今、ペットとして日本でもっともポピュラーな動物は犬ではなく猫である。ペットとして幸せに暮らす猫がいる一方で、野良猫も多い。その野良猫たちを保護してお世話し、人馴れさせてから譲渡会に出すボランティアの保護団体が日本中に多数存在している。
大体どこの地域でも、毎週1回とか、月に数回のペースで複数の団体が協力して譲渡会を実施している。そういったところに出向けば、運命の出会いが待っているなんてこともある。
ただ、この譲渡には色々と条件があり、特に独身男性には厳しい、ということは昔から言われてきた。果たして本当なのか。今回はこの話をしていきたい。(文:松本ミゾレ)
保護猫の里親になるということの責任はたしかに重い
先日、2ちゃんねるに「独身男性が猫の譲渡受けるの不可能じゃん」というスレッドが立っていた。スレ主は本文で「ペットショップいこ」と書き込んでいる。以降、特に本人から、どのような苦労をしたという話とか、具体的にどのぐらい猫と暮らしたいかという熱意のある書き込みなどは見られない。冷やかし感覚のスレ立てなのかもしれないけど、ちょっとせっかくのスレッドなので活用させていただこう。
僕はペット系のメディアでも寄稿をしていて、その関係で猫の譲渡会にこれまで何度も足を運んだことがある。その都度、猫を譲渡するレギュレーションみたいなものにも目を通している。
簡単に言えば、まず大前提ペット可物件に住んでいること。次に家族の誰かしらが常に家にいることが好まれ、ペットを残しての旅行もできれば控えてほしいという団体も多い(絶対ではないけどね)。
さらに安定した収入があることも大事。猫はお金がかかる動物なので、フリーターとなるとなかなか譲渡対象者にはなれない。そして完全室内飼育に賛同する世帯であるかどうかも大事となる。
猫を安易に外に出すと、近隣に糞尿トラブルを招くし、猫自身も交通事故に遭う危険性がある。年間数十万頭の猫が交通事故死しているというデータもあるので、それを防ぐ意味でも室内で飼育することが必須となる。
あとは、スレッドのタイトルにあるように、独身男性というだけでNGを出しちゃう団体も確かに存在する。これはもうしょうがない。
その理由を詳しく聞いてみると「以前独身男性に譲渡したら、その猫が行方不明になった」とか「虐待された」とか、NGを出すに足るだけの理由というのがあるケースも。それで独身男性への譲渡の条件を厳しくしたり、不可にしているというのも理屈としてはわかる。何より命を預かるわけなので、ある程度審査が厳しいのは当然だ。
独身であってもきちんと手続きを踏めば飼える
もっとも、保護団体ときちんと話し合いをし、しかるべき準備をして自宅の内装を見せれば、独身男性でも猫の里親にはなれることが多い。僕の周りにも、譲渡会で出会った猫を引き取って暮らしているという独身男性がいる。
ネットではついついセンセーショナルな審査条件だけが話題になりがちだけど、そういう譲渡会ばっかりではない。事実、男性1人で訪れてもちゃんと誠意をもって対応している譲渡会だっていくつも見てきた。特に関東圏は譲渡会の開催数自体が多いだけに、独身男性でも歓迎してくれる譲渡会場は多い。
ちなみに、同じ独身男性でも高齢の方となると、そもそも引き取っても先に飼い主のほうが亡くなってしまう可能性などもあるので、そうした意味で慎重になる団体もある。では高齢者は独居だと猫を飼えないの? と心配になってしまうが、団体によっては譲渡とは別に「終身あずかり」というシステムを導入しているところもある。
無期限で猫を預かることができる制度で、飼い主が病気になったりするなど何らかの理由で面倒が見れなくなったら団体に猫を「返還」することになる。こうしたシステムで高齢者に何匹も猫を預けている団体もある。
性質上、こまめな保護団体との連絡は必須になるけど、恐らく今後ますます高齢化が加速する上で、猫の新しい里親候補として独居の高齢者はたとえ男性であっても有力になっていくはず。
ここまで色々書いてきたが、実際に譲渡会に出向いてみると、独身男性への譲渡条件が高いという風潮というのは特に感じない。大体誰であっても譲渡には一定の、それこそ人によっては高いハードルに感じるほどの条件は課せられるものなのだ。
なので、ちゃんと飼おうという人にとっては「あ、そのぐらいの条件なら全然大丈夫」って思えるんじゃないかなぁ。住所と居住実績の確認、ワクチン接種、マイクロチップの義務なんかも、ちゃんと飼うつもりなら大した苦労ではないはずだ。