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トヨタのハイブリッド車が増加中! カローラクロス、アクア、ライズの特徴は

2021年12月15日 11:01  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
電動化が加速する自動車業界の中で日本は遅れているとの見方もあるが、ハイブリッド車(HV)の性能において世界を断然リードしているのはトヨタ自動車だ。大小各セグメントごとにピッタリの性能を持つHVを用意しているのはご存知の通りだが、今回は同社の最新HVに連続で乗ることができたので、その走りっぷりを紹介しよう。


○欠点なしの「カローラクロス」



「カローラ」は1966年の東京モーターショーで登場して以来、55年の長きにわたって日本の、そしてトヨタ小型モデルの主役の座をキープし続けてきたクルマだ。そんなカローラに、初のSUVモデルが誕生した。「カローラクロス」だ。2020年にタイで販売が始まり、今年になって日本にも入ってきた。


使っているプラットフォームはカローラシリーズ共通の「GA-C」だが、ほかのカローラシリーズが日本専用のナローボディ(全幅1,745mm)であるのに対して、カローラクロスは幅がグローバルモデルのままで1,800mmを超えている。ちょっと大きめのボディは、このクルマの美点だと捉えたい。


試乗したのは四輪駆動「E-Four」の「S」グレード。搭載するエンジンは最高出力98PS/最大トルク142Nmの1.8リッター直4ガソリンエンジンで、モーターはフロントが72PS/163Nm、リアが7.2PS/55Nmとなっている。



ニッケル水素バッテリーを搭載するハイブリッドシステム「THSⅡ」の走りは、少し大きく重いボディに対して必要十分といったところ。遮音対策がしっかりなされていて、通常走行では静かさと滑らかさをしっかりと味わえる。


インテリアは視界良好な運転席、リクライニング機能付きで足元も広いリアシート、487Lという容量十分なラゲッジなど、ファミリーユースとしては申し分のない出来栄えだ。


試乗中、これといった欠点が見つからなかったカローラクロス。こんなに出来のいいSUVの価格が300万円を切る295.9万円だというから、「たまったもんじゃない」との声がライバルメーカーの販売店から聞こえてきそうだ。

○日本にピッタリ! 新型「アクア」



「アクア」はトヨタ製HVの中でも最もよく街で見かけるクルマの1台だ。そんなアクアが2021年7月にフルモデルチェンジして2代目となった。プラットフォームは「ヤリス」と同じコンパクトモデル用の「GA-B」。ヤリスとの違いも考えながら、新型アクアに試乗した。


試乗した「Z」グレードは、91PS(67kW)/120Nmの1.5L直列3気筒エンジンに80PS(59kW)/141Nmのモーターを組み合わせる。数値はヤリスと全く同じだ。燃費はアクアが33.6km/L(WLTCモード)であるのに対し、より軽量なヤリス(HVのGグレード)は35.8km/Lとなっている。

HVシステムには違いがある。ヤリスはバッテリーにリチウムイオン電池(4.3Ah)を使っているが、アクアは新開発の「バイポーラ(双極)型ニッケル水素電池」(5.0Ah)を世界で初めて採用している。


従来のニッケル水素に比べ、アクアのバッテリー出力は2倍になった。そのため、アクセルに対するクルマの反応がよくなり、EVモード(電気のみで走る走行モード)の最高速度がヤリスの約2倍となる40km/hまでアップしている。そのため、街中での走りでは、結構な範囲で静かなEV走行が楽しめた。



走行モードスイッチで「POWER+」を選ぶと、ワンペダルに近い「快感ペダル」走行ができるようになる。これは大きな進化だ。減速Gはそれほど強くないし、最終的にはブレーキペダルを踏まないとクルマは止まらないのだが、アクセルペダルだけの可減速走行に慣れてくると、本当に便利だと感じる。AC100V/1500Wのアクセサリーコンセントが全車で標準装備(ヤリスはオプション)となっているので、アウトドアや災害時にも頼れる存在だ。



前席優先で走りに特化したヨーロッパ志向のヤリスに対し、スペース効率などの総合力で日本での使用にぴたりと照準を合わせたのが新型アクアだといえるかもしれない。「Z」グレード(2WD)の価格は240万円となる。


○「ライズ」はHV追加で商品力向上



トヨタは最近、新たなハイブリッドシステムを獲得した。人気のコンパクトSUV「ライズ」に追加となった、「e-SMARTハイブリッド」と呼ばれるシリーズ式ハイブリッドだ。


ダイハツ工業「ロッキー」とトヨタのライズは、ダイハツが開発・製造を行う全長3,995mm、全幅1,695mm、全高1,620mmのコンパクトな5ナンバーサイズSUVだ。「e-SMARTハイブリッド」はダイハツが新開発したシリーズ式ハイブリッド。WA-VEX型1.2リッターガソリンエンジンで発電した電気を使い、106PS(76kW)/170Nmのモーターを回して走行する。バッテリーは容量4.3Ahのリチウムイオン。燃費は従来型を5割近く上回る28.0km/L(WLTCモード)に達している。


シャイニングホワイトパールのライズ「Z」グレード(FF)に乗り込んでみると、なんとなくコンソール周りがすっきりした印象。パーキングブレーキが電動式となり、無骨なサイドブレーキレバーがなくなったからだ。HVらしい差別化としては、フロントのトヨタマークや室内のマットにブルーが使われている。


市街地は、ステアリングコラム右下の「S-PDL」(スマートペダル)ボタンを押し、「ワンペダル走行」で走るのがオススメということで早速やってみたが、すぐに慣れるし、使い出すとこんなに便利なものはない。減速Gは乗員にショックを感じさせない程度の軽いものなので、人を乗せた際もあまり気にせず使えそうだ。一方、強めの加速時には、結構な頻度で発電のためにエンジンが始動し、3気筒の太めの音が室内に侵入してくる。レベルとしては日産自動車のシリーズ式HV「e-POWER」より少しノイジーかな、という印象だ。乗り心地や直進性、スペース効率は従来通り。レベルの高さに感心する。


開発を担当したダイハツの仲保俊弘チーフエンジニアによると、「30代の係長クラス50人以上をトヨタに送り込んで開発したのが、今回のシリーズ式ハイブリッドです」とのこと。さらに、「さまざまな領域をコントロールする数多くのコンピューターを統合制御する技術は、トヨタなしでは成し遂げられなかった」と正直に打ち明けてくれた。「良品廉価」を掲げるダイハツにとって、シリーズ式ハイブリッドは将来の軽自動車への導入に向けてのベースになる技術だろう。トヨタにとっても、ハイブリッドの選択肢がまたひとつ増えたことになる。ライズ「Z」の価格は232.8万円だ。



原アキラ はらあきら 1983年、某通信社写真部に入社。カメラマン、デスクを経験後、デジタル部門で自動車を担当。週1本、年間50本の試乗記を約5年間執筆。現在フリーで各メディアに記事を発表中。試乗会、発表会に関わらず、自ら写真を撮影することを信条とする。 この著者の記事一覧はこちら(原アキラ)