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安東弘樹のクルマ向上委員会! 第52回 本命不在? 日本カーオブザイヤー選考委員の安東弘樹、大いに迷う

2021年12月10日 11:02  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)選考委員の安東弘樹さんは、今年の1台に何を選ぶか大いに迷っている様子だ。候補車10台を次々に試乗するハードな最終選考会では、ことあるごとに「あー、どうしよう!」を連発。「乗ると幸せを感じられるか」が選考基準とのことだが、各車の評価は?



※文と写真はマイナビニュース編集部の藤田が担当しました。


○「ノート」と「コルベット」は比較可能?



2021-2022のCOTYは、2020年11月1日から2021年10月31日までの間に発表あるいは発売となった「ノミネート車」(29台)のうち、1次選考で勝ち残った「10ベストカー」の中から選ばれる。選考委員は持ち点25点をそれぞれの基準で配分するが、1台には必ず10点を入れなければならない。安東さんの今年の本命はホンダの新型「シビック」だったようだが、残念ながら「10ベストカー」には残らなかった。これが大いなる迷いの原因だ。11月24日の最終選考試乗会に同行したので、全てのクルマを次から次へと試し、悩みに悩む安東さんの様子をお伝えしたい。


※ここにシビックの写真を入れます(12/8に試乗を予定)。キャプションは「安東さんの本命だったのはホンダの新型「シビック」。動的質感にとにかく感動、静的質感もかなり高くて気に入ったとのこと」


○水素はまだ早い? トヨタ「ミライ」に試乗



安東さん(以下、安):基本は電気自動車(EV)ですね。音も電気だ。



マイナビニュース編集部(以下、編):フルモデルチェンジしたミライはレクサスと同じプラットフォームを使っているので、すごくよくなったと聞きます。



安:ただ、やっぱり水素充填が問題ですよね。うちの近所にも水素ステーションはないし、やっぱり乗るならEVかな。



パドルシフトは付いていないんですね。回生ブレーキの強さは変えられないのかな。乗った感じはちょっと、バタバタしますね。ただ、最初のミライ(先代モデル=初代)に比べれば格段の進化です。航続距離は問題なし。あと、シートベンチレーションが付いているのが嬉しいです。


安:ちょっと踏んで、加速してみますね。なるほど、スポーツモードにしていても、そこまで強烈な加速ではないんですね。



編:テスラみたいな感じではない?



安:ガーンとくる感じではないです。



編:EVの加速には、メーカーによっていろんな考えがありますね。



安:そういえば、テスラの「モデルS プレイド」、あれは面白いですね! いろんな動画が上がってますけど、ドラッグレースでマクラーレン「765LT」とかフェラーリ「SF90」が完膚なきまでに負けてますよ。0-100km/hならわかるんですけど、もっと長い距離(例えばクォーターマイル、約400m)で競った結果がこれですから、驚きます。スーパーカーは「フォン! フォン!」ってすごい音を立てているのに、テスラはシューって、一瞬で引き離していきますからね。テスラのオーナーさんが動画を上げているんですけど、「いろんなクルマを持っているけど、これに勝てるクルマは1台もない」っていってました。

○本命候補に急浮上! 日産「オーラ NISMO」に試乗



安:おお、速い! 内装の質感も高いし、これは頑張っているなと思いますね。今回は本当にわからないなー。現時点で(配点については)何も決まってません。



編:今日、試乗に来る前までは、どう考えてたんですか?



安:三菱のアウトランダーなのかなーって思ってたんですけどね。買うとしたら、リアにシートヒーターも付いていたし、コストパフォーマンスで考えるとアウトランダーかなって。



編:ノートもノート オーラも、私は結構好きなんですが、NISMOはどうでしょう?



安:すごくいいと思います。これも、メーターやセンターディスプレイの質感が本当に高いです。



編:表示がクリアですし、フォントもカッコ悪くないですよね。



安:そうなんですよ! ほかの国産車にも見習ってほしいところです。



編:輸入車のモニターを日本語にローカライズしてフォントがカッコ悪くなるんならわかるんですけど、日本製のメーターでフォントがカッコ悪いのは理解しがたいですもんね。



安:そうそう。ノートのメーターやディスプレイは、メルセデス(安東さんの愛車「E220d 4MATIC オールテレイン」)から乗り換えても遜色なしです。


安:回生ブレーキの具合もいいですね。日産お得意のワンペダルモードで運転していると、ほとんどペダルの踏み替えは必要ありません。どうしよう、このクルマもありだな……。アクセルペダルを離したときの減速が早いから、メリハリのある走りができます。ライントレースも気持ちいい(思った通りに曲がる)し。

○どう評価すれば…シボレー「コルベット」に試乗



安:これは、どう評価すればいいのかなー。確かに、ずっと乗っていたくなるし、楽しいんですけど……。



編:コルベットと日産ノートを同じ土俵で比べるのは、なかなか難しそうです。



安:難しすぎます。どっちがいいって、なかなかいえませんよね。その値段を払って買って、乗って、ユーザーが幸せを感じるかどうか、それが私の評価基準なんですけどね。


編:例えば1,000万円で買った幸福度100のクルマと、300万円で買った幸福度80のクルマがあった場合、どうなるんですか? どんなに高いクルマでも幸福度が100に近い方がいいのか、値段との兼ね合いで判断するのか……。



安:私の場合は幸福度ですね。そうやって判断するしかない。10ベストカーは値段も全然、違いますから。



編:その基準で、コルベットとノートを比べることってできるんですか?

