パチンコ業界では、ユーザーとメーカーと店舗、そのいずれもがこの20年じわじわと減っている。
不景気でユーザーが離れれば、それまでなんとか経営が成り立っていたホールもやっていけなくなる。ホールが減ればメーカーは自社が開発した台の売上も下がる。なのでメーカーは機種の価格を上げる、機歴制導入などを考案していく。
そうするとホールは機種を購入するコストに押しつぶされ、満足にユーザーに還元できなくなる。そしてユーザーは地獄のような調整をされた台でお金を使い果たし、1人、また1人ひっそりと消えていき、業界を下支えする力も失っていく。
これがここ最近のパチンコを取り巻くサイクルになっている。さらに今回、また1人優秀な養分ユーザーが卒業を予告している様子に偶然立ち会うことができた。(文:松本ミゾレ)
「さすがに今回はガチだぞ。会員カードゴミ箱に入れたわ」
先日、5ちゃんねるに「突然ですが、本日でパチンコとスロットを引退することになりました」というスレッドが立っていた。スレ主は「今までありがとうございました」と本文で書き込んでいるが、いちいち引退宣言するパチンコユーザーって実際見たことはないので、きっと彼のその思いは一時的なものだろう。
本当にやめようと思ったら引退宣言なんかせずにやめられるものだし、そもそも依存状態になっちゃうと自分の意思とかあんまり関係ないわけで。引退宣言するほどボコボコに負けておいて「引退します」って言われても、説得力がないのである。
とは言え、せっかくの決意表明をしているスレ主の、その言い分もちょっと読み取ってあげねば可哀想ではある。スレ主は、
「打たんわ。時間の無駄すぎる」
「さすがに今回はガチだぞ。会員カードゴミ箱に入れたわ」
と、こんな具合に典型的な負け惜しみワードを使っておられる。
本当に引退しちゃう人って、たとえば今年のコロナ禍の間に自主的にホールを避けるうちに「なんかもういいや」ってなっちゃった人ぐらいのものだ。そういう人は今年結構多かったに違いない。自粛期間中に新しい趣味に目覚めて、そっちに没頭したという人も、僕の身の回りに数人いるし。
さらにスレ主の可愛らしいところは「さすがに今回はガチだぞ」と書いちゃってるところ。前にも引退宣言してたんかい、といったところで、そういう人の卒業宣言なんて、『ガキの使いやあらへんで!』の山ちゃん卒業企画ぐらいの信頼度しかないのだ。
「パチンコをしない」とことさらに宣言してるうちは、まだまだ未練が強い
僕は2003年からパチンコをしてきて、今まで別にやめたいと思ったことが、残念ながらない。元来自堕落な人間なので、そういう趣味に没頭してしまっているのだ。
しかし、それでも2006年、2008年、2009年だけは一切パチンコをしていない。これは別にそう強く意識したわけではなく、単純にプライベートが恋愛やら何やらで忙しかったり、最愛の祖父が死んだことで気が抜けたような日々が続いたため。パチンコをするような気持ちになれないことがあったものだから、結果的にそんな余裕がなかっただけの話である。
人間、「パチンコをしない」とことさらに宣言してるうちは、まだまだ未練が強いのだ。しかし、「もう二度とやらない」と豪語しておいて、せいぜい1週間ぐらいでちゃっかり台の前に座っていたりする人。愚かではあるんだけども、一方で人間の可愛い部分でもある。
今回紹介したスレッドには、スレ主以外にも「さすがにもうついていけへんわ」とか書いている人なんかもいるが、そういう人がわざわざ5ちゃんねるのパチンコ関連のスレッドに書き込みをしている時点でお察し。
僕などは「ああ、最新機種の評価とか、設定判別のポイントとか気になって検索しちゃって、その流れでこのスレ見てるんだろうな」とプロファイリングしてしまうわけである。実際そういう人だらけだろうし。
断言するけど、このスレッドを立てた人なんて、十中八九またホールに戻ってくるよ。会員カードなんてなくても遊べるわけだし、何より彼は僕と同じくパチンコ依存症なのだから。