2021年12月16日 16:51 弁護士ドットコム
フジテレビなどで放送された恋愛リアリティー番組「テラスハウス」に出演したプロレスラーの木村花さんが、SNSで誹謗中傷を受け2020年5月に亡くなったことをめぐり、母響子さんがフジテレビと制作会社に損害賠償を求めて提訴する方針を明らかにした。提訴は2022年を予定している。
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響子さんは12月16日、都内で会見を開き、「出演者を人間扱いしていないというのが花の残した言葉なんですけど、その言葉の重みをすごく感じている。出演者の人権が守られていたというのであれば、裁判で明らかにしていただきたい」と訴えた。
弁護団は8月16日、訴訟に先立ち、証拠の隠蔽や改ざんを防ぐ証拠保全の手続きを東京地裁に申し立てた。裁判所は10月と11月、フジテレビと制作会社E&W(東京都港区)それぞれに証拠保全の決定を下した。
12月10日にはE&Wに対し「TERRACE HOUSE TOKYO 2019-2020」の未編集動画(20~42話)や台本(スタジオ部分)、編集台本、スケジュール表、視聴者からの反応とその分析などの提示を命じたが、E&Wは即時抗告を申し立てる意向を示し、提示を拒絶した。
弁護団は証拠保全決定について「広範な内容の証拠が出ており異例だ」と評価。一方、番組制作側の対応を批判した。
弁護団の伊藤和子弁護士は「証拠保全手続きは医療過誤事件などでよく用いられるが、カルテなどの任意開示は一般的であり、医療機関が拒むことはない。証拠保全決定に従うのは当然と認識しているが、フジテレビも制作会社も一切証拠を提示しなかった。番組制作に関わる隠蔽を行う対応で、弁護団として強く抗議した」と話した。
訴訟では、リアリティー番組におけるテレビ局や制作会社の安全配慮義務違反などが争点となる見込みだ。
響子さんは「本当は裁判もBPOへの申し立てもやりたくなかった。最初からどういう理由で花が追い詰められてしまったかを、私たちに真摯に伝えてもらえていたならば、ここまでする必要がなかった」と真相究明を求めた。