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DISH//をタフにした強く信じる気持ち OKAMOTO’Sも登場、10周年ライブをレポート

2021年12月25日 18:01  リアルサウンド

リアルサウンド

DISH//

「僕たちは10年間失敗しまくってきました。でも振り返ってみたらそれは失敗じゃなくて、成功の連続だった。失敗なんて存在しない。俺たちが証明だ!」


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 今年12月25日に結成10周年を迎えるDISH//のパシフィコ横浜公演3デイズ、2日目。バンドサウンドの中で北村匠海(Vo/Gt)がそう叫んだ。悩んだり迷ったりすることがあっても、がむしゃらに、前へ進み続けることだけはやめなかった。たとえ躓いたとしても、数年後の自分がその経験すらも糧にすることで、何一つ、無駄ではなかったと言える10年にした。失敗が失敗たり得るのも、成功が成功たり得るのも、最終的には未来の自分次第。諦めなかった日々の積み重ね、自分たち自身を強く信じる気持ちがDISH//というバンドをタフにさせたのだろう。


 そんなことがまっすぐに伝わってくるライブだった。オープニングを飾ったのは10年間を振り返る映像。クロスする照明が‟Ⅹ”(ローマ数字の10)を描くなか、光の集まるところで北村が人差し指を掲げ、「No.1」から演奏をスタートさせた。そこに続くは「ルーザー」、「Shout it out」といったメンバー自ら手掛けた楽曲。自分たちの鳴らす音で、自分たちの書いた曲を届けるということ。北村曰く「ギターが弾けなさすぎて弦を嚙みちぎったことがある」レベルの楽器初心者だった結成当初からすると想像がつかなかったような――しかしあの頃から確かに望んでいた光景が4人の目の前には広がっていた。早速訪れた10年での成長を象徴する場面に思わず胸が熱くなる。


 アニバーサリーライブだけにこの日は様々な時期の楽曲を披露。4曲目「皿に走れ!!!!」は1stアルバム収録曲ながら、DISH//の楽曲タイトルが歌詞に多数盛り込まれているため、期せずしてアニバーサリー感が演出される。チルな音像の2ndアルバム収録曲「Loop.」ではしっとりと歌い上げた一方、橘柊生(DJ/Key)が鼓を持ち出した初期曲「ピーターパンシンドローム」ではあの頃の青さに飛び込むように大いにはしゃぎ、遊び心を忘れないバンドの性格を強調。楽器を弾きながら踊る“ダンスロックバンド”としてのパフォーマンスを見せたのは「HIGH-VOLTAGE DANCER」、「NOT FLUNKY」だが、うち「NOT FLUNKY」においてサポートメンバーをも巻き込みながら自由に振舞っていた矢部昌暉(Cho/Gt)もまた、DISH//のエンターテインメント性を象徴する存在なのかもしれない。そんななか、MCでは北村が、「みなさんの前でライブができて幸せ」と噛み締め、「ありのまんまが愛しい君へ」に繋げた。ちゃんと出会えた今だからこそ伝えたい言葉、“あなた”の幸せを願うバンドの想いが詰まった一曲だ。


 10代の頃の自分たちの写真を見ながらその初々しさに笑い合うなど、微笑ましい場面もあったライブ後半では、新しい試みが2つあった。一つは、ダブルカルテット編成のストリングスとの共演。「喜びも悔しさも、毎年毎年いろいろ感じて生きてきました。きっと応援してくれているみなさんも僕らと一心同体だと思うので、同じ気持ちで寄り添ってくれていると思います。そんななかで絶対に忘れちゃいけない曲……しばらく歌っていなかったんだけど歌わせてください」(北村)と紹介された「Starting Over」でストリングス部隊が姿を現し、計3曲がこの編成で演奏された。ある意味アニバーサリーらしい演出ではあるが、バンドの地力が備わった今だからこそできたトライでもある。特に、ステージ中央で大所帯をまとめる泉大智(Dr)のプレイは頼もしく、新たな翼を得たバンドサウンドに駆り立てられるように、ビリビリとしたエネルギーを纏った北村の歌も素晴らしかった。ちなみに「Starting Over」が“絶対に忘れちゃいけない曲”と紹介されたのは、この4人になってから初めてリリースしたシングルの表題曲であり、新たな一歩を踏み出すDISH//の背中を押してくれた大切な曲だからで、冒頭に引用した言葉を北村が叫んだのは「DAWN」の最中でのこと。DISH//の歴史を語るうえで欠かせない名バラード「猫」をリッチなアレンジで聴けたのも嬉しかった。


 もう一つの新しい試みは初期曲のリバイバル。ここでは、インディーズデビュー曲の「It’s alright」とメジャーデビュー曲の「I Can Hear」が演奏された。リリース当時は自分たちの手で演奏できなかった楽曲を、泥臭いバンドサウンドで以って鳴らしていく。「It’s alright」冒頭の矢部&北村によるギターリフも、泉のビートに乗せて橘がスクラッチする「I Can Hear」内でのソリパートも、ひたすらに痛快であった。なお、翌日・18日公演の終了後、DISH//は、過去楽曲のリテイク版を配信リリースする「再青」プロジェクトを発表。「I Can Hear」は同プロジェクトの第1弾楽曲で、年明け1月1日より配信開始されるという。


 本編ラストでは、オープニング映像で使われていた音声が5年前のライブMCだということを明かしたうえで、当時から想いは変わらないと語り、「‟DISH//のやっているエンターテインメントはスゲーぞ!”と言い続けた5年間でした」と振り返った。自分たちならではのやり方を模索していった日々が、年末に控えた『第72回NHK紅白歌合戦』出場をはじめとした‟みんなが喜ぶ出来事”に結実しているのかと思うと非常に喜ばしい。また、そうしてここまでの10年に想いを馳せながらも、次の10年について、「ただ楽しく笑って音楽やって‟気づけば俺も34だよ”みたいな、そんな10年後を迎えられればと思います」(北村)と語っていたのが印象的だった。


 受験生のテーマソングとして広まりつつある「沈丁花」が、飾らない感謝を伝える歌として観客へ届けられたところで本編終了。そしてアンコール。1日目にははっとり(マカロニえんぴつ)、3日目にはあいみょんがサプライズで出演したそうだが、この日はOKAMOTO’Sの4人が登場。彼らがDISH//に提供した「僕たちがやりました」を総勢8名で演奏した。2017年に行われたツーマン以来4年半ぶりの共演である。北村とオカモトショウ(Vo)のツインボーカルに、矢部とオカモトコウキ(Gt)のツインギターなど見どころ盛りだくさんだが、DJをやるかと思いきやステージのいたる所で終始スティックを振り続けたオカモトレイジ(Dr)がハマ・オカモト(Ba)に「あなたは何のパートの人なの?(笑)」とツッコまれるオチつき。「ロックバンド、DISH//と一緒にやれて嬉しいです」(ショウ)という感想とともにOKAMOTO’Sの面々が去ってからもDISH//一同は気分が高揚している様子で、残る2曲もフルテンションで鳴らしたのだった。


 「明日のことを考えずに全てを出し切ってしまった!」(橘)、「そうだね」(泉)、「今日が最高だったら最高だぜ! イェーイ!」(矢部)と笑い合いつつ、「あるよね、DISH//のライブ特有の温かさ」(橘)、「こういう時間を毎日過ごしたいものですね」(北村)と確かめ合った4人。情熱に駆られ、‟過去最高”の更新を目指すロックバンドとしての前のめりさ、ファンとの関係性がもたらす温かさを胸に、DISH//の10周年イヤーが始まっていく。(蜂須賀ちなみ)