トップへ

「新感覚のハイブリッド化粧品に」化粧品業界参入を目指す久光製薬のマイクロニードル技術とは?

2021年12月28日 11:02  マイナビニュース

マイナビニュース

画像提供:マイナビニュース
久光製薬が今年9月、「5カ年中期経営方針」を発表。2025年に向け、貼付剤の研究・生産技術などの強みを活かしながら貼付剤以外の商品・サービスも展開する方針を示した。



そのうちのひとつが、久光製薬が長年研究を続けている、「マイクロニードル技術」を活用した化粧品などの製品化だ。久光製薬は来年1月に東京ビッグサイトで開催される「化粧品開発展」にもOEM、ODM企業としての参加を決定している。



では実際に、マイクロニードル技術をどのように化粧品へと応用するのか、久光製薬の上席執行役員 MN(マイクロニードル)事業化推進室 室長である秋山勝彦氏と、同部署の徳本誠治課長に話を聞いた。


○今注目の技術「マイクロニードル技術」とは



そもそもマイクロニードル技術とは何か。徳本氏は次のように説明する。



「長さ数百マイクロメートルの微小突起物をアレイ状に配列させた基板で、イメージとしては剣山を小さくしたような形状になります。皮膚に当てることで角質層を貫通させますが、針が短いので神経や血管までは届かず、痛みも出血もありません。従来、注射剤で使用されているような薬剤でも、マイクロニードルを使えばもっと簡便に投与できます」


もともと医療業界などでは1970年代からマイクロニードルという発想自体はあったそうだが、製造・加工技術が追いついてきたのは1990年代以降のこと。久光製薬を始め、いろんな企業が研究を続けているが、医療分野ではまだ実用化されていない。


一方で、化粧品メーカーなどは2010年頃から美容ケアアイテムなどにマイクロニードル技術の活用を開始。久光製薬も独自のマイクロニードル技術を武器に、化粧品メーカーとのパートナーリングを模索・交渉している最中だという。



では、久光製薬のマイクロニードル技術は、他社と比べてどのような特徴があるのだろう。秋山氏に聞くと「久光製薬のマイクロニードル基板は、生分解性の樹脂できている」ことがポイントだという。



「もし万が一、針が折れて身体に入ってしまっても、久光製薬のマイクロニードルは体内で溶けて消失するので、安全な設計になっています。世の中にはいろんなマイクロニードル技術がありますが、例えばチタン素材を使っているものなどは、もし体内で針が折れたら身体に悪影響を与える可能性もあります。その点、我々は生体適合性にこだわったものづくりを進めているので、安心してお使いいただけます」

○久光製薬が化粧品業界へ参入を目指す理由



久光製薬が化粧品業界への参入を決めたのはなぜか。秋山氏によると、久光製薬が掲げる「手当ての文化を世界へ」というスローガンが関わっているようだ。

「久光製薬は『手当ての文化を世界へ』を掲げていますが、その意図は『医薬品の枠を超えて、お客様のニーズに応えていこう』というところにあります。元々マイクロニードルは医療の分野に向けて開発しましたが、医薬品だと製品化に時間がかかりすぎてしまう。そこで、『何か他にも使い道があるんじゃないか』と考えたときに、化粧品なら我々のノウハウが活かせそうだと気付いたんです」


そのノウハウはふたつある。ひとつはマイクロニードル技術であり、もうひとつは久光製薬の「モーラスパップ」などで使われているジェルパッチ技術だ。



ジェルパッチ技術とは、ジェル状の膏体に多量の水分を含めながら、付着性に優れた貼付剤を生み出す技術のこと。多量の水分のおかげで、皮膚への刺激や剥離時の痛みを減らすことができる。



「このジェルパッチ技術とマイクロニードル技術を使って何か化粧品を作れないか、と考えたんです。ジェルパッチには液体が入れられるので、薬を入れれば薬になるし、美容成分を入れれば美容液になる。これに化粧品用に改良したマイクロニードル技術をハイブリッドすれば、美容成分を角質まで届けられます」と秋山氏。


すでにマイクロニードル技術とジェルパッチ技術を組み合わせた目元用パッチも試作している。写真の白い部分がジェルパッチのパップ部分、黄色い部分がマイクロニードルだという。



「現在は、B to Bのスキームでビジネス展開できないかと考え、すでに商談も始めています。我々のデバイスを使って化粧品やワクチン、経口錠剤を皮膚から投与したいと考えている企業があれば、協業してそのニーズに応えていきたいですね」

○「まったく新感覚のハイブリッド化粧品になる」と自信



久光製薬のマイクロニードル技術とジェルパッチ技術は化粧品との相性もいい、と徳本氏は言う。



「美容成分を効率的にデリバリーできるのはもちろん、マイクロニードルという微小な突起物を皮膚に当てることで、心地いい刺激感を皮膚に与えられます。ジェルパッチも非常に皮膚に優しい技術なので化粧品に向いていますし、さまざまな美容成分を組み合わせることで、従来より多くの美容効果が期待できると考えています」


現在、マイクロニードル技術とジェルパッチ技術を組み合わせた化粧品は市場に存在していないようで、秋山氏も「まったく新感覚のハイブリッド化粧品になります。この技術を1日でも早く使ってもらいたいと思います」と意気込む。



「久光製薬ではこれまでも化粧品の展開をしているものの、他社に比べればまだまだ足りません。化粧品ビジネスも育てていきつつ、今は少しでも早く、多くのお客様に使ってもらい、弊社製品のよさを実感していただきたいですね」



久光製薬は、来年1月12日から14日にかけて開催される日本最大級の化粧品展示会「化粧品開発展」に出展し、14日にはマイクロニードルとジェルパッチのハイブリッド技術などについて、研究所のマネージャーによるセミナーも実施する。「医薬品の枠を超えて、お客様のニーズに応える」という思いを持った久光製薬のマイクロニードル技術を活かした化粧品は、近い未来、身近な製品になるかもしれない。(MN ワーク&ライフ編集部)