引き続きシドニー・モータースポーツパークで、11月19~21日に4連戦最後の“スーパーナイト”戦が開催されたRSCレプコ・スーパーカー・チャンピオンシップは、悪天候に翻弄される波乱の週末となるも、土曜にシーズン14勝目を記録した2016年王者“SVG”ことシェーン-ヴァン・ギズバーゲン(ホールデン・コモドアZB/レッドブル・アンポル・レーシング)が、自身2度目のドライバーズチャンピオンを確定。今季限りでの勇退を決めている7冠王者の僚友ジェイミー・ウインカップ(ホールデン・コモドアZB/レッドブル・アンポル・レーシング)とともにワン・ツーを決めた名門トリプルエイト・レースエンジニアリングが、10度目のチームタイトルを獲得している。
シーズンフィナーレの“祭典”となる『バサースト1000』に向け、11月を通じてシドニーで実施されてきたクワドラブル・ヘッダーも最後の1戦に。4連戦のラウンド4となる第11戦は従来までの週末3ヒート制とは異なり、ナイトレースは維持しながら土日の2日間で64周250kmの2ヒートを争うフォーマットが採用された。
そのシドニー最終戦でやはり金曜プラクティスから速さを見せたのは、このトラックで8戦5勝と好相性を見せつけるディック・ジョンソン・レーシング(DJR)のアントン・デ・パスカーレ(フォード・マスタング/シェルVパワー・レーシング)で、予選トップ10シュートアウトを制して今季11度目のポールポジションを獲得する。
そのままウインカップをフロントロウに従えレース1のスタートを切ったパスカーレだったが、ターン1でレッドブル・アンポル・レーシングのホールデンにホールショットを奪われると、続くターン2では背後にいたSVGにも先行を許し、スーパーソフトのコンパウンドをチョイスしたトリプリエイト勢が早くもワン・ツー体制を築いていく。
7周目にはエンジントラブルによりコースサイドにマシンが止まったことでセーフティカー(SC)が導入されると、ここで義務ピットのウインドウが開いたことも重なりファストレーンは大混雑に。ここで“ダブルスタック”のマシンに行手を阻まれたSVGは大きくタイムロスを喫し、SCが率いる隊列で9番手までドロップしてのコース復帰となる。
10周目のリスタート以降、2回目のピットを経て首位を守ったのは、ひさびさのリードラップとなったキャメロン・ウォーターズ(フォード・マスタング/ティックフォード・レーシング)で、前戦でシリーズ初優勝を遂げた初代TCRオーストラリア王者のウィル・ブラウン(ホールデン・コモドアZB/エレバス・モータースポーツ)を2番手に、トップから16.8秒後方のSVGが6番手、続いてパスカーレが7番手、そしてウインカップが8番手に続くオーダーで残り10周を迎える。
するとここで上空から雨粒が落ち始め、最後のスティントでもスーパーソフトをチョイスした数少ないドライバーのひとりとなっていたSVGが驚異のスパートを開始。3周後には雨量が増え始めるなかトップ5に進出すると、60周目を前に次々と前走車をオーバーテイク。61周目のコントロールライン通過時点で、SVGは首位ウォーターズの背後3.6秒差にまで迫ってくる。
■「序盤のマージンがSCで吹き飛んだときは、正直『終わった』と思った」とSVG
その前方0.6秒差で2番手を走っていたブラウンは「この雨が僕らのチャンスをすべて台無しにした」と46周目から守り続けたポジションを失い、最終的に9位まで陥落するなか、わずか8周で5つのポジションと17秒を稼ぎ出したSVGが残り3周でついに首位浮上に成功。同じく8番手から終盤のドラマティックな展開を這い上がったウインカップを従え、タイトルを手繰り寄せる劇的な今季14勝目を飾ってみせた。
「本当に感情のジェットコースターだったね。序盤のマージンがSCで吹き飛んだときは、正直『終わった』と思っていた。でも雨が降ったことでハード勢はタイヤの温度が落ち、そこを少し長く保てるスーパーソフトの僕らに風向きが変わったんだ」と勝因を語った勝者SVG。
「雨が降らなかったら何位だったかも分からないし、確かに僕らがワン・ツーで終えられた可能性は低かっただろう。でも、これこそシドニーでの過去4週間のたゆまぬ努力と、今夜チームのチャンピオンシップを確保したクルー全員の功績だ」と、10度目のチームタイトルをワン・ツーで決めたトリプリエイトのメンバーを労った。
この土曜終了時点でランキング2位のウインカップに対し349ポイント差としたSVGは、続く日曜の250kmレースでタイトル確定に臨んだものの、この日は前日から降り続く雨が止む気配もなく、併催のステップアップ・シリーズであるSuper2もターン1での事故を経てキャンセルとなる状況に。
レース2に向けサプライズのポールを獲得したニック・パーカット(ホールデン・コモドアZB/ブラッド・ジョーンズ・レーシング)を先頭に、スケジュールより15分遅れでSC先導スタートが切られたものの、ウインカップを含む多くのドライバーがコース上に留まることすらできず。チーム無線では複数のドライバーから「リヤタイヤに熱を入れるのに苦労している」との報告も上がったことから、レースコントロールは5周時点でセッション中断を宣言。
ピットレーンに待機した車列には45分後にレースキャンセルが伝えられ、周回数から『レース不成立』が確定。ポイント付与がないことから最終戦『バサースト1000』を残し、SVGが2016年以来のシリーズチャンピオンに輝いた。
「残念ながら今日はレースに出場できずファンには申し訳なかったが、バサースト前にチャンピオンシップをタイトルで締めくくる素晴らしい1年になった」と、複雑なエンディングながら喜びを表現したSVG。
「この数週間の苦労を含め、僕も本当にうれしいし、チームをとても誇りに思っている。チームのチャンピオンシップ、ドライバーのチャンピオンシップ、その称号を掲げてマウントパノラマに行けるのは最高の気分だ。何も心配する必要はないし、目の前のグレートレースに100%集中するだけだね!」
既報のとおり、初の12月開催とした上で2021年のシリーズ最終戦に指定された『バサースト1000』は、合計10のカテゴリーを含む大規模な6日間イベントの一環として11月30日から12月5日の期間に開催を予定する。
そのフェスティバル会場では、12月3日金曜にRSC新規定車両のお披露目も計画され、2023年へと導入が1年延期されたGen3規定『フォード・マスタング・スーパーカー』と『シボレー・カマロZL1』がファンの前で初公開される。