2021年11月28日 10:01 弁護士ドットコム
枝野幸男代表の辞任に伴う立憲民主党の代表選が11月30日に予定されており、議席を減らすことになってしまった10月の衆院選から、どう立て直すのかに注目が集まっている。
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立憲民主党の議席減少は複数の要因が考えられるが、日本若者協議会代表理事の室橋祐貴さんは、ヤフーニュース個人の記事「立憲民主党はなぜ若者の支持を得られなかったのか?」で、「ツイッター上にいるコア支持者の支持を集めようとすればするほど、国民全体からは離れていく」「あまりに左に寄りすぎている」とSNS上の声を重視した結果、いわゆる「フィルターバブル」と呼ばれる偏りが生じてしまったとみている。
2013年にインターネット選挙が解禁されて、今回の衆院選が6度目の国政選挙だった。SNSやYouTubeなど、ネットを活用することはもはや当たり前になっている。
若い人に向けた情報発信の手段として、ネットの活用が期待されているが、立憲民主党以外の政党も含めて、現状をどう見ればいいのか。室橋さんは「ネットの情報を冷静に取捨選択して、政策につなげていくことが重要だ」と語る。
――なぜ、立憲民主党が、SNSの声を重視しすぎる、ということが起きてしまったのでしょうか
この数年、ハッシュタグデモが話題になることが度々ありましたよね。たとえば、去年の「#検察庁法改正案に抗議します」のようなものです。Twitterで政権を変えられるという雰囲気がありました。
でも、Twitterでトレンドに入ったとしても、せいぜい数万人の盛り上がりでしかないわけです。1億人の有権者と比べてみたら、たかが知れている。
それを日本全体の盛り上がりと勘違いしてしまった面があるのではないでしょうか。反応を見すぎたが故に、アピールする政策の順番を間違えたのではないかと思います。
たとえば、若い人が「ジェンダー平等の推進」に関心があるのは確かなのですが、出口調査の10代のデータをみても1番ではありません。「子育て・教育政策」や「景気対策」よりも下です。それなのに、前面に出してきました。
参考記事:「選挙の争点 10代『新型コロナ対応』最多」
入管問題、森友学園問題、桜を見る会の問題などを前面に打ち出すことについても、同様の構造があるのではないでしょうか。
――それでも、若い人はネットをよく見ているから、影響はあるのではないでしょうか
たしかに、若い世代はよくInstagramを使うからということで、インスタライブを行う候補者もいましたが、Instagramは拡散力が非常に弱い。ライブの通知もフォロワーにしか届かない。
ネット選挙運動は、すでに興味を持ってくれている人々には響くものがあるかもしれませんが、無党派層に対してリーチするのは厳しい。結局のところ、票につながりにくいのです。参院選の全国比例ぐらいの有権者の規模であればともかく、衆院選の小選挙区では現場で地べたをはうことのほうが重要です。
また、ネット選挙運動が導入されたからとはいえ、若い世代も含めて、有権者の情報収集に大きな影響を与えているのは、依然としてテレビをはじめとしたマスメディアです。
マスメディアで取り上げられている立憲民主党の印象といえば、「反自民」「反安倍」と言って反対や対立を煽る姿です。それは既存の支持者を喜ばせることにしかつながらなかったのではないでしょうか。若い世代は「怒りっぽい人」を嫌います。
打ち出す政策も、みんなにいい顔をしようとしたためか、「バラマキ」感が強いものが多かった。仮に無党派層や現役世代に政策が届いたとしても、その多くが政策の実効性を疑問視したのではないでしょうか。
――自民党は、近年若者世代の支持を多く集めていると言われていますが、他の政党の情報発信はどうだったのでしょうか。
一時期安倍元総理が積極的にInstagramを使っていて、それは人気を集めていましたが、自民党はそんなにネット発信が上手だったわけではありません。
今の20代は、日本がずっと右肩上がりに成長していた時代を知りません。民主党政権時の就職氷河期は若干記憶にある人がいるかもしれませんが、イメージにあるのは、安倍政権期以降の、就職状況が好調になっている時期です。
それに対して特に不満を持っているわけではないし、『変える必要がない』というような消極的支持が多いのではないでしょうか。
――ネットをうまく活用していた政党はどこでしょうか。
国民民主党ですね。
政策立案のネタ探しとしてネットを普段からよく見ていて、国会での質問や公約に入れたりと、臨機応変です。実際に立案するときは、ネット上の声だけでなく、調査や数値をソースとして持ってきていて、冷静でバランスが取れていた印象ですね。打ち出しているメッセージがクリアでした。
今の若い世代が、批判から入ることを嫌うこともわかっているという感じがします。玉木氏のYoutubeも含めて、コンテンツのクオリティが高いです。
今回、日本若者協議会の団体内でも、「どこの政党に投票したのか」「なぜ投票したのか」のアンケート調査を実施しましたが、出口調査の数字に比べると、国民民主党支持の割合が高くなっていて、政治リテラシーが高い10代、20代は国民民主党に入れている人が多いという印象を裏付けています。
――躍進した維新はどうでしょうか。
ネット発信というよりも、地上波や街頭演説に力を入れていた印象があります。大阪府の吉村知事の街頭演説は大人気でした。大阪では普段から認知度も高く、地上波や街頭演説で今までの実績をアピールできていたために、支持を増やすことができたのでしょう。
ーー結局、若い人たちにどれだけ情報を発信したとしても、高齢者の有権者のほうが多いわけで、結局は高齢者有利の「シルバー民主主義」になってしまうのでしょうか。
私はシルバー民主主義なんてものはないと思っています。
少子高齢化は進み、若者の投票率は低迷したままですが、安倍政権以降の予算編成を見てみても、家族向けの支援など、現役世代への投資は増えています。たとえば、国立社会保障・人口問題研究所が算出している家族関係政府支出(子育て支援にかかる予算)を見ると、2014年度は6.1兆円でしたが、2019年度には9.6兆円まで増えています。一方で、高齢者の負担が増えるような政策も行われています。
実際、若い世代のほうが情報処理能力がありますし、主権者教育を受けていて政治的なリテラシーが高いのではないかと思っています。
高齢者層は、なかなか支持政党に変化が起こりにくい。一方で、無党派層や若者・現役世代は、揺らぎがちです。そんな人々からの支持は、批判や対立をアピールしているのでは獲得できません。
――今後、どのような情報発信が求められるのでしょうか。
「今まで何をしてきたのか」という実績の可視化、そしてどう社会課題に貢献するのか、解決を目指すのか。この2点をクリアに示すことを、現役世代は求めています。
維新が野党でありながら実績を打ち出してきたように、建設的なことを発信するといいでしょう。ネット上にあふれている対立を煽る意見ばかりを重視するのではなく、もっと情報を相対化して分析することが重要です。