2021年12月29日 09:01 おたくま経済新聞
昨年と比較し全国的に新型コロナウイルス感染状況が落ち着きを見せつつある中、今年こそ年末年始帰省をする、と考えている方も多いはず。一方、小さな子ども連れで帰省する際に祖父母と子育てに対する価値観が異なるため、少し億劫に感じている、ということはありませんか?
共働き、核家族化などの要因により、この30年で子育てを取り巻く環境も大きく変わりました。現役の子育て世代と子育ての先輩とでは価値観が異なって当然。だからこそ双方で共有しておきたい「子育ての昔と今」の違いを「教えて!ドクター」プロジェクトチームがスライドを使いわかりやすく紹介しています。
「教えて!ドクター」は長野県の佐久総合病院小児科が中心となってが運営しているプロジェクト。子どもの病気、ホームケア、子育て支援など、子育てに関する情報発信をホームページ、無料アプリ、ツイッターにて行っています。
ツイッターで共有したのは全3つからなるファイル。「子育ての先輩と現役の皆さんへお互いが知っておくべきこと」「病気、発熱、食物アレルギーの今昔」「育児方法、栄養の今昔」というテーマ毎に子育ての昔と今を比較し、具体例と共に解説しています。
具体例紹介の前に、まずはリードとして書かれているのが「今と昔では子育てを取り巻く環境が大きく変わっていますよ」ということ。
子育ての先輩である祖父母たちは絶対的な経験を持っていますが、よかれと思ってやったことが実は誤っていたり、時に相手に負担を与えてしまうこともあるでしょう。こうしたトラブルを防ぐために、常に知識をアップデートしておく必要がありますし、なによりも相手の「子育てに対する方針」をしっかり聞いておくこと、「必要以上に手や口を出さない」ことが重要です。子どもを見たり、預かったりする際はこうした点をすり合わせておきましょう。
一方、現役の子育て世代の方ももちろん、祖父母を取り巻く環境も変わっている、という事を知っておく必要があります。考え方や価値観の違いを頭ごなしに否定することが無用な緊張を生む原因となります。今はこんな感じだよ、とマイルドに伝え、手助けをしてもらうことに感謝の気持ちを持ちましょう。
大前提として双方がこのように「今と昔の環境の違い」を理解しておくことが、何よりも大切な事です。
続くスライドでは「病気、発熱、食物アレルギーの今昔」というタイトルで、各項目で今と昔の病院での指導の違いが具体例を挙げて書かれています。
一見するだけでも、昔と今では対応方法がまるっきり違うことが分かります。中には180度真逆のことも。
例えば発熱時の対応。昔は「とにかく布団にくるまり汗をたくさんかくと熱が下がる」と言われたものですが、現在の病院の指導方法ではNG。熱がこもりやすく脱水になりやすい為、むしろ薄着して涼しく快適にする、という対応方法が正となります。
その他にも「けいれん時は舌をかまないように口の中にモノを入れる→嘔吐物がブロックされて窒息の原因になる為、口の中には何も入れてはいけない」「食物アレルギーになりやすい食べ物を与えるのは遅い方が良い→アレルギーの発症を心配して離乳食開始を遅らせる必要はない」など、定説とされていたことが医学の発達により変わっていることが良く分かります。
最後のスライドでは、「育児方法、栄養の今昔」をご紹介。特に育児方法については言伝のように受け継がれていることがあり、医学的に根拠のない方法であったこともしばしば。
「抱っこは抱き癖が付くからしすぎないほうが良い」「おむつ外しは2歳までに完了」「3歳までは保育園に入れずに母親が子育てに専念して見るべき」といったような育児論は現在も時折耳にしますが……これらも根拠がないもの。さも常識のように言われ伝えられてきただけなのです。
栄養についても同様ですが特に「離乳食は手作りであるべき。だしを取るところから気を付けなくてはいけない」という慣例はその典型。現在の市販のベビーフードは粘度や粒の大きさも調整され、もちろん栄養もばっちり。むしろ積極的に活用するべきとも言われます。
「取るべきなのはダシよりも睡眠」とありますが、これは名言だと思います。
祖父母にわかってもらえなくてイライラする……で終わらせるのではなく、相互で理解しておきたい「子育ての昔と今」。
「10年ひと昔」という言葉がありますが、特に情報の取得方法が増え、伝達スピードが向上した現代では、1年前の情報ですらもう古いことである可能性も。なので、昔と今の子育てが異なるのはむしろ当たり前のことなのです。
今回ご紹介したスライド版だけでなく、印刷しやすいPDFファイル(https://oshiete-dr.net/pdf/20211202_sofubo.pdf)やスマホでも見やすい縦長版も同時に公開されています。年末年始に帰省を計画している方は、ぜひ今回ご紹介した「教えて!ドクター」プロジェクトチームのファイルを使って、子育てについて話し合う機会を設けてみてはいかがでしょうか。
<記事化協力>
教えてドクター佐久さん(@oshietedoctor)
(山口弘剛)