上京をして、ひとり暮らしを始めてから、もう何年になるだろうか。
気がつけばアラフォー。そして独身。
世間の女の子たちを見ていると、いわゆる結婚適齢期になれば「婚活しなきゃ」という人もいて、漠然と「結婚=すること」と捉えているように思える。
私にも大切な人はいるけれど、 “結婚” となると、話は別だ。
なんというか、子どもの頃から今までに結婚したいと思ったことがないし、自分が「結婚する」という未来像も描けないのである。
そんな私が先日、田中みな実さん初主演として話題の映画『ずっと独身でいるつもり?』に出会った。
【私と似ているようで似ていない主人公】
原作は、おかざき真里さんの伝説的漫画『ずっと独身でいるつもり?』(原案:雨宮まみさん)。
みな実さん演じる主人公・まみは、都内在住・36歳・独身ひとり暮らしと、その境遇が私と似ている。
まみも私も、自分で稼いで、自分の意志でいろんなことを決められる。
そのぶん責任は持たなければならないけれど、「何にも縛られない」というだけで、だいぶ息がしやすい。
だから映画を観始めたときは、まみに親近感を抱いた。私と同じようにひとりで楽しく生きているのだ、と。
ところが、まみと私には大きな違いがあった。まみは、結婚を望んでいたのだ。
【ファンに共感しまみに失望した瞬間】
「都会で自立して生きる女性」がテーマのエッセイが大ヒットしたまみは、ちょっとした有名人になり、同じような境遇の女性から熱烈な支持を受けていた。
しかし、ある日「ずっとひとりは嫌だ」と発言して、ネットで大炎上してしまう。
きっと多くのファンにとって、まみは「ひとりで生きてゆく仲間であり戦友」のような存在だったのだろう。あるいは「憧れ」だったのかもしれない。
そんな人から、いきなり「生き方」を否定されてしまったら。「裏切られた」と感じ、幻滅してまっても、仕方ないのではないだろうか。
事実、まみに親近感を抱いていた私も、スクリーンを見つめながら静かに失望していた。
【ふたりで叫んだ「うるせえよ」】
映画冒頭、まみは母親から「ひとりはかわいそう」と言われ、本当にそうなのかと疑問を抱く。
自分を「かわいそう」と思ったことはないけど、そう言われると寂しいような気もする……。
ひょっとしたらこの言葉が、「ひとりは嫌だ」と感じさせ、さらに結婚へと急き立てたのかもしれない。
そんなとき舞い込んできた、年下彼氏からのプロポーズ。
おそらくこの瞬間、「これでもう、ひとりじゃない」と安堵したはずだ。それなのに、まみの表情を見ると、ちっとも嬉しそうじゃない。それどころか結婚話が進んでいくほど、どんどん笑顔が消えてゆく。
さらに追い打ちをかけたのが、恋人やその家族から浴びせられた「結婚したら仕事はやめて」「子どもができたらこうであれ」「パートナーの前では笑顔でいろ」といった言葉の数々。
まみの意見を聞こうともせず、自分たちの価値観を押し付けてくる彼らを見て、強く思った。私だったらこんなの無理だ。「うるせえよ!」と怒鳴ってしまうかもしれない。
その瞬間……スクリーンの中のまみも「うるせえよ!」とブチ切れたのだ。
【まみは「もうひとりの私」】
結婚はするもの。いつまで独身でいるの。そんなことしてるから結婚できない。若くないんだから妥協しろ……。
私たち独身女性の多くは、日々、こうした言葉にさらされている。
まみも同じだ。だから、彼女が「うるせえよ」と吐き捨てた瞬間、この人は私が生きるかもしれなかった人生を歩んでいる、もうひとりの私だと思ったのだ。
結婚しろだのなんだの、うるさく言ってくる輩が周りにいたら、私もまみのように揺らいでいたかもしれない。
だけど私の周囲には、自分が望むように生きる女友だちがたくさんいる。みんないわゆる「独身女性」だけれど、その生き方はさまざま。
ひとりを謳歌する人、パートナーと恋愛を楽しむ人(シングルマザー含む)、籍は入れず事実婚を選ぶ人、友人同士で暮らしている人……結婚するもしないもその人の自由だと、彼女たちを見ていると心から感じる。
そういう友人に恵まれた私は、運が良いのだと思う。幸せは人それぞれだと、彼女たちの姿を通して知ることができたから。
【東京で強くたくましく生きていく】
映画『ずっと独身でいるつもり?』には、まみのほかに3人の女性たちが登場する。彼女たちの生きざまも、ぜひ劇場で目撃してほしい。
生々しく、痛々しく、目の前に突き付けられたものと闘いながら、なんとしてでも都会で生き抜いてやろうともがいていたあの日の自分。その日々を経て、今があることを思い出させてくれた今作。
これはきっと私の、そして私たちの物語だ。ひとりで生きている人も、そうでない人にも、ぜひ観てほしい。
参照元:映画『ずっと独身でいるつもり?』公式サイト
撮影・執筆:田端あんじ (c)Pouch