安:うーん……。幸せっていろいろで、例えば「威張れる」ことに幸せを感じる人もいるじゃないですか。自分にはその感覚はないんですけど、うーん、どうかなー!



編:カッコいいクルマに乗っているだけで幸せってこともありますよね。その基準で行くと、今年だったら私はフォルクスワーゲンの「アルテオン シューティングブレーク」に投票したいですが。



安:私も10ベストカーを選ぶときには投票したんですが、残りませんでしたね。


○BMW「4シリーズ」に乗って悩みが深まる



編:Cクラスと4シリーズなら、どっちなんですか。



安:はぁ(溜息)。でも、こっち(4シリーズ クーペに試乗中)は完全に、スポーツに寄ってますからね。これはでも本当に、お金に余裕がある人が乗るっていう感じのクルマですね。ただ、やっぱり比べようがない。BMW「M4」とコルベットなら、比べられるかもしれませんけど。



編:では、幸せ度でいくと、輸入車勢で1位は!?



安:幸せ、か……(沈黙)。


○静かに軽く回る! 「Cクラス」のディーゼルに試乗



安:新型Cクラスではパワーシート(電動でリクライニングの角度などが調整できるシート)の調整が静電式(触っただけで操作できるタイプ)になりましたけど、スイッチ自体が動く従来の方式の方が私は好きですね。それと、相変わらずシートベンチレーションの設定がありません。本国にはあるらしいんですけどねー。



私が乗っているメルセデス(E220d 4MATIC オールテレイン)と同じ4発のディーゼルエンジンですけど、こちらはISGがついている分、燃費がいいはずです。トルクも、私のクルマは400Nmですが、Cクラスは440Nmにアップしてます。



編:乗り心地が少し硬いとも聞きますが。



安:それはちょっと、思いました。


安:では、サーキットも走ってみましょう。



回した感じが、とても静かですね。「コルベット」に乗った後だから、余計にそう思うのかもしれませんけど。このディーゼルは、軽く回っている感じです。



編:普段使いもスポーティーな走りも、両方できてしまう1台ですね。



安:そう思います。

○ハイスピードで本領発揮? VW「ゴルフ」はどうか



編:ゴルフがフルモデルチェンジしたわけですから、COTYの本命候補になってもおかしくないですよね?



安:うーん……。



ところで、ヘッドアップディスプレイ(HUD)って好きですか? 私はあまり見ないんですけど。



編:(悩み過ぎて現実逃避?)私は道をよく知らないので、簡易的な地図が出るタイプのHUDは好きですけどね。


安:よくできていて、間違いのないクルマなんですが、なんだろう。「スゲー!」っていう感じではないのかなー。



ちょっとサーキットに入ってみますね。お、速い!



編:スピードを出すと、印象がよくなりそうなクルマですね。



安:そうかもしれません。破綻なく、ビターッと曲がっていきますしね。

○本命候補? 三菱「アウトランダー」に試乗



編:ここに来るまではアウトランダーが本命だったと聞きましたが、前に試乗した際に好印象だったんですか?



安:そうなんです。ほぼ電気の走りで、しかも結構、曲がるんですよね、びっくりするくらい曲がる。おそらく「S-AWC」(スーパーオールホイールコントロール、三菱自動車独自の車両運動統合制御システム)がかなり効いているんでしょうね。クルマが賢く制御してくれているのがわかります。動的、静的質感も高いですし、今回、三菱さんは相当、魂を込めて頑張られたんでしょうね。



編:そういえば、このアウトランダーはプラグインハイブリッド車(PHEV)ですけど、今回は10ベストカーにEVが残っていないですね。このご時世に不思議です。



安:「2021 ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー」はフォルクスワーゲンのEV「ID.4」が取ってますよね。日本の特殊性が出ているのかもしれません。


こんな調子で安東さんは全ての候補車に試乗したのだが、聞き手の方が途中でへたばってしまい、ほかのクルマについてはほとんど話を聞くことができなかった。ちなみに、トヨタ「ランドクルーザー」とホンダ「N-ONE」(スズキのワゴンR スマイルとK CAR オブ・ザ・イヤーを争っている)については別稿でお伝えしてある。



最後まで配点が決まらず、迷っていた様子の安東さん。結局のところ、どの1台に最高得点の10点を付けるのだろうか。COTYの結果発表は2021年12月10日(金)で、18時からYouTube中継があるそうだ。



安東弘樹 あんどうひろき 1967年10月8日生まれ。神奈川県出身。2018年3月末にTBSを退社し、フリーアナウンサーとして活躍。これまでに40台以上を乗り継いだ“クルママニア”で、アナウンサーとして初めて日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員を務める。 この著者の記事一覧はこちら(安東弘樹)