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デカい! 高級! ハイテク満載! キャデラックのSUV「エスカレード」に試乗

2021年12月17日 11:31  マイナビニュース

マイナビニュース

画像提供:マイナビニュース
さっきからずっと、道が狭い。よく通る道なのに……いやクルマが大きいのか。モデルチェンジしたばかりのキャデラック「エスカレード」に乗った。


○重さはプリウス2台分?



エスカレードはGM(ゼネラル・モーターズ)のプレミアムブランド「キャデラック」の最上級SUVだ。キャデラックといえば、アメリカにおける高級車の代名詞。昔も今も成功者が乗るクルマの筆頭だ。だが、老舗のプレミアムブランドは例外なく顧客とともに歳を取り、ある段階で若いユーザーの獲得が困難になる。



そこでキャデラックが打ち出したのは、SUVジャンルへの参入。1999年に初代エスカレードを発売した。その少し前にライバルの「リンカーン」(フォードのプレミアムブランド)が「ナビゲーター」というプレミアムSUVを発売してヒットさせていたので、その対策としてもSUVジャンルへの参入は必須だった。



エスカレードはまず、ヒップホップアーティストをはじめとする若くして成功した人たちに好まれてヒットし、キャデラックユーザーの若返りに大きく貢献した。



エスカレードはモデルチェンジの度に大型化してきた。今回試乗した5代目は全長5,400mm、全幅2,065mm、全高1,930mmと過去最高に大きい。前後の車輪の距離を示すホイールベースは3,060mmもある。


全幅2,065mmがどれくらいかというと、例えばワイドボディの2トントラック(三菱ふそう「キャンター」など)よりも幅広いのだ。トヨタ自動車「プリウス」の全幅が1,760mmだから、プリウスの左右両側のドアを15cmずつ開けたまま走行しているようなものともいえる。先代も十分に大きかったが、モデルチェンジで全長が187mm、ホイールベースが121mm長くなった。


日本で正規販売されている乗用車としては最大級で、このサイズとなると、ほかにはロールスロイス「カリナン」(全長5,340mm、全幅2,000mm、全高1,835mm、ホイールベース3,295mm)くらいしかない。ちなみに、発売されたばかりのトヨタ「ランドクルーザー300」も全長4,985mm、全幅1,980mm、全高1,925mm、ホイールベース2,850mmと国産車としては最大級だが、エスカレードを前にするとかわいいものだ。


エスカレードは大きいだけでなく、重い。車両重量は2,740kgで、1,370kgのプリウスのちょうど2倍だ。サイズに加え、フレームシャシーの上にボディを載せる伝統的な構造を採用していることも、重さに拍車をかけている。


○実はテクノロジーが満載!



試乗を開始してすぐには、冒頭に述べたように道が狭くなったと感じるほど車体の大きさを意識させられたものの、ある程度の距離を走行して大きさに慣れてくると、次第に乗り心地の良さを感じ始めた。乗り心地の面で不利とされるフレームシャシー構造だが、ハイテクによって不利な部分を補い、快適性を確保している。



ハイテクの筆頭は「マグネティックライドコントロール」だ。これはダンパーオイルに磁性をもたせ、電磁石によって瞬時に減衰力を変えられる仕組みで、GMが特許を持っている。道路の凹凸を検知すると即座にソフトな設定となるほか、カーブを検知すると外側のみハードな設定になるなど、状況に応じて設定が変わる。リアを独立懸架サスペンションとし、4輪にエアサスを採用していることも快適性の高さに貢献している。



つまり、エスカレードは伝統的な構造の車体に、あらん限りの最新のハイテクを詰め込み、根性で快適に仕上げたクルマなのだ。


ハイテクは乗り心地確保のためのみならず、ユーザーインターフェイスにも用いられた。ドライバー眼前のディスプレイがとにかくデカいのだ。対角線の長さが38インチ超の大型ディスプレイエリアが備わる。現在生産されている車載用ディスプレイとしては最大だ。ディスプレイはOLED(有機EL)なので、高精度でとにかく美しい。高輝度でもあるため、表示部分を日差しから隠すカウルもない。しかも湾曲している。前後二重に重ねたようなデザインもユニークだ。


フレームシャシーとハイテクを駆使した足まわりの組み合わせと同様に、インテリアもハイテク満点のディスプレイと昔ながらのウッドパネルが同居している。革新と伝統の組み合わせだ。



エンジンもしかり。小排気量のターボエンジンが全盛の2021年にあって、6.2リッターV8 OHVの自然吸気エンジンを搭載し、最高出力426PS/5,600rpm、最大トルク623Nm/4,100rpmと立派なスペックを誇る。その一方で、低負荷時には4気筒になる気筒休止システムや、10速もの多段電子制御ATを採用するなど、効率を上げる努力も忘れていない。この10速ATの出来がよく、スムーズで変速ショックもほとんど感じられない。



エスカレードには試乗した「プラチナム」(テスト車は1,490万円だったが、12月7日の価格改定で1,555万円となった)と、顔がより厳つい「スポーツ」(1,595万円)の2グレードがある。いずれにしても、伝統の構造やメカニズムと、最新のOLEDディスプレイや電子制御化された足まわりなど革新の技術が融合した、プレミアム温故知新SUVに仕上がっていた。


塩見智 しおみさとし 1972年岡山県生まれ。1995年に山陽新聞社入社後、2000年には『ベストカー』編集部へ。2004年に二玄社『NAVI』編集部員となり、2009年には同誌編集長に就任。2011年からはフリーの編集者/ライターとしてWebや自動車専門誌などに執筆している。 この著者の記事一覧はこちら(塩見智)