2021年11月19日 11:21 弁護士ドットコム
都内の中小企業を対象とした最大200万円の新型コロナウイルス対策の助成金事業で、交付決定を受けて高額機材を購入したのに、一転して支給しないと通知された事業者が相次いだ問題で、再審査で判断がくつがえり助成金が支給されたケースが107件あったことが弁護士ドットコムニュースの取材でわかった。
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制度趣旨からすれば、幅広く事業者を支援すべきところ、対象となるはずだった事業者に不支給の決定をしていたという点では「審査ミス」と言え、コロナ禍での助成金制度の難しさを物語っている。
判断がくつがえり、助成金が支給されたある事業者は「100万円以上する機器を購入しており、不支給は死活問題だった。不正は防がないといけないが、こちらは気が気ではなかった」と振り返る。
都とともに、事業主体となった東京都中小企業振興公社の担当者は「審査にあたってご心配、ご迷惑をおかけした。丁寧なご説明が足りておらず、行き届かなかった点があった」と反省を口にした。(編集部・園田昌也)
問題になったのは、2020年夏ごろに募集された「非対面型サービス導入支援事業」と「新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン等に基づく対策実行支援事業」。コロナ対策の費用について、200万円を上限として3分の2を助成するというものだった。
いずれも見積もり審査などを経て、2020年秋に非対面3000件、ガイドライン4124件に交付決定が出された。
しかし、このうち非対面335件、ガイドライン219件について、一転して不支給の決定が2021年3月になされ、すでに高額機材などを購入していた事業者から「詐欺だ」などとの批判の声が上がった。
交付決定が出ても、実施状況が要件を満たさなければ不支給となることは申請時などに伝えられており、公社の担当者によると「対象期間外に実施したコロナ対策」や「身内企業への発注」などルールから外れたものも実際にあったという。
一方で、一見して要件を外れているとは思えないものについても不支給決定が相次ぎ、理由すら説明されなかったことから、一部事業者から不満が噴出していた。
報道などを受けて、2021年4月6日には不支給・減額支給となった事業者を対象に、理由の説明などをおこなう特別相談窓口を公社が設置した。
こうした結果、非対面100件、ガイドライン7件について判断がくつがえり、助成金が支給された。不支給となった事業者についても、別の助成金や支援を紹介するなどしたという。
今回のトラブルを問題視し、特別相談窓口の設置を働きかけた内山真吾都議は、次のように話す。
「事業者に寄り添いたいという思いで制度設計したはずだが、運用面で寄り添えなかったのではないか。審査する件数は膨大で大変だと思う部分もあるが、そのしわ寄せが事業者にいってはならない。ルールそのものや審査プロセスがこれで良いのか、不断の見直しが必要だ」
前例のない対応が求められたコロナ禍。都の助成金に限らず、審査対象は膨大で、中には不慣れな事業者からの申請もあるはずだ。審査する側の負担も大きいと考えられるが、苦境にある事業者らへの支援は迅速かつ幅広くおこなわれる必要があり、制度の改善が求められている。
公社の担当者は「今後の助成金事業はコロナの状況次第の部分もあるが、今回の件も踏まえて、より丁寧な対応をしていきたい」と回答した。