2021年11月20日 08:21 弁護士ドットコム
試験に落ちたことを全国民にさらされる。そんな過酷なことがあるだろうか。秋篠宮家の長女・眞子さんと結婚した小室圭さんのことである。
しかし、弁護士業界には他にも「司法試験不合格」を新聞に書かれた人物がいる。法律家とプロレスラーの「二刀流」で活動する川邉賢一郎弁護士(39)だ。
東大法学部卒の法曹界“ドラ1”候補だったが、新旧司法試験で計4度不合格。新司法試験3度目のラストチャンス(当時は5年間で3回という受験制限があった)で合格を果たし、「スリーカウント」から自力で脱出した苦労人でもある。
生まれ育った横浜に根差した「庶民派」の弁護士として、また「剛馬」のリングネームで現役バリバリのプロレスラーとして活躍する異色の二刀流を取材した。(執筆家・山田準)
小室圭さんの、米ニューヨーク州の弁護士試験不合格報道に、違和感を覚える人は少なくない。日米で司法試験制度の違いはあるにしても、難関試験であることには変わりない。合格の苦労を知るからこそ、日本の弁護士からも小室さんに同情的な声が多くあがっている。
川邉弁護士もその一人で、前向きに頑張る人間のネガティブな情報を積極的に発信する風潮に、異を唱えている。
川邉弁護士は旧司法試験で2度、新司法試験でも2度、受験に失敗している。プロレスラーも芸人同様、自身の失敗談をネタにするタフさが不可欠。川邉弁護士もプロレスラーとして「不合格会見」を開き、話題を振りまいたことがあったが、心中は穏やかではなかったという。
複雑な思いを抱きながら、小室さんの結婚会見を見ていたという川邉弁護士。周囲の重圧と戦いながら会見に臨む小室さんの姿に、共感を覚えたという。
2011年5月にスリーカウントをはねのけ司法試験に合格。司法修習期間中の活動休止をへて、2013年6月に日本初の弁護士レスラーとしてリングに立った川邉弁護士。胸囲140cmのイタリア製のオーダーメイドスーツに身を包み、約3600ページ、重さ約2㎏の「模範六法」を武器(比喩ではない)にリングで暴れまわっている。ちなみに、この模範六法が発行元の三省堂から「寄贈」されているというから、何とも粋な計らいで面白い。
リングネームは剛馬(竜剛馬から改名)、入場テーマ曲は映画「ロッキー3」の主題歌で、ハルク・ホーガンらも使っていた「Eye of the Tiger」(Survivor)、掛け声は「ショアッ!」、得意技は「六法クラッチ」「模範六法での殴打」「ジャンピングネックブリーカードロップ」――。本業の弁護士としてはもちろん、プロレスラーとしても絶対に手を抜かないのが、異色二刀流の流儀だ。
前代未聞の二刀流として、法廷とリングで活躍する川邉弁護士。横浜駅近くにある弁護士法人Next 横浜OFFICE」のロビーには、自身が所属する「プロレスリングBASARA」のプロレス興行ポスターが飾ってある。そんな弁護士事務所は恐らく、いや絶対に、他にはないだろう。
普段、法律事務所とは無縁の相談者にとって、川邉がスーツ姿でほほ笑む、そのポスターを見ただけで、肩の力が抜けるのではないだろうか。その意味で、日本一敷居の低い法律相談所と言えるかもしれない。
弁護士として相談者の不安、悩みを解決し、プロレスラーとしてファンに笑顔と元気を発信する。弁護士でも、プロレスラーでも、お客さんあってのサービス業という点は変わらない。弁護士とプロレスラーの共通点を聞くと、「他人のために闘うところ、負け方にも矜持があるところ」と即答した。
現在は月1回のペースでリングに上がり続ける川邉弁護士。ただでさえ多忙を極める弁護士業務と並行して、プロレスラーとして闘い続ける「前代未聞の挑戦」は、想像以上に難しい。
世間の常識を覆す“二刀流”への挑戦は、大リーグの大谷翔平選手だけじゃない。「法廷」と「リング」で闘い続ける異色弁護士は「これから詐欺案件の対応がありまして。それでは失礼します」と、取材にスリーカウントを鳴らすと、足早に飛び出していった。
【取材協力弁護士】
川邉 賢一郎(かわべ・けんいちろう)弁護士
1982年(昭57)1月13日、横浜市生まれ。東京大学法学部卒業。2011年5月、新司法試験3度目の受験で合格。第65期司法修習修了。2013年6月、日本初の弁護士プロレスラーに(プロレスデビューは2005年11月の趙雲子龍戦)。神奈川県弁護士会所属。「弁護士法人Next」の横浜OFFICEで、相続、離婚、企業顧問から詐欺関連まで幅広い問題に対応している。またプロレスラーとして「プロレスリングBASARA」に所属。「剛馬」のリングネームで人気。英検準1級、TOEIC850点。
事務所名:弁護士法人Next横浜オフィス
事務所URL:http://next-law.or.jp/