新型コロナウイルス感染拡大により、テレワークは一気に浸透しました。感染状況が落ち着きをみせ、再び、職場に出社する人も増えてきています。
この先、コロナの終息後も、企業はテレワークを続けるべきでしょうか、それとも縮小、もしくは廃止すべきでしょうか。調査資料などを見ながら、これからのテレワークについて、解説していきます。(文:林 雅之)
テレワークの利用は効果的?
パーソルプロセス&テクノロジーは2021年11月4日、全国600名の経営者・役員、部長クラス以上のビジネスパーソンを対象に実施した「社内DX推進における効果に関する実態調査」の実施結果を発表しました。
DXとは、デジタルトランスフォーメーションの略で、組織の業務プロセスのデジタル化や、デジタル技術を活用したモデル変革などを指します。
83.7%の企業が「テレワークの促進」に取り組んでいると回答しています。
社内DX推進において取り組んでいることは何ですか?(n=600、複数回答) 出典:パーソルプロセス&テクノロジー 「社内DX推進における効果に関する実態調査」2021.11
テレワークの促進では、8割以上が効果を感じているという結果となっています。
テレワークの促進(n=502) 出典:パーソルプロセス&テクノロジー 「社内DX推進における効果に関する実態調査」2021.11
テレワークで効果を感じるのは通勤・移動コスト削減、業務効率・生産性の向上
では、なぜ、テレワークで効果を感じているのでしょうか。
テレワークで効果を感じているのは、「通勤・移動コストを削減できたから」と回答した人が81.3%と最も多く、「業務効率・生産性が上がっているから(45.2%)、「従業員の満足度が高いから(39.5%)と続いています。
筆者自身もこれまで、新幹線通勤を20年以上しており、往復4時間弱かかっていましたが、テレワークが中心となって、このメリットは強く感じています。
「テレワークの促進」について効果を感じている理由は何ですか? (n=423、複数回答)
出典:パーソルプロセス&テクノロジー「社内DX推進における効果に関する実態調査」2021.11
テレワークはメリットばかりではない
一方で、テレワークを疑問視する企業も少なくありません。管理職にとっては、部下の勤怠管理や評価、心身のケアが難しくなります。
また、気軽なコミュニケーションや雑談が難しく、社員が孤独を感じがちだったり、時間への意識が希薄になって長時間労働に陥るというケースも指摘されています。
また、接客業など、テレワークができない、もしくは困難という業種・業態もあるでしょう。また、テレワークができる職場と、そうでない職場とで不公平感が出てくるかもしれません。
コロナ終息を見すえたテレワークとは
テレワークへの賛否両論がある中、社員の働き方への意識は確実に高まってきています。
その中で、テレワーク環境で孤独に感じる社員に対して、マネジメント支援や従業員の心身をケアする仕組みも重要です。月に何度か社員が集まる機会を設けるなど、職場を社員が働く場所から交流や共創する特別な場と、とらえる発想も必要でしょう。
また、企業は、テレワークを前提とした制度や評価の見直しへの着手も重要です。そして、デジタル技術を活用して、ハンコレスや電子契約への対応など、オフィス改革などプロセスをデジタル化していく必要もあるでしょう。
重要なのは、職場への出社でも、テレワークでも、それぞれの社員が選択できる環境を整備しておくことです。個人やチームがパフォーマンスを最大限に発揮するために、働き方を柔軟に選べる、そんな労働環境が求められていくのではないでしょうか。
プロフィール:林 雅之
グローバルウェイ アドバイザー。NTTコミュニケーションズ勤務し、国際大学GLOCOM客員研究員などの活動にも従事。主な著書に、『イラスト図解式 この一冊で全部わかるクラウドの基本(SBクリエイティブ)』、『スマートマシン 機械が考える時代(洋泉社)』 など