F1第19戦ブラジルGPでルイス・ハミルトン(メルセデス)が見せた速さに誰もが驚愕した。特に、タイトル争いのライバル、レッドブル首脳陣はうろたえ、チーム代表クリスチャン・ホーナーとモータースポーツコンサルタントのヘルムート・マルコは、W12のリヤウイングに違法な部分があるのだとほのめかし続けた。
FP1がスタートする前に、チーフテクニカルオフィサーのエイドリアン・ニューエイとスポーティングディレクターのジョナサン・ウィートリーは、膨大な資料を持ってFIAのオフィスに乗り込んだ。メルセデスのマシンが技術規則に従っていないと彼らが疑う点についての資料だったのだろうが、実際のところ、レッドブルはなんとかして違法行為を探し出そうと必死になっているだけで、何らかの証拠を得ているわけではない。
ハミルトン車とバルテリ・ボッタス車は完全に同じでありながら、インテルラゴスのストレートではハミルトンの方が速さを発揮した。あるメルセデス関係者は、パワーユニット戦略の違いが影響したと説明した。
ブラジルGPの週末、メルセデスはハミルトン車にシーズン5基目のICE(エンジン)を投入した。シーズン後半、メルセデスはパワーユニットの信頼性に問題を抱えていたが、それが原因で5基目を入れたわけではない。メルセデスは、第16戦トルコで投入した4基目までで、シーズン最後まで走り切ることができたと主張している。しかし彼らは、グリッド降格ペナルティを受けてでも、新品エンジンを使うことにより、パフォーマンス上のゲインを得ることを選んだのだ。
メルセデスは、自分たちのICEは距離を走りこむなかで予想以上にパワーが低下していくことを認めている。だが、1基余計に入れることで、安全面でそれほど大きなリスクを冒すことなく、シーズン終盤戦によりアグレッシブに使うことができる。
あるメルセデス関係者によると、カタールのロサイルはそれほどエンジンパワーが重要ではないため、比較的保守的なモードを使用するという。だが、その次のジェッダはパワーがものをいうコースであるとみられており、メルセデスはそこではハミルトンに目一杯エンジンのパフォーマンスを使わせるつもりでいるということだ。