「求人内容をみて、愕然としました」
「こんな求人出す会社が映画界の宣伝業務していることについて、皆さんどう思いますか??」
映画業界の労働問題などを扱う非営利団体Japanese Film Projectが11月22日、画像つきツイートでこんな風に問いかけ、注目を集めた。
調べてみると、求人を出したのは「DROP.」という渋谷にある小さな映画の宣伝会社。求人そのものはサイト上から消えていたものの、ネット上に魚拓やキャッシュが残っていた。(取材・文:中山道登)
「水商売経験者の方(女性の方)、優先。」
たしかにあちこちひどい。引用すると、次のような内容だ。
<職種:昨今、人気がなくなっている映画宣伝パブリシスト
仕事内容:映画宣伝全般に関わる業務
勤務地:再開発で、スゴイことになっている渋谷
待遇:年齢・経験などを考慮せず、当社規定により一律年俸300万円(税込)。気が向いたときに決算賞与あり
雇用形態:正社員・社会保険完備・交通費(年俸に含)
応募資格:大卒以上・新卒不可 22歳~26歳までの方
学校で映画の配給・広報(マーケティング)コースを学んだ方、優先。
東京23区内にお住まいの方、優先。
水商売経験者の方(女性の方)、優先。
察知力のある方・地頭の良い方、優先。
好きな業界での仕事に、"働き方改革は不要"と思う方、優先。>
ツッコミどころだらけだが、「水商売経験者の方(女性の方)、優先」や「好きな業界での仕事に、"働き方改革は不要"と思う方、優先」などの文言からは、ヤバい雰囲気しか漂ってこない。いったい、入社したら何をさせられるんだ。「気が向いたときに決算賞与あり」にも呆れるしかない。
さて、ツイッターで話題になったからだろう、求人内容はすでに消され、公式サイトには謝罪文が大きく表示されていた。
「この度は、弊社採用情報につきまして、皆様およびご関係者の皆様にご迷惑およびご不快な思いをさせてしまい、誠に申し訳ありません。表現や条件など不適切な内容であったと猛省いたしております。今後、改めて倫理観および労働条件等の見直しをし、改善して参りたいと思います。改めて、深くお詫び申し上げます」
いったい、どういう意図があったのか。11月24日午後、渋谷にあるオフィスを訪問してみた。チャイムを鳴らすと従業員らしき方が対応してくれたが、「取材はお断りしています」とのことだった。
取材拒否なので推察するしかないが、この内容だと、本気で人を募集する気は皆無だろうし、そもそも応募する人がいるとも思えない。おおかた、悪ノリジョークが盛大に滑ったというところだろう。
ツイッターでは〈頼むからこれ以上「映画」をおとしめるのはやめてくれ…… と思うような事例がまたひとつ〉という指摘もあったが、ほんとに同意。なんとも後味の悪い話だった。今週末は名画を見て気分転換しよう。