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意外と知らない「クルマ」の豆知識 第23回 水素のクルマも電動車? これから増えそうな「PHEV」と「FCV」を解説

2021年12月17日 11:02  マイナビニュース

マイナビニュース

画像提供:マイナビニュース
トヨタ自動車が4兆円を投じて電気自動車(EV)30車種をそろえると発表して話題となりましたが、クルマの電動化は今後、ますます加速していきそうな情勢です。電動車にはEVとハイブリッド車(HV)以外に「PHEV」と「FCV」があるとよく聞くのですが、これらはどんなクルマなのでしょうか? モータージャーナリストの内田俊一さんに聞きました。


○クルマはいろんな方法で電気を作る



前回はHVの種類についてお話をしたが、今回は、クルマの電動化が進展するにしたがって増えていきそうな2種類の電動車について見ていきたい。プラグインハイブリッド車(PHEV)と燃料電池自動車(FCV)だ。



PHVあるいはPHEVという言葉を聞いたことがあるだろう。これは「プラグインハイブリッドビークル」(Prug-in Hybrid Vehicle)の頭文字で、通常の「ハイブリッドビークル」(HV)に「プラグイン」が付いたものだ。簡単にいうと、外部電源から充電できるHVである。EVであれば外部からの充電は当然だが、それをHVでも可能にしたのがPHEVだ。



PHEVの最大のメリットは、搭載しているエンジンを使ってクルマ自体が発電できるうえ、さらに外部からも充電ができるという点だ。即ち、クルマが走行用バッテリーの電力を使い切った場合でも、外部から充電すればエンジンを稼働させなくて済むのである。最近のPHEVには、フル充電だと50km以上は電気のみで走れる車種が結構ある。これなら、日常の移動をほぼ電気だけで(ガソリンを使わずに)まかなうことも視野に入ってくる。国産PHEVとしてはトヨタ自動車の「プリウスPHEV」や三菱自動車工業の「アウトランダーPHEV」などがある。


もうひとつ、近年よく聞くようになったのがFCVだ。「Fuel Cell Vehicle」の略で「燃料電池自動車」を意味する。



FCVの動力は電気だ。クルマの中で水素と酸素を化学反応させて発電し、モーターを駆動させて走る仕組みとなっている。つまりエンジンを使用しないので、走行時のCO2排出量はゼロ。トヨタが販売している「ミライ」がこのクルマである。


FCVにはいくつかのデメリットがある。まず、車両価格が高い。もうひとつはインフラだ。2021年3月現在、FCVに水素を充填できる「水素ステーション」の数は、全国で計137カ所に過ぎない。水素ステーションの設置には通常のガソリンスタンド以上にコストがかかるため、設置数は伸び悩んでいるのが現状でもある。



余談だが、水素に関しては、トヨタが水素を燃料にしてエンジンを回すクルマでレースに参戦し、技術を磨いている。水素で発電するシステムが不要なので、この仕組みであれば車両のコストは押さえられるはず。将来的に、かなり注目すべき技術といえるだろう。



このように、電動車による電気の作り方にもさまざまな種類がある。仮に日本を走る全てのクルマがEVに置き換わったとすれば、5基や6基の原子力発電所を増設しても、電力供給は需要に追いつかないかもしれないし、不足分の電力を火力発電所で作るとすれば、結局のところCO2削減にはつながらない。そんな事情もあって、自動車各社は電気をどう作るのかという根本的な技術の研究・開発に力を入れているのである。



内田俊一 うちだしゅんいち 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験をいかしてデザイン、マーケティングなどの視点を含めた新車記事を執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員、日本クラシックカークラブ(CCCJ)会員。 この著者の記事一覧はこちら(内田俊一)