2021年タイトル決定の天王山、富士スピードウェイでのスーパーGT最終戦GT500クラス決勝は、シリーズ連覇に向け盤石のレース運びを展開していた1号車STANLEY NSX-GTがまさかのアクシデントで戦列を去り、代わって序盤のオーバーテイク劇からレースを完全に支配下に置いた36号車au TOM’S GR Supraが今季初優勝を挙げると同時に、なんとランキング5位からの大逆転でシリーズチャンピオンを獲得。関口雄飛、坪井翔にとっても未勝利シーズンの最後にうれしい初王座の栄冠を手にすることとなった。
富士山麓に本格的な冬到来を感じさせる11月最後の週末。恒例となるノーウエイト勝負のシーズンフィナーレに向け、前日27日(土)の予選から“GT史上最速”の勝負が繰り広げられた。Q1に続きコースレコード更新合戦となったQ2ラストアタックでは、14号車ENEOS X PRIME GR Supraの山下健太が自身の記録を更新するタイムで今季初のポールポジションを獲得。フロントロウ2番手にはディフェンディングチャンピオンの1号車STANLEY NSX-GTが並び、ひさびさに燃料リストリクターのランクダウン縛りが解けたことも含め、GRスープラの牙城を崩す速さを披露した。
13時のフォーメーションラップを前に気温は13度、路面温度は22度のコンディションで全15台がグリッドを離れると、4番手スタートの36号車au TOM’S GR Supra関口が仕掛け、チームメイトでもある37号車をパスして3番手へ。さらにダンロップコーナー立ち上がりで2番手のSTANLEY牧野任祐に並びかけると、サイド・バイ・サイドのまま13コーナーアウト側から前に出る。
続くラップではKeePer TOM’S GR Supraのサッシャ・フェネストラズが1コーナーまでにSTANLEYを刺し、僚友に奪われたポジションを取り戻そうかという勢いを見せる。
すると3周目の最終コーナー。後方から追い上げを見せていたAstemo NSX-GTのベルトラン・バゲットが、混戦状態からカルソニック IMPUL GT-R松下信治のインに飛び込むと、ヒットされたGT-Rはさらにアウト側にいた19号車WedsSport ADVAN GR Supraを巻き込むようにしてスピン。3台は後続車両のラインも塞ぐ形でストップしてしまう。
7周目にはGT300クラスのアクシデントで車両回収が必要との判断からセーフティカー(SC)が導入されると、13周目突入でリスタート。この機会を虎視眈々と窺っていた2番手auは、1コーナーへの加速勝負で前方のENEOS X PRIMEに車速を合わせると、ブレーキングゾーンで完全にインを抑えて鮮やかにオーバーテイクし、関口が首位に躍り出る。さらに37号車KeePerも続き、100Rでアウトを取るとヘアピン進入でインを奪い、これでTOM’Sの2台が1-2体制を構築する。
続くラップでは14号車ENEOS X PRIMEも反応を見せピットに向かい、34.8秒で大嶋和也から山下健太にスイッチ。さらに25周目には首位の36号車auも続き、39.6秒の作業時間で坪井翔へと繋いでいく。
するとここからミシュランタイヤのウォームアップ性能を活かした3号車CRAFTSPORTSの平手晃平がスパートを見せ、アウトラップで1号車STANLEYの前に出ると、チャンピオン山本尚貴は14号車ENEOS X PRIMEの山下にも勝負を挑まれ、2周にわたってポジションを入れ替えてのバトルを繰り広げる。
27周目には暫定首位に立った37号車KeePerも平川亮にスイッチすると、30周目にはENEOS X PRIME山下が前に出て実質2番手を取り返す。この時点でタイヤのピーク時間帯が過ぎたか、3号車CRAFTSPORTSはSTANLEY山本、ZENT CERUMO GR Supra石浦宏明にも立て続けにかわされ、6番手にまで後退してしまう。
33周目突入を前に最後の最後までピットを引っ張った24号車リアライズコーポレーション ADVAN GT-Rがピットへ入ると、36号車auを先頭に14号車ENEOS X PRIME、37号車KeePerとGRスープラがトップ3を占める。
その同じラップでKeePer平川がENEOS X PRIME山下を捉えて2番手に浮上。4番手にZENT、5番手にARTA野尻と変わり、首位の36号車auに対し8号車ARTAが逆転王座に向け3番手まで挽回できるかが終盤の焦点に。
しかし62周目の1コーナーでは1度パスしていたDENSO KOBELCO SARDに差し替えされ、ARTAは6番手へとダウン。これで2021年の雌雄は決し、今季ここまで勝利のなかった36号車au TOM’S GR Supraが最終戦にして初優勝を飾ると同時に、ランキング5位からの大逆転でシリーズチャンピオンを獲得。2位には僚友のKeePer TOM’S GR Supraが続き、3位にENEOS X PRIME GR Supraの表彰台。最後の最後でZENTも捉えたDENSOが4番手に上がり、GRスープラがそのデビュー戦同様に富士でのトップ5独占を成し遂げた。