できないような場面は見かけなかった。
今回はさまざまな理由から、常連サークル参加者の中にも出展を見合わす人がいたようだ。また、ホール内では欠席による空きスペースも従来より目立っていた。体調が優れない場合など、大事を取って欠席した人も多かったのだろう。
前回まで、参加者の中には、あまりの混雑を見かねて「一般参加が自分だけなら動きやすいのに」といった軽口を叩く人もいた。今回は皮肉にも、それに近いような形が実現したといえるだろう。
最大手サークル・トイレが混まない
ちなみに、もっとも快適さを感じたのはトイレに行った時である。コミックマーケットではいつも、トイレに長大な列ができていた。女性向けトイレは長大な列になってしまうために、一部の男子トイレを女性用にする運用も行われていた。その男子トイレも長時間列に並ぶことは必然であった。
とりわけ大のほうはスマホの画面を眺めたりして気を紛らわせながら、必死の形相で並んでいるしかなかった。過去には、ついに間に合わなかったのか「漏らしていた人がいた」という目撃談がネットで話題になったこともある。
そんな行列が、今回はほぼ発生していなかったのだ。従来、いちばん男子トイレが混雑するのは開場後、しばらくしてから。長時間列に並んでいた参加者が、絶対に確保したい同人誌を確保したあとに並ぶのである。ところが、その時間ですら、筆者がトイレに向かったときには、個室が開いている状態だった。こんな天国みたいなコミケは、今回が最後かもしれない。
同様に混雑が見られたなかったのが喫煙スペースだ。喫煙スペースも従来は喫煙者が狭いスペースで肩をぶつけ合いながら煙草を吸って、もうもうと煙が立ちこめるところ。愛煙家でも「あの光景を見て禁煙をしようと思った」というほどである。そんな喫煙スペースも今回は他人の副流煙に晒されることのない快適な環境になっていた。
参加者からは「有料化によってマナーやモラルが遵守されるようになった」という声もあるが、そこには困惑の声もある。既に還暦近い参加者からは、こんな意見が。
「コロナ禍で今回は特別なのだと思いますが、そこには一抹の寂しさも感じますね。早くもとのコミックマーケットが戻ってくることを期待しています」
そう、コミケは開催されるごとに「初めての参加者」を、この世界に引きずり込んできた。
今回は、初々しい人たちの姿はなく「コミケ参加のプロ」のためのイベントであったことは否めない。やはり、コロナウイルスの一刻も早い収束が待ち遠しい。と記している。