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あのお菓子なんて呼ぶ? 今川焼、大判焼き、回転焼き…え、33種類も呼び方があるの?

2021年11月30日 17:20  キャリコネニュース

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今川焼、大判焼き、回転焼き、あるいは……。あの餡子やクリームが入った、丸いお菓子。見た目も中身もほぼ同じなのに、なぜこんなに呼び方が違うのか。(取材・文:昼間たかし)

いったい呼び方はいくつある?


この美味しい菓子の呼び名を紹介した記事は様々あるが、中でも秀逸なのが食品大手のニチレイの商品紹介ページ。同社の冷凍食品「今川焼」は、レンチンすればすぐに食べられるということで、冷凍チャーハンと並ぶ人気商品だという。

商品名は「今川焼」だが、同社サイトでは「大判焼き」と「回転焼き」という名前の由来も紹介。さらに、全国における呼称の分布や呼び方の一覧まで掲載している。ちなみに商品名の「今川焼」で呼ばれる地域は関東地方に限られている。

だが、この菓子、もともとは「今川焼」として始まったようだ。1889~1891年にかけて刊行された日本初の国語辞典『言海』にはこうある。

〈〔東京、今川橋ニ始マル〕銅版ニごまのあぶらヲ延キ、銅ノ輪ヲ載セ、うどんこヲ水ニ溶シタルヲ注ギ入レ、餡ヲ包ミ、打返シテ炙キタルモノ〉

今川橋は神田駅付近にあった橋。「銅版にごま油を引いて、銅の輪を乗せ、そこに水溶きの小麦粉を注ぎ、それで餡を包んで、ひっくり返して焼く」ということだから、作り方は今もだいたい同じだろう。

この辞典には「今川焼」という呼び方しか載っていない。『広辞苑』も「今川焼」だけ。そのほかは、まだ広まっていない地域で商売を始めた人がどんな呼び方をしたかに由来しているようだ。

中でも比較的最近生まれたのは「大判焼き」である。愛媛県の会社「松山丸三」が昭和30年代に名付けたとされる。

愛媛新聞(2005年3月5日付朝刊)によると、とある業者が「太鼓まん焼き機」の焼き型を大きくしたのに合わせて、松山丸三は「大番焼きのもと」を計画。ところが人気小説「大番」の舞台になった同県宇和島市で銘菓「大番」が発売されたので、松山丸三は漢字を変えて「大判焼きのもと」として発売したのだとか。ただ地元・愛媛県では大判焼よりも、沢井本舗の「ひぎりやき」のほうがメジャーな呼び方とのこと。ややこしい。

一方、関西では「今川焼」でも「大判焼」でも「回転焼」でもなく「御座候」がもっとも普及した呼称である。これは兵庫県姫路市に本社を構える「御座候」の商品名。もとは商品名なのに広まるうちに一般名詞に変わった典型例である。

同社は1950年創業なので、こちらの歴史も戦後から。もとは関西でよく用いられている「回転焼」として売っていたようだが、屋号を「お買い上げたまわり、ありがたく御座候」ということで「御座候」としておいたら、客が「御座候ください」というようになり商品名になった流れという(『朝日新聞』2009年3月4日付大阪地方版)。

この、商品名由来の地域はほかにもあって、宮城県・山形県・秋田県では「あじまん」と呼ばれている。これも山形県天童市に本社を置いている「あじまん」が由来。とりわけ山形県では「大福まんじゅう・あじまん」としてテレビCMもしていたことがあるので普及度は抜群だ。

一方、山梨県では甲府市にある「富士アイス」の販売している「じまんやき」の呼称がメジャー。なのだが、その由来は謎である。

さらに、広島県だけで使われている「二重焼き」という呼称も由来は謎。二つの生地を重ねる工程から生まれたと考えられるが、なぜ広島県内だけで広まったかは不明である。ちなみに「御座候」は広島駅にも出店しているのだが「二重焼きちょうだい」という客もいるという(『朝日新聞』2012年6月3日付大阪地方版)。

それにしても、全国各地でここまで名前が異なるお菓子も珍しい。ニチレイが紹介しているだけでも33種類。「今川焼」「大判焼き」「回転焼き」「おやき」「円盤焼き」「ドラ焼き」「甘太郎焼き」「ホームラン焼き」「七越焼き」「がめこもぢ」「あまやき」「あじまん」「ぎし焼き」「どてきん」「じまん焼き」「黄金焼き」「太鼓焼き」「花見焼き」「太郎焼き」「ピーパン」「三笠焼き」「きんつば」「七尾焼き」「焼き饅頭」「どりこの焼き」「こがね焼き」「満月焼き」「あずま焼き」「黄金饅頭」「ちゃっぽろ焼き」「画廊まんじゅう」「天輪焼き」「ロンドン焼き」とある。

もう覚えきれないぐらいある。出張が多い人や旅行好きな人なら、食べ比べて歩くのも、ちょっとした楽しみになるかもしれない。