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忘れかけた気持ちを思い出す『消えた初恋』 ドラマと合わせて“胸キュン”相乗効果

2021年11月22日 14:01  リアルサウンド

リアルサウンド

『消えた初恋』ドラマで“胸キュン”相乗効果

 ひねくれ渡・原作、作画・アルコによる人気漫画『消えた初恋』。2019年より「別冊マーガレット」にて連載中の作品だ。なにわ男子の道枝駿佑とSnow Manの目黒蓮によって実写ドラマ化され、話題を集めている。


 高校2年の青木想太は、隣の席の橋下さんに片想い中。あるとき、橋下さんから消しゴムを借りると、そこには「イダくん♡」の文字が。イダくんとは、青木の前の席に座る井田浩介。橋下さんが井田に好意を寄せていることを知ってショックを受ける青木は、動揺から消しゴムを落としてしまう。さらにはその消しゴムを井田本人に拾われ、青木の消しゴムだと勘違いされる事態に……。


甘酸っぱい初恋に、壁に頭を打ち付けたくなる

 最初は、自分の消しゴムではないと井田の誤解を解こうとする青木。しかし、井田と接することが増えていくうちに、本当に心を惹かれていく。ただのクラスメイトだった相手が、気になる人になり、好きになって……という過程が丁寧に描かれている。コミカルな描写にクスリとしつつも、そのコミカルさが高校生の恋愛によりリアルさを加えてくれているように思う。


 そして、とにかく青木の恋心が甘酸っぱい。なんというか、恋をするのがヘタクソなのである。大人になると、人を好きになるのにも少し打算が働いたり、カッコをつけたりすることもある。でも、青木の心はいつだってまっすぐでむき出しで、その姿は少しダサイときもある。それがまた、かつての自分を見ているようで恥ずかしくなるのだが、本作の良さのひとつだろう。


青木の恋と並走する橋下の恋

 青木がはじめ片想いをしていた橋下さん。同じ井田が好きなのか……と思いきや、実は橋下さんが好きなのは、青木の親友のあっくんだった。あっくん=相多(あいだ)……つまり最初消しゴムには「アイダくん♡」と書かれていたものが、使っているうちに「イダくん♡」となり、それをうっかり青木が見て、井田に発見されたというわけである。


 そうして恋のライバルになるかと思われた橋下さんと井田は、まるで戦友のように。青木が勇気を出して告白したことに触発されて、橋下さんもあっくんに想いを告げる。が、一筋縄でいかないのが漫画のお決まりだ。


 付き合い始めたものの、なかなか関係が進まない青木と井田。一方、付き合うまでもいかない橋下さんとあっくん。ふたつの恋がバランスよく描かれていることで、常に緊張感があるのもこの作品の見どころのひとつだ。


ドラマとマンガの親和性が高い

 ドラマも話題となっている今作。青木と井田の配役がハマっていることもあり、ドラマを見たあとにマンガを読んでみるのもオススメだ。


 特に、井田を演じる目黒蓮がぴったりだ。恋愛に疎くて、朴訥とした雰囲気があるが、ふとした行動がスパダリ(スーパーダーリン)な井田。普通なら「そんなことするのは恥ずかしくてみていられない……」というような赤面シーンでも、目黒蓮だとピタリとハマる。


 青木を演じる道枝駿佑は、にじみ出る人の良さと同時に、自分の恋心に自分自身が振り回されている様子もとてもリアルに演じている。初めての恋愛で舞い上がりちょっとめんどくさいところのある青木に対する共感度が、道枝の演技力によってさらに上がっているように思える。


 気になるのはそれぞれの今後の関係だ。待ちきれず原作でドラマの先を読むか、ドラマのあとに2度目のキュンを楽しむか。どちらにしても、相乗効果でキュン度が上がることは間違いなし。合わせて楽しんでほしい。


■書誌情報
消えた初恋(マーガレットコミックス)
原作:ひねくれ渡
作画:アルコ
出版社:集英社